日常生活にヨガのエッセンスを取り入れる 第6回「ヨガの哲学・八支則について」

村上華子

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ヨガを深めるために守るべき8つの段階

 日々、ヨガを実践している愛好家(男性は「Yogi/ヨギー」、女性は「Yogini/ヨギーニ」と呼ぶ)にとって、ヨガはひとつの生き方、ライフスタイルとしてとらえられています。例えば、ヨガ用語のなかに“Off The Mat”という表現があるのですが、これは“ヨガマットからおりた時も、ヨガをし続ける”という意味です。とはいえ、日常生活のなかで実践するヨガとは、いったいどんなことなのでしょうか?

 まず、ヨガの根本経典『ヨーガ・スートラ』を紐解くと、そこには「アシュタンガヨガ(八支則/はっしそく)」という、ヨガを深める(悟りに近づく)ために、守るべき・行うべき8つの段階が説かれています。

 古代インドから受け継がれてきた伝統的なヨガは、この8つの段階を順番に実践していくことであり、また、その探求というプロセスの中で、人間が本来持っている肉体や精神、霊性の質を高めながら、自己実現を可能にしていくもの。ではここで、ヨガを深めていく8つのステップ、八支則をご紹介していきましょう。

アシュタンガヨガ/八支則

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(1)ヤマ(yama) 禁戒。してはいけない5つのこと
(2)ニヤマ(niyama) 勧戒。積極的に行う5つのこと
(3)アーサナ(asana) 座法。心統一の座り方
(4)プラーナヤーマ(pranayama) 調気法。呼吸のコントロール
(5)プラティアーハーラ(pratyahara) 制感。五感の制御
(6)ダラーナ(dharana) 凝念。集中すること
(7)ディヤーナ(dhyana) 静慮。瞑想、集中が深まった状態
(8)サマーディ(Samadhi) 三昧。心の働きが無くなった状態、悟り

※サンスクリット語でアシュタは「8」、アンガは「部分」の意味

 一般的なヨガのスタジオで行う主なレッスンは、八支則の3番目「アーサナ(ヨガポーズ)」と、4番目「呼吸法」の項目にあたります。そして、冒頭でお伝えした“日常生活で実践するヨガ”というのは、1番目と、2番目の項目。この「ヤマ/ニヤマ」を行うことで、ココロの平静を得て、息の長いヨガの実践を支える基盤をつくるという目的があります。その「ヤマ/ニヤマ」は下の各5つからなる内容で構成されています。

【Yama(ヤマ)】禁戒

社会的な道徳、他人や物に対して守るべき5つのこと。

・「Ahimsa(アヒムサー)」/非暴力
肉体的な暴力だけではなく、ココロの中にも暴力的な感情を生じさせないこと。

・「Satya(サティア)」/誠実
どんな時も嘘をつかず、正直に、誠実に生きること。

・「Asteya(アステーア)」/不盗(ふとう)
他人の物や時間、信頼などを盗まない。

・「Brahmacharya(ブラーマチャリア)」/梵行(ぼんぎょう)
自分のなすべき事だけを行い、エネルギーの無駄遣いをしない。

・「Aparigraha(アパリグラハ)」/不貪(ふどん)
執着をせず、必要以上のものを放棄することでココロの煩わしさから解放されること。

【Niyama(ニヤマ)】勧戒

自分に課す約束や抑制、積極的に行うべき5つのこと。

・「Shaucha(シャウチャ)」/清浄
ココロや体、言葉等、いつも純潔な状態に保つ。

・「Santosha(サントーシャ)」/知足(ちそく)
物心、与えられたものに満足し、足りているということを知る。

・「Tapas(タパス)」/苦行
鍛錬すること、現実を受け入れる強さを培うこと。

・「Swadhyaya(スバーディヤーヤ)」/読誦(どくじゅ)
経典を学び、マントラを唱え、日々精神の向上を行うこと。

・「Ishvarapranidhana(イーシュバラ・プラニダーナ)」/祈念(きねん)
人や自然、あらゆるものに感謝し、献身的な気持ちをもつこと。

 ここまで読んで、なんとなく聞いたことがある!と、感じる人もいたのではないでしょうか。実はこれら、仏教や旧約聖書のなかにも、同じような戒律があるのだそうです。皆さんもぜひ、ヨガスタジオ等でアーサナや呼吸法を学んだら、「ヤマ/ニヤマ」も意識しつつ、日常生活にヨガのエッセンスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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著者プロフィール

ヨガインストラクター、ライター。2004年にヨガを始め、綿本彰氏のスクールで指導者としてのトレーニングを積む。仲間とともに設立したヨガスタジオ「HAS YOGA(ハスヨガ)」などで指導を行うほか、ヨガコラムの執筆など多方面で活躍。ヨガを通じ、人々の幸せの輪が広がることを願っている。2012年12月に第一子を出産後は、自身の経験を踏まえながらマタニティヨガの普及にも情熱を注ぐ

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