黒田復帰による好影響と唯一の不安要素 高橋建氏が懸念する“大きすぎる期待”

ベースボール・タイムズ

かつてない盛り上がりの“黒田台風”

合流初日には200人以上の報道陣が黒田目当てに取材に訪れた。広島を中心に高まる重圧に黒田は耐えられるか? 【写真は共同】

 広島と沖縄に、季節外れの“台風”がやってきた。

 その中心にいるのが、MLBから8年ぶりに日本球界復帰を果たした黒田博樹だ。MLBで5年連続2ケタ勝利を記録した黒田は、今季も年俸20億円以上のオファーがあると言われながら、「現役の最後はお世話になった広島で」と、約5分の1の年俸4億円(推定)でカープに復帰した。

 広島空港への出迎えが約100人、入団会見は広島の民放テレビ4局のうち3局が生中継、そしてキャンプ合流初日は、球団関係者が「平日では過去に記憶がない」という約1000人のファン、報道陣200人以上と、黒田のカープ復帰は、周囲にかつてない盛り上がりをもたらしている。

 2年連続でAクラスと長期低迷を脱出しつつあるカープだが、24年ぶりのリーグ優勝に向けて、観測史上最大級の“黒田台風”は果たして、どれほどの追い風となるのだろうか……。

3度のブルペンで増す存在感

 2月18日、沖縄での2次キャンプからチームに合流した黒田は、ウォームアップ直前に行われる選手全員での円陣で、緒方孝市監督に促されて声出しを行った。練習後の記者会見で「40歳になってあんなことをやらされるとは思わなかった」と笑ったが、その内容は「先は長くないですけど、覚悟を持って、みなさんと一緒に戦っていきます」という熱いものだった。

 ブルペンには合流初日から入り、正捕手候補の筆頭として期待されている會澤翼を相手に投球練習。「スライダー以外は全球種投げた」と本人が振り返ったように、フォーシーム、ツーシーム、カーブ、カッター、スプリットと、変化球を中心に計37球を投げ込んだ。

 20日に行った2度目のブルペン入りでは、もう一人の正捕手候補である石原慶幸を相手に76球を投じた。MLBのキャンプでは、球団側の方針もあり投球練習は30球前後で終わることが多かった黒田だが、「シーズンに入れば完投もある」と日本式を意識した“異例” の球数だった。
 そして3度目のブルペンとなった22日には、開幕投手に指名されているエース前田健太との“共演”を果たした。50球を投げ、スライダーを初めて投げた黒田と並んで投球練習を行った前田は、「迫力がありました」と感慨深そうに語った。

高橋建氏、捕手も絶賛する変化球

 順調な調整を続ける一方で、8年ぶりの日本球界復帰に対して、ボールや打者の違いなど、不安視する声も少なくない。しかし、このブルペンでの投球を見て、自身もMLBに移籍し、さらに日本復帰も果たした高橋建氏は、今季の活躍に太鼓判を押す。

「7割か8割ぐらいの力で、リラックスして投げていたけど、すごい球がいっていましたね。コントロールも、低めにバシバシ決まっていた。時差ボケもあり、2時か3時ぐらいまで眠れないと聞いていたけど、その状態であれだけの球が投げられるのは、やっぱりすごい」

 技術的には「右打者へのシュート、ツーシーム。日本人では投げる投手が少ないボールですが、精度が良かった」と高橋氏。実際、そのボールを受けた會澤は「キレが良かった」、石原も「ほとんどが構えたところに来ていた」と、コントロールの良さを絶賛している。

 さらに日米間のボールの違いやストライクゾーンの問題についても、高橋氏は「(日本のボールは)本人は『投げた感触が良かった』と言っていたし、実際にしっかりボールを動かしていた。ストライクゾーンについても、本人が『日本も米国もあまり変わらないですね』と言っていた。審判に個人差はありますが、そこもすぐに対応できるのでは」と、不安の声を一掃した。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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