上原浩治の代替選出は“既定路線” なぜ最初の球宴メンバーから漏れたのか?

菊田康彦

田中将大の代替選手として滑り込み

ここまで5勝2敗18セーブという成績で守護神として活躍する上原。初めてオールスターに選出された 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 なんとも複雑なニュースが飛び込んできた。メジャー1年目でオールスターに選ばれていた田中将大(ヤンキース)が、故障者リスト(DL)入りのために出場を辞退。代わりにレッドソックスの守護神である上原浩治が、代替選手として選ばれたのだ。

 もっとも、上原の代替選出は“既定路線”だったと言っていい。出場選手が発表された7月6日(日本時間7日。以下、すべて現地時間)の会見で、ア・リーグを指揮するレッドソックスのジョン・ファレル監督が上原の選出漏れに言及し、「コウジ・ウエハラは、日曜日(13日)に先発する(球宴選出)投手がオールスターを辞退した場合、代替選手の第1候補になる」と話していたからだ。

 原則として、球宴2日前の日曜日に先発した投手はオールスターで登板できない。当初は田中もこれに該当する見込みだったのだが、そうなれば代わりに出場する代替選手が選ばれることになる。その場合は真っ先に上原を選ぶとファレル監督が公言したため、現地メディアはこぞって上原の球宴出場の可能性を報じていた。

「レスターがオールスター選出、上原は代替要員」(コムキャスト・スポーツネット)
「レスターは監督推薦でレッドソックスからただ1人選出、上原は代替選手で出場見込み」(マスライブ.com)
「コウジは今週後半にもオールスターに選出の見込み」(MLB.com)

 レッドソックスのお膝元であるニューイングランドの地方紙の1つ『ザ・プロビデンス・ジャーナル』に至っては、電子版で「ジョン・レスターとコウジ・ウエハラがレッドソックスを代表してオールスター出場へ」との見出しを打ち、上原の出場はすでに決まっているかのような伝え方をしていたほどだ。

選出が有力視されていたエースと守護神

 そもそも今年の上原は、ハナから出場選手に選ばれてもおかしくないだけの成績を残している。ここまで42試合に登板して5勝2敗18セーブ、防御率1.65。チームが低迷していることもあってセーブ数はリーグ5位タイながら、セーブ数上位6人の中でも防御率、被打率(1割7分9厘)は軒並みNo.1である。その上原が最初に発表された出場メンバーから漏れていたのはなぜか?

 昨年はワールドシリーズを制しながら、今シーズンはア・リーグ東地区の最下位に沈むレッドソックスにあって、オールスター出場が有力視されていたのは、チームトップタイの9勝を挙げ、防御率2.65でリーグ6位のエース、ジョン・レスターと上原の2人。ファレル監督は会見で「ジョン・レスターもコウジもシーズン前半戦を通じて、オールスター級のピッチングをしてきた」と話したが、本音ではどちらもオールスターに出したかったはずだ。

1/2ページ

著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント