侍ジャパンに潜んでいた意外な“課題” 警戒されたスモール野球、走守で結束を
急造チームの弱点、名手が犯したまさかのミス
遊撃手の今宮健太(ソフトバンク)は23歳にして2年連続ゴールデングラブ賞に輝いている。その名手が信じられないミスを犯したのが第2戦のことだ。8回裏、先頭のゾブリスト(レイズ)の打球は今宮の後方へ上がったフライだった。今宮は背走しながら声を出し、大きなジェスチャーをとった。しかし次の瞬間、突然しゃがみ込んで中堅手の丸佳浩(広島)に打球を譲ったのである。それに驚いた丸は立ち止まり、打球はその間にポトリと落ちた(打球は中田が処理し、記録はレフトへのツーベース)。その場面こそ、急造チームである侍ジャパンの欠点だった。
「ソフトバンクでは声を出した選手が捕る。その時、周りは声を上げないんです。あの時、丸さんはたぶん『任せた!』と言ったと思うんですが、僕は声が聞こえたことに反応して追うのを止めてしまった。当たり前のことが確認できていなかったために起きたプレーでした」
12球団それぞれに考え方や取り決めに違いがある。だが、侍ジャパンではそれを1つにまとめなければならない。
データになかったけん制やクイック、和田が明かした対策
「球団ごと、さらには選手によって走塁に対する意識にも違いはあります。小久保監督は『隙があれば1つでも先の塁を狙え』と厳しく言う人です。実際、MLBと戦ってみても、彼らは身体能力が高いですが、打球の追い方や返球などには隙が見受けられました。ただ、中にはそのような場面でも次の塁を狙う姿勢が感じられない選手もいました。難しいんですよね。彼らは現役のトッププレーヤー。言葉を選んで指摘しないといけない部分もありますから。ただ、侍ジャパンの方針なので統一しないといけない。選手たちには改めてしっかりと話すつもりです」
また、走ることに関しては、もう一つ貴重な情報も手に入ったという。
「クイックモーションやけん制は事前にデータ収集をしていましたが、シーズン中にはやっていなかった3度続けてのけん制球があったし、クイックも割としっかりやってきました。データは大切ですが、それだけに頼れない。試合の中でいかに早く見抜き判断することができるか。それは感じさせられました」
これに関してMLBオールスターの和田毅(カブス)は次のように話す。
「事前のミーティングでコーチから『スライドステップ(クイックモーション)はしっかりやるように』と注意がありました。日本の過去のWBCなどの戦い方を見ても、どの選手でも盗塁を仕掛けてくることは分かっていますから。普段のメジャーの野球でも対策はきちんとします。ただ、メジャーは走ってくる選手とまったく走らない選手がはっきり分かれているので、後者の場合は走者を気にせずに大きく足を上げて投げるケースはあります。『メジャーはクイックをしない』というのは、その印象で見ているからかもしれません」
小久保ジャパンが目指す第4回WBCまであと2年半。時間はたっぷりあるが、侍ジャパンとして活動できる機会や期間は限られている。この日米野球を試金石に、侍ジャパンは更なる「結束」を求めていかなければならない。