年間グランドスラム目前でセリーナが敗退 決勝はビンチとペネッタのイタリア対決
全米オープン準決勝でビンチに敗れたセリーナ。あと2勝に迫っていた年間グランドスラム達成はならなかった 【写真:ロイター/アフロ】
セリーナは、昨年のこの大会から、今年の全豪、全仏、ウィンブルドンとグランドスラム4大会連続で優勝し、この大会には、同じ年の4大大会をすべて制覇する「年間グランドスラム」が懸かっていた。1988年にシュテフィ・グラフ(ドイツ)が達成して以来、27年ぶり史上4人目の大記録――第1試合ではペンネッタが勝っていたため、残るは2人のイタリア選手のみだったのだが、よもやビンチに敗れると考えたファンは、多くはなかっただろう。
硬さが見えたセリーナ
空回りするセリーナに対し、ビンチは、打ち返すだけでポイントが入ってくる流れになった 【写真:ロイター/アフロ】
「記録はまったく意識していない、プレッシャーはない」と言い続けて来たセリーナだが、実際の胸の内は、そこからの試合展開に明らかだった。一気に勝負を決めるのではというスタンドの期待を裏切る第2セットの立ち上がりだ。
第1ゲーム、ダブルフォルト絡みで0−40と追い込まれると、ここはサーブ力で何とかかわしたものの、2−2で迎えた第5ゲーム、再び0−40とされるとブレークを許し、バタバタと落ち着きを失ってセットを落としてしまった。
163センチ、60キロ、32歳のビンチに決定力はない。ただ、シングルスではおよそ10年間トップ100位以内を維持してきた経験があり、同じイタリアのサラ・エラーニと組んだダブルスでは生涯グランドスラムを達成している技巧派だ。サーブを食い止められ、守りに入ってラリー戦に持ち込まれると厄介になる。「ボールを返すことだけを考えていた」というビンチに、セリーナの空回りが始まった。第1セットでは8本だけだったアンフォーストエラーが、第2セットには13、ファイナルセットには19と増えており、ビンチにすれば、打ち返すだけでポイントが入ってくる流れになった。
落胆を隠さないセリーナ
記者会見でセリーナは落胆した様子を隠すことができなかった 【写真:ロイター/アフロ】
「初めての準決勝、しかもセリーナに……信じられない。人生最高の日です」
ビンチは興奮して話しながらも、こう付け加えた。
「ごめんなさいね」
セリーナにとっても、地元米国のファンにとっても楽しみにしていた、歴史的記録を消したことを詫びたわけだが、その言葉を発するだけの気持ちの余裕は残っていた。一方のセリーナは、記者会見に現れると珍しく落胆を隠さなかった。
「がっかりしているかどうかは答えたくないので、別の質問を」
「プレッシャーは何もないとずっと言ってきました」
メジャー4大会連続優勝は既に2度達成している。カレンダー上の記録にどれほどの意味があるかどうか疑問だが、間もなく34歳。これから再びチャンスが訪れるかどうか何の保証もないだけに、ショックは隠せなかった。
(文:武田薫)
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