海老原有希、4度目世陸で“誤算” 鬼門の1投目でミス、課題克服できず

スポーツナビ

4度目の世界陸上が与えた試練

1投目の影響で予選通過ラインの上位12人に入れず、全体19位に終わった海老原 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 最後の最後、1番大事なところで、パズルのピースがぴたっとはまらないことがある。調整は順調で、直前の練習もうまくいっている。なのに、本番になって体が動かなかったり、思わぬミスをしてしまったり……。

 世界選手権(中国・北京)の女子やり投げで8位入賞を目指した海老原有希(スズキ浜松AC)も、まさにそうだった。予選1回目の試技に向かうその時まで、調整は順調だった。しかし、1投目を投げる直前、左足を大きく踏み込む動作(ブロック)で、バランスを崩した。やりが勢いなく、55メートルラインのはるか手前に落ちる。記録は53.67メートルと大事な試合で大きく出遅れた。

「あれがちょっと誤算でしたね」

 瞳を潤ませながら、陸上界の“えびちゃん”は表情をゆがませた。1投目で失敗を犯すのは致命傷だ。2投目ではブロックの動きを、3投目では腰が引けた姿勢をそれぞれ修正し、3本目で60.30メートルの大台に乗せた。だが、距離を伸ばしていこうにも、スタートの記録が低すぎては仕方がない。

「段階を踏んで(動きの)修正はしていきましたが、やはり1投目があれだけ悪いと、2本目、3本目で伸ばしても、あの記録が限界なのかなと。結構、(フィールドの)中で冷静に受け止めていました」

 自らが発した一言一言をかみ締める。結局、予選通過ラインの上位12人に入れず、全体19位に終わった。4度目の世界選手権は、女子やり投げの第一人者に大きな試練を与えた。

抑えられなかった「投げたい」気持ち

世界大会で初の60メートル台を投げた海老原。今大会の経験をリオデジャネイロ五輪につなげてほしい 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本選手権4連覇(8度の優勝)と、国内では無類の強さを誇ってきた。2010年以降、自身の日本記録を何度も塗り替え、5月のゴールデングランプリ陸上でも63メートル80の日本新をマークしていた。そんな海老原でも、1投目からしっかり投げ切ることは難しい。以前から課題の1つに挙げており、意識して取り組んできていたことでもあった。これを克服しなければ、8位入賞は難しいと分かっている。特にこの日は、1本目から納得の投てきができるよう、試合前からやりを投げて準備を整えていた。それだけに、やり切れない思いは募るばかりだ。

「練習投てきの感覚で、1投目のやりの離し方ができていたらと思うと、悔しいところはあります。でも、やってしまったのは自分なので……難しい、難しいとしか言えないです(苦笑)」

 大事な1投目でバランスを崩した要因は、勝利への強い渇望だ。「投げたい、投げたい(という気持ち)が強く出てしまった」と海老原。今後へは、気持ちのコントロールもひとつの大きな課題となるだろう。

 ただ、収穫もあった。過去出場した2009年ベルリンからの4大会、そして12年ロンドン五輪と過去6年の世界大会を振り返ると、60メートル台を投げたのは今回の北京のみ。11年テグ世界選手権で自身最高の9位に入った時すら、59メートル08だった。この1メートルを縮めるのに世界大会5つ分、6年の月日を費やした。それでも、少しずつではあるが、世界へ近づいている。

「(世界選手権)4大会、五輪入れて5大会でやっと60(メートル)ですが、次はこれ以上投げられると私もまだ思っていますし、それがリオで出せれば、もっと皆さんに明るい顔で会えるかなと思います」

 来年のリオデジャネイロ五輪では、満面の“えびちゃんスマイル”を見せてほしい。

(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)
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