柏原世代に似た雰囲気――東洋大がV候補 駒大OB神屋氏に聞く箱根駅伝・展望

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前哨戦の全日本大学駅伝で初優勝した東洋大(写真)、連覇を狙う青山学院大など注目チームの箱根駅伝の展望は!? 【写真は共同】

 来年1月2、3日に開催される第92回東京箱根間往復大学駅伝競走(以下、箱根駅伝)に出場する全21チームの区間エントリーが29日、発表された。

 連覇を狙う青山学院大は“3代目・山の神”の異名を取る神野大地を2年連続で5区に起用。主力の一色恭志と小椋裕介はそれぞれ2区と7区に配置。エースの久保田和真は補欠に登録した。

 一方、11月の全日本選手権を制し勢いにのる東洋大は、エース服部兄弟の兄・勇馬をエースが集う2区に登録。酒井俊幸監督が“切り札”と公言していた弟の弾馬は補欠に回したが、レース当日のメンバー変更での起用が濃厚だ。

 8年ぶりの王座奪還に燃える駒澤大は、2区に2年生エースの工藤有生、3区に中谷圭佑を配置。前回5区で脱水症状のため悔しい走りとなった馬場翔大は補欠とした。

“3強”と称される青山学院大・東洋大・駒澤大の争いはどうなるのか。気になるシード争いの行方は――。駒澤大の元エースで、現在は東京経済大陸上部コーチの神屋伸行氏に、箱根駅伝の展望を聞いた。

“読めない”青山学院大のオーダー

“4枚看板”で連覇を狙う青山学院大。左から一色恭志、久保田和真、神野大地、小椋裕介 【スポーツナビ】

――区間エントリー全体の傾向は?

 全体的に往路の1、2、3区に(主力を)並べてきたところが多いですね。やはり前半に出遅れたくない、流れを大切にしたいという傾向があると思います。

 青山学院大はちょっと分からない感じですね。1区の村井(駿)選手、6区の小野田(勇次)選手が予想外でした。2区の一色選手、5区の神野選手、7区の小椋選手の3人は替わることはないかなと思います。ただ、控えを全員入れ替えられるような戦力を持っているので、誰をどこに配置するのか、(現時点では)よく分からないなと。(6区の経験がある)村井選手をわざわざ1区に置いてきていますし、他の大学には「青学を見ながらオーダーを組むことはできませんよ」というような感じのオーダーです。

――それも作戦でしょうか?

 そうでしょうね。戦力的に層が厚いので、そういう作戦を取れる唯一の大学ですから。8区の池田生成選手も力を持っているので良いですが、9区の中村(祐紀)選手が外されるならもったいないですよね。久保田選手については、1区に来ることはないと思うので、そうなると3区でしょうか。復路に久保田選手を投入してくるのかもしれません。他校を見て決めるのか、最初から決まっているけどあえて隠しているのかが分からないですね。

――駒澤大はいかがでしょうか?

 駒澤大は分かりやすく其田(健也)・工藤・中谷と並べてきました。分からないとすれば5区を馬場選手でいくのか、大塚(祥平)選手でいくのか。そのまま紺野(凌矢)選手で行くとしたら、平地のオーダーがかなり余裕が出るかなと思います。

 このオーダーですと、5区でアドバンテージを作る形ではないと思います。1区〜3区は其田・工藤・中谷と並べてきているので、去年で言うところの中村(匠吾)・村山(謙太)・中谷と同じようなイメージです。少なくとも出遅れずに先頭争いをして、5区でトップ争いをしてゴールし、6区以降できちっと勝負できる位置にいるということではないでしょうか。そしてあわよくば優勝、ダメでも3位を完全に確保できる区間配置ですね。もし5区に馬場選手であれば、7区西山(雄介)選手、8区大塚選手、9区二岡(康平)選手と並べられるので、復路に駒を残せるという意味では、堅実なオーダーと言えます。問題は2区の工藤選手がどれだけ走れるか。其田選手がひっくり返った時は少し怖いですけれど、その程度ですね。

“3強”のキーマンは誰か

――東洋大はいかがですか?

 口町(亮)選手が6区で下るというところを含めても、調子重視なのかなと思います。今までの東洋大でいくと、6区(の別の候補)が悪いから口町選手を置くというのはないと思うんです。適性を見据えた上で「この選手が良い」という判断だと思います。1区の堀(龍彦)選手を外すことがないと考えると、野村(峻哉)選手を外して服部弾選手を入れるのか。7区の櫻岡(駿)選手を外すこともないと思いますし、9区の高橋(尚弥)選手のところも違うかなと……。

 全体的にも言えるのですが、実績を持っていて名前のある選手は置きやすいんですね。一方、調子重視の場合は当たれば良いのですが、外れると痛いというのがあります。そういう意味で、東洋大は1区に堀選手を置くのか、それとも別の誰かにするのかは調子次第だと思います。もしここを堀選手で乗り切って服部勇選手につなぎ、服部弾選手が3、4区あたりに来るイメージですと、かなり余裕が出ますね。堀・服部勇・上村(和生)・服部弾と並べると、5区までにかなりのアドバンテージができると思います。

故障明けの青山学院大・神野大地。2年連続の5区でどんな走りを見せるか 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――“3強”でそれぞれ、鍵になる選手は?

 特にこの3校は実績のある選手が増えています。戦力に穴があればキーマンは作りやすいですが、戦力に穴がない強いチームの場合は下位の選手や実績のない選手だったりするんです。

 東洋大であれば堀選手がこのまま走ればキーマンになるのではないかと思います。ここが入れ替わるようであれば、それ以外の入れ替えられなかった選手、野村選手や小笹(椋)選手がキーマンになるかなと。やはり1日目は大きいので、その滑り出しである2区・服部勇選手を挟むこの区間をどう置くのかに注目です。同じように駒澤大では4区の伊勢(翔吾)選手がこのままいくとしたら、ここが鍵になるでしょう。青山学院大は本当に読めないので、どんな戦略、オーダーで来るのかという意味でキーマンは原(晋)監督ですよね(苦笑)。選手で言えば、やはり神野選手でしょう。前回の立役者が今回、どう走るかですね。

――神野選手は、12月の記者会見で5区であれば1時間20分が目標と言っていました。

 そのタイムを想定するならば、久保田選手を3区、下田選手を1区、4区に田村選手を置くと、神野選手までにトップで行って、神野選手で3番以内になれればいいというふうに聞こえますね。ただ、それでも青山学院大は復路に自信を持てるオーダーが組めるのかなと。神野選手に頼らないチームではあるのかなと思います。選手層が厚いですから。

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