アジアVのカギ握る8人の「侍」投手陣、DeNAファーム戦で見えた光明

室井昌也

「相手チームに嫌がられそう」な投手陣

アジア大会で金メダルを目指す侍ジャパン社会人代表。写真は先発として期待される関谷亮太(左)と加藤貴之 【ストライク・ゾーン】

 ことし9月に行われる、アジア競技大会(アジア大会/韓国・仁川)。社会人野球の24選手で構成される野球日本代表は、8月2日から第1回強化合宿をスタートし、6日には横浜DeNAベイスターズのファームと強化試合を行った。「侍ジャパン」として金メダルを目指す彼らは、強豪たちにどう立ち向かうのか。

 小島啓民監督(50歳=三菱重工/長崎県庁)はアジア大会での戦い方について、6日の試合後の会見でこう話した。

「総力戦になると思う。たくさん点を取れると思っていない」

 そのため、野手の人数を増やし、投手の数を2010年の広州大会より1人減らし8人にした。その数はライバルとなる韓国の11人、台湾の10人と比べると少ない。その8人を小島監督は「相手チームに嫌がられそう」と評し、バラエティーに富んだ顔ぶれとなっている。

主軸投手がDeNAクリーンアップを連続三振

プロ2軍チームを相手に好リリーフを見せた幸松司(左)と今村幸志郎 【ストライク・ゾーン】

 6日の強化試合ではそのうち6人が登板した。先発の加藤貴之(22歳=新日鉄住金かずさマジック)は左からゆったりとしたフォームで、キレのある直球を投げ込み、2回2/3を1失点。加藤同様に先発候補の関谷亮太(23歳=JR東日本)は3番手で登板し、伸びのあるストレートを武器にDeNAの1〜4番から4者連続三振を奪った。

 リリーフ陣では右のサイドスロー、幸松司(32歳=JFE東日本)がランナーを一塁に置いた場面できっちり内野ゴロを打たせ、併殺を奪う好投。また、DeNAのクリーンアップ、3番・松本啓二朗、4番・下園辰哉と左打者が続くところでは、左の今村幸志郎(25歳=西部ガス)がマウンドに上がり、クロスに踏み込むフォームで2者連続の空振り三振を奪うなど、起用法の一端が垣間見えた。

 その他に右のリリーフとして、佐竹功年(30歳=トヨタ自動車)、守安玲緒(27歳=三菱重工業神戸)が登板。試合は4対4の引き分けだった。

自信を見せる小島監督

アジア大会での戦いでカギを握る投手起用に自信を見せる小島監督(左から2人目) 【ストライク・ゾーン】

 小島監督は投手陣の中で「柱にならなきゃいけない存在」として左腕の片山純一(31歳=JR東日本)を挙げた。片山は現在故障中だが、大会には間に合う見込みだ。また、この日は登板がなかったが、先発候補のサウスポー、横田哲(22歳=セガサミー)にはチーム関係者がメンタルの強さに太鼓判を押し、国際舞台での活躍に期待が高まる。

「(1試合を)1人で投げ切ることはない。今日のようにどんどんつぎ込む。継投になったらこちらの責任」と投手起用に自信をのぞかせる小島監督。「投手は8人で十分。どの国に誰を投げさせるかというのを考えて選手を選んだ。ただ、それをここでは言えない(笑)」と、現役時代はバルセロナ五輪で銅メダルを獲得するなど、国際経験豊富な指揮官は、対戦相手のイメージをしっかりと持っている。

 大半がプロ選手の韓国と、約半分が海外組の台湾に挑む日本の社会人代表。その勝負のカギはマウンドに立つ、8人の侍が握っている。
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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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