世界一の山・エベレストは、自分のからだとの会話がカギ

カラダにいい100のこと。

【カラダにいい100のこと。】

【カラダにいい100のこと。】

 1953年に人類初のエベレスト登頂を成し遂げたエドモンド・ヒラリー。当時の様子を、実際の映像と再現映像で描いた3D映画「ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂」が6月28日(土)から全国で公開される(現時点では公開済み。一部で公開中)。そんな偉大なエドモンドを父に持ち、自身も冒険家としてヒマラヤ、エベレスト登頂を果たしているピーター・ヒラリーさんに、エベレストの魅力やエベレストに登頂するのに必要な精神力について聞いてみた。

 今年50歳になるピーターさんだが、現在も息子さんと一緒にロッククライミングや登山を楽しんでいるという。

「初めて山に登ったのは10代の頃。36歳でエベレスト登頂したときにはすでに17〜18年のクライマー歴がありました」

 身近にある小さい山から大きい山まで、とにかくたくさんの山に登ることがエベレスト登山に向けたトレーニングだったと語るピーターさん。エベレストに登る直前は、毎日のランニング、急な坂道を走る、懸垂といったハードなことも。

「標高8,000mにもなると、脈拍がとても速くなるし、呼吸も荒くなる。そういう状態で何日も過ごすわけですから、横隔膜や胸筋が鍛えられていないとついていけなくなります」
 極限状態に陥るという標高8,000mの世界は計り知れない。準備万端の状態で臨んでも、最後は“意思の力”だけだと語るピーターさん。

「7,000mを超えると、燃料が空っぽのまま走っている車のような状態。もうどうしようもない、でも前に進むしかない」

 そんなギリギリの精神状態で大切なのは自分自身との会話。

「自分の意思や精神力にも自信がなくなってくるんです。そういうときに“頂上を目指す”のはとてもつらいこと。『あと3歩だけ歩こう』と言い聞かせ、歩いたら『よくやった!もう一回、もう3歩だけ歩こう』という感じで刻んでいくしかなくなるんです」

 想像を絶する過酷さだというが、そこまでして登りたくなるのはなぜなのか。

「普通の生活では決して味わえないような密な時間、密な経験ができるんです。まさに魂が鼓舞されるような体験。あの体験は地上ではできない! もう一回行こう! となるんです」

 そんな危険と隣合わせの魅力の山・エベレスト登山に必要なのは物事を冷静に見る目だという。

「遠い先に希望があるということは見失ってはダメですが、ポジティブさだけでは危険。山では毎年多くの人が亡くなっていますし、世の中ポジティブなことだけではない。そういうことも全部冷静に見つつ、最後の希望の光には常に焦点を当てている、ということが一番大切なことですね」

 生きるか死ぬかという状態で、人間の限界を超えるというエベレスト登山。映画「ビヨンド・ザ・エッジ―」で、エベレストの美しさと怖さを思いっきり体感してみるのはいかがだろうか。人間の身体の限界や可能性を考えさせられるこの映画が、“からだにいいこと”について見直すきっかけとなるだろう。

【写真(インタビューカット)石渡朋/宮原未来】
【表紙写真:(C)2013 GFC(EVEREST)LTD.ALL RIGHTS RESERVED】

■ピーター・ヒラリー
1954年ニュージーランド生まれ。エベレストを初登頂したエドモンド・ヒラリーの長男。冒険家として活躍するほか、登山のコンサルタントや、オーストラリア・ヒマラヤ基金の責任者でもある。

■『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』
監督・脚本/リアン・プーリー 出演/チャド・モフィット、ソナム・シェルバ、ジョン・ライト、ジョシュア・ラター、ダン・マスグローブ/
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