世界新間近の走り高跳びは混戦模様 躍進の戸邉もダイヤモンドリーグ参戦
6人目の現役2メートル40越え選手が誕生
活況の男子走り高跳び界。ボンダレンコ(写真)、バルシムらが2メートル40越えの好記録を連発している 【写真:アフロスポーツ】
「プロツェンコとは何度か同じ試合に出たことがあって、良い跳躍をする選手だな、という印象がありました。ニューヨーク大会(6月14日)でも2メートル40に挑戦していて良い感じ(編注:この高さは成功せず、2メートル35で3位)だったので、どこかで跳ぶだろうとは思っていました」
戸邉は今年5月に2メートル31の日本歴代3位タイを跳んだ日本のホープである。われわれメディアにとっては驚きの出来事だったが、同じフィールドでプロツェンコの力を肌で感じていた戸邉にとっては、予測の範囲内の出来事だった。
とはいえ、2メートル40以上を跳んでいる現役選手が6人になった現状については、戸邉も驚きを隠せない。
「数年前まで2メートル40を跳べば、ハイジャンプ・ロイヤリティ(「走り高跳びの王族」の意)に入ると言われていましたが、今や2メートル40ではとても入れません。2010年頃は2メートル35くらいでメダル争いができましたし、2メートル40を跳んだら金メダルは確実でした」
それが一昨年からレベルが上がり、昨年からは2メートル40ラッシュとでも言うべき状況になっている。世界記録(2メートル45)更新への期待も高い。
大会ごとに勝者が入れ替わる大混戦
続いたのはボンダレンコで、7月のローザンヌ大会で2メートル41。08年の世界ジュニア選手権優勝者だが、故障がちのため記録を伸ばせなかった。それが昨年だけで10センチも自己記録を伸ばし、同8月の世界選手権モスクワ大会も2メートル41の大会新で優勝した。
その後の冬期の室内シーズンでは、12年ロンドン五輪金メダリストのイワン・ウーホフ(ロシア)が復活。2メートル42を筆頭に3試合で2メートル40台に成功した。同じロシアのアレクセイ・ドミトリクも2月に2メートル40と大台に達した。
そして迎えた屋外シーズン。世界選手権モスクワ大会銅メダルのデレク・ドルーアン(カナダ)が4月末に2メートル40をクリアした。5月9日のダイヤモンドリーグ開幕戦・ドーハ大会では、ウーホフが2メートル41と屋外初の大台突破。2日後のゴールデングランプリ東京ではボンダレンコが2メートル40で、ウーホフを抑えた。
2メートル40台の5選手全員が出場して注目を集めた6月5日のローマ大会は、バルシムが2メートル41でボンダレンコを破った。勝率はボンダレンコが一番高いが、大会ごとに勝者が入れ替わっている。それも、世界記録が期待できる理由の一つと言えそうだ。