黒田復帰による好影響と唯一の不安要素 高橋建氏が懸念する“大きすぎる期待”
衰えを上回る19年目の経験
4年目の野村(手前)、2年目の大瀬良ら若い投手にとって、日米通算19年目を迎える黒田は生きた教材になりそうだ 【写真は共同】
しかし、この点についても高橋氏は「トレーナーに聞いても、筋肉の質は衰えていないと言う。投げている姿を見ても、年齢は感じない。まだまだ若いですよ」と一笑する。さらに日米の気候の違い、特に厳しい広島の夏に関しても、「現在の彼は自分なりの調整ができる立場にある。もともと強靭(きょうじん)な意思と強い体力の持ち主。クリアしてくれると思います」と、期待を込めた。
NPBとMLBで合わせてプロ19年目。年齢的な不安よりも、黒田はその豊富なキャリアが、周囲へ好影響を与えることが期待されている。高橋氏は「若い選手にとっては、雲の上の存在かもしれないけど、そんなことはない。どんどん近づいていくべき」と忠告する。さらに緒方監督は、「学ぶべきことが多いのは間違いない選手。でも、特に投手陣は聞いて教えてもらうだけでなく、調整法などを自分の目で見て、盗んでいってほしい」と、“黒田効果”を期待している。
実際、明治大時代にドジャースの施設で当時同球団に所属していた黒田と対面し、「冗談っぽく『カープで会おう』と言われた」という野村祐輔は、「いろいろと勉強したい」と弟子入りを志願。初ブルペンの際に並んで投げた2年目の大瀬良大地も、「雰囲気が違ったし、ベース上の球の勢いもバーンという感じですごかった」と感激した様子で、「1年間を通じて投げるすべを聞いてみたい」と胸を高鳴らせている。
想像を超える重圧に耐えられるか?
そんな黒田に対して、高橋氏が唯一、不安視しているのが、周囲の「大きすぎる期待」だと言う。確かにカープファン、広島市民はもちろん、チームメートや関係者さえも、「黒田が復帰したから今年は優勝できる」と誰もが思っている。高橋氏が「僕にはとても背負えない」という想像を超える重圧に、黒田は耐えられるだろうか。
思えば、黒田が生まれた昭和50年(1975年)は、カープが球団創設以来、初のリーグ優勝を達成した年だった。あの時からちょうど40年、その年に生を受けた黒田博樹という台風が、その突風とともに、再び広島に歓喜をもたらすのか。今年の黒田、そしてカープから目が離せない。
(取材・文:大久保泰伸/ベースボール・タイムズ)