したたかなチェルシー優勝は既定事項? 引き分けに終わったプレミア上位直接対決
ランパード「温かい拍手に感謝をしたい」
わずかだがブーイングも聞かれたし、中には「フランクは恥知らず」「お前はもうレジェンドじゃない」という心ない文字も見られた。行き過ぎた愛情が憎しみに変わってしまったファンがいたのも事実だが、それでも、チェルシー歴代4位の648試合に出場し、歴代最多の211ゴールをクラブに捧げてきた英雄に、大多数のチェルシー・サポーターが敬意を示した。
試合終了後、チームメートが控え室に戻る中、最後までピッチに残って拍手を浴びたランパードは、こんなコメントを残した。
「個人的に、不思議な日だったね。ここに戻るにあたって、興奮していたけれど同時に緊張もしていたんだ。でも、実際はすごく楽しめた。両チームのファンからの温かい拍手には感謝をしたい」
チェルシーは引き分け狙いだった?
「でも、まだ道のりは長い。僕らは多くのチャンスを作ったし、試合を支配していたし、動きもよかった」と前向きな言葉が続いたが、一方で彼はこうも語っている。
「チェルシーは最終的に引き分け狙いのプレーをしたと思う。彼らはそういう守備ができるチームだからね。僕は長く在籍していたから分かるんだ」
誰よりもチェルシーを知る男が発したこの言葉こそ、1月最後の土曜に行われた大一番を端的に説明している。プレミアリーグ首位のチェルシーと、2位マンチェスター・シティの熱戦は1−1のドローに終わった。前半41分に先制されたシティは、4分後にダビド・シルバのゴールで追いついたが、逆転ゴールを挙げるには至らず。これで23試合を消化して、両者の勝ち点差は5ポイントに保たれた。
両チーム主力を欠く苦しい台所事情
ただし、台所事情で言えばより苦しいのはチェルシーの方だった。
今回の首位決戦を、チェルシーはリーグ最多得点のFWと、リーグ最多アシストのMFを欠いた状態で戦った。ここまで17ゴールのジエゴ・コスタは直前のリーグカップでリバプールのエムレ・ジャンを踏みつけ、FA(フットボール協会)から3試合の出場停止処分を受けたばかり。15アシストのセスク・ファブレガスは同じリバプール戦でハムストリングを痛め、2人のスペイン人はスタンドに仲良く並んで試合を観戦していた。
そんな“飛車角落ち”のチェルシーを、解説者のフィル・ネビル(元マンチェスター・ユナイテッド)は「まるで昨季のチェルシーを見ているようだった」と評している。つまり、守備は固いが、攻撃のアイデアは凡庸だったという意味だ。
実際、D・コスタの代役は先制ゴールを挙げたロイク・レミがなんとか埋めたものの、「セスクの代役は存在しない(『デイリー・ミラー』)」ことはあらためて浮き彫りになった。チェルシーは90分間でわずか3本のシュートしか撃てなかった。これはここ10年間のプレミアで、彼らにとって最少の数字である。