女子代表主将が制裁問題に立ち向かう理由 大神雄子から見た日本バスケ界<前編>
「協会の人とコミュニケーションはなかった」
2月末に開催されたタスクフォースと女子日本代表との意見交換会では、誰よりも積極的に発言した大神 【スポーツナビ】
本当にガツンと言う方だなと思いました。リーダーという立場にいる方らしく「これはこう」「何をやっているんだ」と言える。今まで協会の人と選手のコミュニケーションはほとんどなかったのですが、そういう機会を与えていただいたことに感謝でいっぱいです。思い切って話してそれが公開できたことも、本当にうれしかったです。
――タスクフォースには元女子日本代表の萩原美樹子さんが入っていますが、それについてはどう考えていますか?
萩原さんはオリンピアン(アトランタ五輪7位入賞)で、海外(WNBA/米女子プロリーグ)のプレー経験もお持ちです。海外のリーグについて調べて文章を読むのと、実際に行って経験したというのでは全然違います。さまざまなことを経験してきた先輩が(タスクフォースに)いるというのは本当に心強い。選手に近い見方から、いろいろな意見や情報をタスクフォースのメンバーと共有していってくれるのではないかと期待しています。
――大神選手は海外でプロとしてプレーした経験をお持ちですが、米国はどういうリーグだったのですか?
米国のWNBAは他の国とシーズンが逆で、夏にやるんです。レギュラーシーズンが3カ月くらいあり、プレーオフまで行くと4カ月です。NBAの組織の下にWNBAがあって、オーナーが一緒のチームもあります。男子がオフでアリーナも空く季節にやる仕組みです。
「女子は企業の力が強過ぎ」
中国はWCBAが女子のトップリーグですが、1チームに外国人枠が一つと、アジア人枠がまた別に一つありました。私の他にも韓国人選手が2人いて、12チームのうち3つはアジア人枠を使っていました。13−14シーズンに山西で優勝することができたということもあり、(14−15シーズンも)いくつかのチームからオファーを受けて、山西も含めて交渉を進めていました。
そんな中で(14年の)5月31日に、日本(WJBL)の登録期限は切れました。でも私は海外でやるつもりで、中国チームと交渉を進めていたら……。チーム側は(大神選手を)欲しがってくれたのに、WCBAが今季はアジア枠なしというルールを、7月になって決めたんです。
すべてが振り出しになって、日本には(登録期限が過ぎているので)戻れないし、中国も行けない。(14年8月に)世界選手権もあったから日本代表の合宿がずっと続いていて、欧州に行って売り込みもできない。そんな状態が続いて今に至っています。
――所属チームが丸1年ないというのは大神選手本人にとっても、代表チームや日本バスケ界にとっても大きな不利益ですが、救済措置や特例の議論はなかったのですか?
いろいろな方が(おかしいと)言ってくださるんですけれど、それでも5月31日がリミットということです。女子は企業が強いというのもあるのかなと感じています。男子の場合は登録が柔軟で、NBLやbjリーグに(大学生や高校生が卒業前にプレーできる)アーリーエントリー制度があります。岡田(優介)選手(広島ドラゴンフライズ)や石崎(巧)選手(三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ名古屋)が移籍したように、シーズン中にも選手が動けます。女子も(男子のように)移籍期間が1年に2回あっていいと思います。それに女子は企業の力が強過ぎて、本当は移籍したいのに(所属企業から)承認のはんこを押してもらえないケースもあるんです。選手が選ぶ、交渉するという部分は(企業と選手の力関係が)10:0に近いのかなと思います。
――ラグビーやバレーボールの実業団選手は、前所属チームの承認がなくても、1年置けば移籍が認められる仕組みです。
女子バスケはそれもできず、前の所属のはんこが絶対に必要だし、1回海外に出ても同じようにはんこが必要です。スポーツ裁判(日本スポーツ仲裁機構による仲裁・調停)にまでなってしまった例が、いくつかあったと思います。
<後編に続く>