錦織、今季51勝12敗が意味するもの 過密スケジュールでも光る安定感
過酷なシーズンを送る錦織
上海マスターズを3回戦敗退で終えた錦織。これまでの今季の戦いを振り返る 【Getty Images】
もちろん、過酷な日々を過ごすのは錦織に限ったことではなく、ほとんどのテニスプレーヤーは、年間約20前後のトーナメントに出場している。これら20大会のうち、グランドスラムの4大会や一部のマスターズ1000は2週間に及ぶので、少なくとも25週前後はトーナメント期間に身を置くことになり、しかもその合間を町から町へ、国から国への移動でつないでいくのである。ここに加えてトップ選手たちは、スポンサー関連のイベントや、エキジビションマッチへの出場なども多くこなす。また、シーズンを通して体力を維持しつつ技術面の微調整や改善を図るため、過密なスケジュールの合間を縫ってトレーニングや練習も重ねていかなくてはならない。
試合数が増えるのは宿命
錦織のようなトップ10プレーヤーにとって、ランキングが果たす最も大きな意味合いは、シード順。もしランキング8位以内に入っていれば、それはグランドスラムなどの大きな大会でも、準々決勝までは自分より上位の選手と当たらずに済むことになる。4位以内なら、準決勝までは下位との対戦が約束される。今季の錦織は「グランドスラムやマスターズ1000など、大きな大会でも結果を残していきたい」と言っていたが、そのためにはランキングの上位維持も、絶対的に欠かせぬ要素となるのだ。
実力が上がりトーナメントでも常に上位進出するようになるにつれ、試合数が増えていくのは必然であり、上位選手の宿命だ。世界ランキング1位のノバック・ジョコビッチ(セルビア)は今季、出場大会数を最低限まで絞っているが、それでも10月12日時点で68勝5敗と圧倒的な戦績と試合数を重ねている。これはトップ10全選手の中でも、最も多い数字である。ついで現在2位のアンディ・マレー(イギリス)も、今季ここまで61勝10敗。ちなみに3位のロジャー・フェデラー(スイス)は53勝8敗だが、以降、4位のスタン・ワウリンカ(スイス)は48勝13敗、そして5位のトマシュ・ベルディヒ(チェコ)は49勝17敗と、いずれも勝ち星では錦織を下回っている。錦織のライバルと目され、錦織本人も「メディアの皆さんにも言われるので、(ライバルとして)意識する」と苦笑いするミロシュ・ラオニッチ(カナダ)は、現在9位で31勝15敗。このように周囲の選手と比べても、錦織がいかに心身ともに過酷なシーズンを、トップ選手に相応しい成績と足跡で戦い抜いているかが分かるだろう。