石川遼と松山英樹が不振からの脱出へ――=11月20日開幕のダンロップで揃い踏み

松山の優勝に刺激を受けて国内合宿を敢行

今年7月のセガサミーカップ以来の国内ツアー揃い踏みとなる石川と松山(写真は2013年日本ツアー選手権より) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 ダンロップフェニックストーナメント(宮崎・フェニックスCC)の楽しみは、何と言っても海外の強豪選手のプレーぶりが直接見られるところにある。昨年と一昨年は、ルーク・ドナルド(英国)が「ゴルフのスコアはこうやって作るもの」というお手本のようなプレーを見せて優勝し、ゴルフファンを喜ばせてくれたものだ。11月20日から4日間にわたって行われる今年は初来日する21歳の新鋭、ジョーダン・スピース(米国)が大会の目玉だが、世界を舞台に活躍する石川遼と松山英樹の2人が久々に国内ツアーで揃い踏みするのも見どころになる。

 今季、国内ツアーで石川と松山が同じフィールドに立つのは、7月のセガサミーカップゴルフトーナメント以来だ。そのときは、下位で低迷する松山を尻目に、石川は小田孔明とのプレーオフの末に勝利している。そのころの石川は、PGAツアーでの不振を払拭することを課題に、米国の試合をスキップしてまでも、一時帰国して札幌近郊で合宿してスイング調整に取り組んでいた時期でもあった。

 石川をこの時期に合宿へ踏み切らせたのは、言うまでもなく、6月のザ・メモリアルトーナメントでPGAツアー初優勝を果たした松山に刺激を受けたことが大きい。石川は松山に対して「おめでとう」と祝福するのと同時に、「悔しい」という言葉を率直に口にしていたものだ。

PGAツアーで薄れていた攻める姿勢

 PGAツアーで、予選通過を意識して戦ってきた石川は、それまでの身上である攻める姿勢が薄れてスケールの小さいゴルフになっていたと、松山の優勝で気付かされたのだ。それは、気持ちのスケールばかりでなく、スイングも小さく、振り切りが悪くなっていたと石川は言う。ただし、そういう予選通過を優先するスケールの小さいゴルフも、ひとつの引き出しとして持っていることは、ゴルフの幅を広げるという意味では無駄なことではなかったとも石川は言っていた。スケールの小さいゴルフに慣れてしまうと、攻めることに対して怖さが出てきてしまう。それを石川は払拭したかったのである。

 その気持ちとスイングの調整が順調だったからセガサミーカップで勝てたとは、石川はまったく思っていない。「まだまだ課題は克服できていなかった」と石川は自身のゴルフを振り返っていた。会場のザ・ノースカントリーは、林がほとんどなくショットを曲げても、リカバリーが容易なコースだ。「あのコースだから僕は勝てました。でも、優勝を争っていた(小田)孔明さんはどこのコースでも勝てるゴルフをしていたんです」と石川は言う。あれから3カ月が経ち、石川の課題であったアイアンショットの精度がどれぐらい改善されたのかが、林で囲まれたフェニックCCでのプレーのカギになるはずだ。石川が言うように開催コースとの相性が成績を左右する。

ドライバーは松山、パーオン率は石川

 PGAツアーの2014−2015シーズンが開幕して、松山は4試合、石川は3試合を戦っている。まだ試合数が少ないので両者のスタッツを比較してもあまり意味はないが、フェニックスCCを攻略する上で気になる部門だけを取り上げてみよう。(11月18日現在)

 ルーク・ドナルドの攻め方でも分かるが、フェニックスCCは飛距離よりも、狭いフェアウエイをキープするドライバーの正確性が必要になる。石川のフェアウエイキープ率が52.98パーセントで223位なのに対して、松山は65.71パーセントで73位にランクされている。この部門に関しては圧倒的に松山に分があるようだ。

 だが、パーオン率を見ると、松山の71.48パーセントで90位に対して、石川は75.93パーセントで16位にランクされている。アイアンの精度を高める石川の取り組みが順調に成果を上げつつあることを窺わせる数字だ。

直近では石川、松山ともに低迷しているが…

 ダンロップフェニックス直近の試合での2人の成績を見ると、三井住友VISA太平洋マスターズに出ていた石川は、60位タイと低迷している。ただし、パーオン率は88.89パーセントで、出場選手の中ではトップである。WGC−HSBC選手権に出ていた松山は、41位タイ。岩田寛が3位タイと健闘していた大会だけに、石川と同様に低迷しているように思えてしまうのは、やむを得ないだろう。

 アマチュア時代の2012年に2位になったことがあるダンロップフェニックスを「メジャーを制するためには、勝たなければいけない試合」と位置付ける松山。昨年はワールドカップ出場で参戦できなかった石川は「2年間の成長をファンの皆様に披露したい」とコメントしている。世界で戦う若き両雄が、このところの不振を吹き飛ばして、どんなプレーを見せてくれるのか、開幕が楽しみだ。
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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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