内山高志、米国進出につなげた“完全体” 強さを証明した3回KOでのV11
5年ぶりに100パーセントの状態
WBA世界スーパーフェザー級王者・内山高志は3回1分47秒、TKO勝利を飾り、11度目の防衛に成功した 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
2015年を締めくくる大晦日、プロボクシングWBA世界スーパーフェザー級王者・内山高志(ワタナベ)は東京・大田区総合体育館で行われた11度目の防衛戦で同級6位のオリバー・フローレス(ニカラグア)に3回1分47秒、TKO勝利を飾った。
戦前、「5年ぶりぐらいに100パーセントの状態でリングに上がれる」と語っていた内山。11年の三浦隆司戦から悩まされていた慢性的な右拳のケガも15年5月の10度目の防衛戦となったジョムトーン・チューワッタナ(タイ)戦での豪快KOで不安を解消した。さらに、5月末には左ひじの遊離軟骨除去手術を敢行。遊離軟骨が6、7個あり、曲げ伸ばしがきつく、痛みからスパーリングを1Rでやめることもあった。そのストレスから解放され、手術以降は練習でも左右思い切り打ち込むことができ、前日の調印式でワタナベジム・渡辺均会長も「久々に本当に強い内山高志を見てもらえると思う」と自信満々だった。
「埋まった感じ」の左ボディでKO
左ボディが炸裂し、フローレスはマウスピースを吐き出して悶絶。立ち上がることはなかった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
右ストレート2発を打ち込んだ直後、「狙ってはいなかったけど、瞬間空いているなと思った」とフローレスの右脇腹めがけて、力を込めて思い切り打つというよりはスピードとタイミングを重視したキレ味鋭い左ボディを突き刺す。「(拳が)埋まった感じがした。立ち上がるのは無理だと思った」と振り返った一発に、フローレスはマウスピースを吐き出して悶絶。レフェリーは10カウント数えることなく両手を左右に振った。
本当に右拳が復活したのか、ジョムトーンを眼窩底骨折に追い込んだ右の強打を再確認したかったファンは多かったはずだが、“完全体”の内山は相手にプレッシャーをかける右こそ出していたものの、相手を仕留める右を出す前に試合を終わらせてしまった。
会長はウォータース戦にゴーサイン
完勝に、渡辺会長も海外進出へゴーサイン 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
「皆さんには私の腰が重いと思われているけど、(内山の)3度目の防衛戦から10度目の防衛戦まではケガだらけだったので、海外でやるなら万全な体調でやらせたかった。今日は本当に万全で臨めた。ケガがなければ誰とやっても勝てる。これで痛いところがなければ3月か、4月に海外でやらせたい」と、対戦が熱望されている元WBA世界フェザー級王者ニコラス・ウォータースを第一候補にアメリカでの試合を組むことにゴーサイン。取材に来ていた海外メディアへ「逃げるなよと伝えておいてください」と冗舌だった。
さらに「ギャラが上がっていくならアメリカでやり続けてもいい。(ユリオルキス・)ガンボアや(ワシル・)ロマチェンコとノンタイトル戦をやってもいいし、WBC、WBO、IBFとの統一戦をやってもいい」と今後のプランをぶち上げた。
「誰とやっても勝てる自信がある」
さらに今回の試合でケガの不安を一掃し、「海外のトップ選手とやるにはもちろん100パーセントの状態じゃないと厳しいと思うけど、これからは100パーセントの状態にあると思う。勝てる自信はある」と言い切った。
海外進出と同時に、具志堅用高氏の世界王座13度防衛の国内最多記録もいよいよ間近に迫っている。内山は「記録が近付いて意識はするけど、一戦一戦勝っていって自然と超えられればいい」と言及した。これから日本のボクシングファンはアメリカを舞台に世界の強豪相手に大暴れし、さらには国内防衛最多記録への挑戦という2つの贅沢な夢を“KOダイナマイト”に託すことになる。
(取材・文:竹内英之/スポーツナビ)
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