キャリアの終盤を迎えたサビオラ 古巣バルサも出場するクラブW杯への思い

 ハビエル・サビオラが14年ぶりにリーベル・プレートに戻ってきた。下部組織から16歳でトップチームに昇格し、2001年にバルセロナに移籍するまで過ごした古巣。欧州のトップクラブを渡り歩いた末の、久しぶりとなるアルゼンチンでの生活に、本人は「とても楽しんでいる」と語る。

 リーベルは2015年コパ・リベルタドーレスで優勝し、12月10日から日本で行われるクラブワールドカップ(クラブW杯)に出場することが決まっている。この大会で勝ち進めば、決勝戦でかつて所属したバルセロナと対戦する可能性もある。今年33歳。「キャリアの終盤を迎えた」と自ら語るサビオラが、自身の今後や、バルセロナ時代の思い出、そしてクラブW杯への思いなどを語ってくれた。

最高の形でキャリアを締めくくりたい

サビオラは日本で行われたスルガ銀行チャンピオンシップの優勝にも貢献した 【写真:アフロスポーツ】

――リーベル・プレートに復帰して以降の新たな生活はいかがですか?

 とても楽しんでいるよ。長年アルゼンチンを離れていたからね。私生活もサッカーも、できる限り早く適応できるよう努めている。10年以上前にここでプレーしていた時とは大きく変わった、とても難しいサッカーに直面しているからね。キャリアの終盤を迎えたこの時を楽しみ、再びリーベルの人々に愛され、最高の形でキャリアを締めくくりたいと思っているよ。

――リーベルは2011年に史上初めて2部へ降格するなど苦しい時期が続いた後、複数のタイトルを獲得して国際舞台に返り咲いたタイミングで、あなたの復帰が実現しました。

 良いタイミングで戻ってきたと思うよ。復帰してすぐにコパ・リベルタドーレスで優勝し、その後に日本のスルガ銀行チャンピオンシップも勝つことができた。重要なタイトルを争い、継続的にプレーできる環境で安定したパフォーマンスを発揮し、チームの力になっている実感を得ることができる。それは選手にとって最も大切なことなんだ。加入直後から全てがうまくいっているので、この流れを保っていきたいね。

――チームに定着し、定位置を獲得することも目標となります。

 是非とも実現させたい。他にルーカス・アラリオ、ロドリゴ・モラ、セバスティアン・ドリウッシといったFWがいるけど、国内リーグにコパ・スダメリカーナ、そしてクラブW杯を戦っていく中で、それぞれが重要な役割を担う時が来ると思う。誰か1人が全てのコンペティション(大会)を戦い抜くことは難しいから、皆にチャンスが巡ってくるはずだ。だからその時のために準備を整えておかなければならない。

――マルセロ・ガジャルド監督はリーベルに独自のスタイルを持ち込みました。青年監督がもたらしたチームの成長は驚きをもって受け止められています。

 そうだね。ガジャルドはリーベルが必要としていた要素をもたらしてくれた。リーベルは長年、チームもクラブも精神的に苦しい時期を過ごしてきた。それが新たな役員、新たな監督スタッフ、そして近年プレーしている選手たちの手で少しずつ成長し、クラブの歴史にふさわしい高みへと再びたどり着くことができた。それはクラブを愛する人々にとって重要なことだ。

――国内リーグのタイトル争いからは脱落しましたが、コパ・スダメリカーナでは連覇の可能性を残しています。クラブW杯に向けてリーベルはどのような調整が必要でしょうか?

 チームや選手にとって何よりも重要なのは、プレーや試合のリズムをつかむことだと思う。もし選手が長い間プレーしていなければ、リズムを取り戻すことが第一だ。インテンシティー(プレー強度)とぶつかり合い、フィジカルの強さがものを言う現在のアルゼンチンサッカーではなおさらね。それでもベストのフィジカルコンディションを取り戻すのは難しい。

 だからコパ・スダメリカーナをクラブW杯へ向けて調子を上げていく場として活用したい。困難な大会になることは分かっている。僕らが対戦するのはそれぞれの大陸で王者となった、世界一を決める場にふさわしいライバルたちだ。強豪ぞろいの大会なので、しっかり準備していかなければならない。クラブW杯でプレーできる機会はそうそう訪れるものではない。次にリーベルがこの素晴らしい場でプレーできるのはいつになるか分からないんだ。だからそのことを頭に入れて、これから自分たちがどこへ向かい、何を賭けて戦うのかを理解して臨む必要がある。

南米のチームが持つ“ガッラ”と接触プレーの強さ

2009年のクラブW杯決勝でバルセロナは、エストゥディアンテスとの激しい肉弾戦に苦戦した 【写真:ロイター/アフロ】

――クラブW杯で決勝に勝ち進めば、何年もプレーした古巣のバルセロナと対戦することが期待されます。かつてヨーロッパのクラブは、少なくとも南米のクラブほどこの大会を重視しない傾向がありましたが、そのような見方が変わってきた実感はありますか?

 その点は大きく変わってきたと思う。今はより多くのチームが参加する大会になったからね。以前はコパ・リベルタドーレス王者とUEFAチャンピオンズリーグ(CL)王者が1試合を戦うだけだった。何が起こるか分からない一発勝負のファイナルにおいて、アルゼンチンのチームはライバルとは異なる戦略で戦ってきた。でも今はまず準決勝で他の地域のチームと対戦しなければならない。おそらくどのチームもバルサを優勝候補に挙げると思う。彼らは偉大な選手たちを擁し、何年もかけてチームを作り上げてきた。バルサとの対戦は困難を極めるだろうね。

――現行のクラブW杯の日程は南米勢にとって不利だとは思いませんか? コパ・リベルタドーレスの王者は6月に決まりますが、12月の大会に出場する際には主力の引き抜きに遭い戦力ダウンを強いられることが多々あります。対照的に、ヨーロッパのCL王者は主力を温存してコンディションを整える余裕があるだけでなく、シーズンオフに新戦力を加えることでチーム力を増していることも珍しくありません

 確かにそうだと思うけど、それは今に始まったことじゃない。確かにクラブの経済力、試合のレベルやスケジュールなどヨーロッパと南米の格差は広まる一方だ。しかも開幕から4カ月ほどでクラブW杯を迎えるヨーロッパのチームとは違い、南米のチームはその時点ですでに50試合以上をこなしている。それはフィジカルコンディションの差に表れるだけでなく、サッカーの質にも影響するだろう。とはいえ、言い訳をしても仕方ない。この機会を楽しまなくちゃいけない。

――リーガ・エスパニョーラはチェックしていますか?

 見ているよ。リーガは大好きな、僕にとって最も重要なリーグだ。自分のプレースタイルが最もよく生かせたリーグだし、見るだけでも面白い。大半のチームがハイレベルな、テクニックに優れた選手を擁し、パスをつなぐスタイルでプレーしているからね。

――南米のチームは闘争心や球際のアグレッシブさが恐れられていますが、バルセロナの目にリーベルはどう映っていると思いますか?

 彼らにとっての脅威はまさにその部分だよ。テクニックの面でバルサが世界中のあらゆるチームを上回っていることは分かっている。彼ら以上に良いプレーをしているチームなど存在しない。でも南米のチームには“ガッラ”(不屈の闘志を意味する言葉)と接触プレーの強さがある。相手にプレーする余裕を与えぬよう、激しい肉弾戦に持ち込む。2009年大会の決勝でバルサがエストゥディアンテス相手に大苦戦を強いられたのは、そういう試合に慣れていないからだった。スペインを含め、ヨーロッパの試合は南米とは異なるから、その差に戸惑うことがあるんだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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