低い関心も国際大会で戦う“プロ注” 代表での活躍は先に待つ飛躍への一歩

室井昌也

昨年の社会人代表より見劣りするメンバー

アジア大会に出場している侍ジャパン社会人代表。アジアVへの関心とともに、ドラフト候補選手の活躍も見逃せない 【写真:ロイター/アフロ】

 アジア大会(韓国・仁川)に参加中の野球日本代表「侍ジャパン」社会人代表。彼らには大会とは別の視線も注がれている。それは「誰がドラフトで指名され、プロ入りするのか」ということだ。

 日本代表を率いる小島啓民監督(50=三菱重工/長崎県庁)は、8月の第1回強化合宿最終日に、今回のメンバー構成についてこう話した。「昨年の代表からは優秀な投手が5人ドラフト指名された。しかし、今年は彼らの代わりになる選手を探している」。それは今回の顔ぶれが、昨年10月の東アジア大会代表よりも見劣りするのは否めないという言葉だった。

 昨年の社会人代表からプロ入りしたのは、石川歩(千葉ロッテ)、浦野博司(北海道日本ハム)、東明大貴、吉田一将(ともにオリックス)、秋吉亮(東京ヤクルト)の5投手。野手では井上晴哉(千葉ロッテ)、田中広輔(広島)と、大学生で唯一代表入りした山川穂高(埼玉西武)の3人を輩出している。

 それでは今回はどうか。パ・リーグの球団のアマ担当スカウトは「上位指名ではないが」と前置きした後、投手では今村幸志郎(25=西部ガス)、加藤貴之(22=新日鉄住金かずさマジック)、野手では石川駿(24=JX−ENEOS)、倉本寿彦(23=日本新薬)の名を挙げた。

代表はスカウトへの良いアピールの場

長打力が持ち味の石川。代表では7番での起用が多く「上位につなぐ役割をしたい」と話す 【ストライク・ゾーン】

 国際大会での大一番とドラフトを前にした選手たち。彼らの心境はいかなるものか。

 長打力が持ち味の内野手・石川はドラフトについて「代表の中には同学年が少ないので、ドラフトの話はしないです」と話す。また、投球時の肘の出方が特徴的な、変則左腕投手の今村は「代表メンバーの中にはドラフト候補と呼ばれる選手が少ないですし、たまにドラフトの話題が出ても、あまりその話では盛り上がらないです」と答えた。その理由について「実際、ドラフト直前にならないとどうなるか分からないから」と話した。彼らにとってドラフトは、デリケートかつ、考えても答えが出ないテーマとなっている。

 そんな彼らを、今回30歳で初めて代表入りした投手、佐竹功年(トヨタ自動車)は一歩離れた位置からこう見ている。
「“みんな頑張ってプロに行けよ”って思っています。去年のメンバーからたくさんプロに行って選手が抜けたから、僕らは今回、代表入りできました。それは彼ら(今村、石川)も同じように思っているでしょう」

 佐竹の言葉に今村と石川は大きくうなずいた。大幅な選手の入れ替わりは戦力ダウンになる一方、多くの選手にチャンスと経験の場が与えられている。

 佐竹はこう続ける。
「僕が代表の候補になったのは今回が4度目。前から日本代表のユニホームを持って家に帰りたいと思っていたので、代表入りできて光栄です。プロを目指す人にとって、日本代表はスカウトへの良いアピールの場になると思います」

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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