MLBから見たプレミア12の真実 『世界一を決める大会』の認識はない

菊地慶剛

日米野球でも辞退相次ぎお粗末な状況

親善試合の日米野球ですら直前の辞退が相次いだ。真剣勝負のプレミア12となれば、チームも選手も敬遠したくなるか 【Getty Images】

 昨年の日米野球を思い出してほしい。同イベントが8年ぶりに開催されたということもあり、MLB、選手会も非常に協力的だった。第1次出場選手発表でもスター選手たちが名を連ね、誰もが期待に胸膨らませたものだが、実際は選手の出場辞退が相次ぎ、来日ギリギリまでチームが確定できないようなお粗末な状況だった。

 しかも、メジャーでは『人工芝でのプレーは身体への負担がかかり、ケガのリスクが高まる』というのが常識となっていて、それが選手たちの日米野球回避に影響を与えたとも言える。親善試合の日米野球ですらこんなありさまなのだから、真剣勝負が求められるプレミア12を敬遠するのはチームばかりでなく、選手も同じ気持ちだろう。

 残念ながらMLBには、日本で叫ばれているような『プレミア12が野球世界一を決める新たな国際大会』という認識はない、というのがお分かりいただけただろうか。そして現在の勢力図においてはMLB、選手会の協力なくして真の国際大会は絶対に実現しないということを……。

WBSCに任せたままでは変わらない

 今回のMLBの発表に対し、日本では『メジャー選手の不参加で真の侍ジャパンを結成できない』という“内向き”な捉え方をしていたようだが、それ以上に本来なら主力がメジャー選手に偏っている米国、ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコといった他の参加チームは満足にチーム編成すらできないのだ。

 しかも、ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコに至っては大会開催時期がウインターリーグと完全にバッティングしてしまう。プレミア12にマイナーの有望選手たちを送り込んでしまうと、自国のリーグ運営にも影響しかねない状況だ。ある国の関係者から聞いたところでは、プレミア12の代表チームのキャプテンにほぼ引退状態の元メジャー選手を選んでいるらしい。まさにプレミア12は開幕前から完全に形骸化してしまっていると言わざるを得ない。

 聞くところによると、プレミア12誕生の裏には、MLB、選手会主催のWBCを米国以外で開催するのは難しいとの考えから、自国開催できる新たな国際大会を標榜したNPBの並々ならぬ熱意があったという。だがWBSCを前面に押し出したとしても、下部組織のIBAF(国際野球連盟/WBSC、IBAFともにリカルド・フラッカーリ氏が会長を務める)がMLBから資金援助を受けていることを考えれば、やはりMLBにWBSCの権威は通用するはずもない。

 早くも岐路に立ったプレミア12。このままWBSCに任せたままでは何も変わらないだろう。果たして、NPBはどんなアクションを起こすだろうか。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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