中島裕之に重なるパイレーツ姜正浩の姿 日本人野手の未来も左右するその成否
鳥谷との比較は適当ではない
パイレーツと4年+1年の、最大1650万ドルの大型契約を結んだ姜正浩。同時期にメジャー移籍を目指した鳥谷と比較をされがちだが、メジャースカウトは別の日本人野手と姿を重ねていた 【ストライク・ゾーン】
それでは今回、大型契約を手にした姜正浩を、日本人野手の誰と比べれば良いのか。
姜正浩は右投げ右打ちの内野手。身長183センチ体重96キロで、厚い胸板が目を引く選手だ。2014年の成績は打率3割5分6厘(リーグ4位)、本塁打40本(2位)、打点117(3位)を残し、5番打者としてチームの2位に貢献した。
対戦相手のコーチとして姜正浩を見ていた、清家政和SK2軍監督(55歳)は打者・姜正浩についてこう話す。
「パワーがあって、逆方向に打てる対応力もある。チャンスにも強いし、SKはよく打たれたので、ものすごく良いバッターという印象を持っています。体はでかいですが、上半身と下半身の動きがバラバラにならず連動しているので、自分の調子の良し悪しを見極めながら、うまく体を使えるバッターです」
姜正浩は速球派の投手に非常に強い。それに比べると、縦の変化球を武器とする投手やサイドスローには多少、分が悪いが、苦手にしているわけではない。清家氏の言葉通り、パワーと対応力を兼ね備えた打者だ。
“ナカジ”と比べて柔らかい守備
その一方で、厳しい面も指摘する。
「肩はメジャーでは通用しないと思います。かつて12球団一の強肩と言われていた松井稼頭央(現東北楽天)でもメジャーの中では普通の部類でした。姜正浩の肩はメジャーの内野手の中では下の方です。ショートでは難しいと思うので、可能性があるとしたらサードでしょう」
「姜正浩を使うならサード」という意見は、長年、姜正浩を調査していた、セ・リーグの球団スカウトからも聞かれた。
清家氏は姜正浩の守備をこうまとめた。
「不器用で泥臭く取り組んでうまくなっていった“ナカジ”と比べて、姜正浩は柔らかさがあってスムーズ。動きはいいです」
この「ナカジ」とは2年間の米国生活を終え、今季、オリックスで日本球界に復帰する中島裕之(32歳)のことだ。清家氏と中島は08年から3年間、埼玉西武で守備走塁コーチと選手の関係だった。姜正浩と中島の両者を近くで見てきた清家氏は、「姜正浩と日本人野手を比較するなら、鳥谷ではなく中島」と言う。これにはメジャー球団のアジア担当スカウトも口をそろえていた。