代表争い激化の男子走高跳に現れた新星=躍進見せる大学1年生・平松祐司

折山淑美

4人の標準記録突破者がそろう男子走り高跳び

世界陸上の参加標準記録突破者が4人と活気を帯びる男子走り高跳び陣。その中で筑波大1年・平松祐司の躍進が目覚しい 【スポーツナビ】

 昨年は戸邉直人(つくばツインピークス)が2メートル31を2回と、2メートル30を2回跳んだことで、世界との距離が近くなった男子走り高跳び。11年世界選手権テグ大会以降、世界大会に代表を送り出せずにいた同種目だが、今年は世界選手権に出るための参加標準記録を突破している選手が4人も出るという活況を呈している。

 シーズン序盤、昨年好調だった戸邉がアキレスけん痛で出遅れているうちに、衛藤昴(AGF)が5月3日の静岡国際で2メートル28を跳んで、参加標準記録(2メートル28)を突破。さらに3度目の2メートル28を跳んで3位になった5月10日のゴールデングランプリ川崎では、高張広海(日立ICT)も2メートル28をクリア。出遅れていた戸邉も5月17日のダイアモンドリーグ上海大会で2メートル29を跳んで参加標準突破を果たした。

 その前日となる16日、神奈川・日産スタジアムで行われた関東インカレでは、筑波大1年の平松祐司が、2メートル28をクリアし、その争いに割り込んだのだ。

「失敗跳躍」でも自己ベスト更新

今季に入りコンスタントに2メートル20を超えていた平松。そして関東インカレでは2メートル28を突破し、世界陸上代表争いに加わった 【スポーツナビ】

 今年の躍進で見ると、一番の成長を見せているのが平松で、今年だけで自己記録を8センチも伸ばしている。しかし自身は、今年中には2メートル28を跳べると思っていたと、平然とした表情で話す。

「関東インカレの2メートル25も自己新だったけど、その高さはいつ跳んでもおかしくないと思っていたので、喜びはあったけど驚きはなかったですね。28は自分の中で『思ったより早かったな』とは思ったけど、完全にハマッたいい跳躍だったので。でも25に関しては動画で見返したら失敗跳躍だったので、それでも跳べたというのは力がついている証拠だし、この冬の成果かなと思います」

 今年の平松は2月から試合に出て、4試合目だった3月22日の山田隆記念大会(奈良)には2メートル21の自己新をマークしている。その後は5月10日のゴールデングランプリ川崎まで連続で2メートル20をクリア。「2メートル22の自己新ならいつでも跳べたと思います。でも、その高さを狙うよりも25を狙っていました。ただ3試合連続で失敗してしまい、ムズムズしていたんです」と笑う。

「高校時代は技術的なことはあまり練習していなかったので、今年からやっていこうと思っていました。衛藤さんと一緒に練習をしていた時にダブルクラッチ()を真似してやってみたら感触が良かったので取り入れて……。技術的に変えたのはそのくらいですね。それと1月と2月は合宿が多く、そこで技術的な練習ができたので、それが後に生きてきたのかなと思います」

ダブルクラッチ=空中動作の技術。2段モーションのような動作でバーを跳ぶこと

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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