国際的な威信を懸けて戦うバルセロナ ラ・マシアは何を追求するべきなのか?
イメージが大きく傷つけられたバルセロナ
4月5日のベティス戦前に「ラ・マシアは不可侵」の横断幕が掲げられると、スタジアム中が大きな拍手に包まれた 【Getty Images】
その3日前、バルセロナは未成年選手の国際移籍や登録に規定違反があったとして、FIFA(国際サッカー連盟)から2015年7月まで新規の選手登録を禁止するという極めて厳格な処分を受けた。
リオネル・メッシの脱税疑惑、サンドロ・ロセイ前会長の辞任を引き起こしたネイマールの獲得オペレーションを巡る訴訟問題、難航するメッシとの契約交渉、ビクトル・バルデスのけがによる長期離脱、そして今回の処分。
一難去ってまた一難ならぬ、一難去らぬうちにまた一難。そんな騒乱の日々が何カ月も続いてきたバルセロナでは、メディアを筆頭に多数のファン、そしてクラブの関係者までもが、こうした問題の裏に潜む“暗躍者”の存在を信じるようになっている。つまりフットボール史上最も讃えられ、世界中のクラブが模範とするようになったバルセロナの成功を快く思わない何者かによる「陰謀説」である。
今回の処分により、バルセロナはこれまで多くの偉大なクラック(名選手)を輩出し、フットボールのみならず子どもの人格形成の面でも質の高い育成環境を提供してきたラ・マシアの国際的なイメージに傷をつけられただけでなく、FIFAやスペインサッカー連盟(RFEF)との関係にも火種を抱えることになった。
国内の選手登録を統括する立場にあるためFIFAから罰金処分を受けることになったRFEFは、今のところはっきりとバルセロナを支持する声明を発していない。
バルサにとっては最悪ともいえるタイミング
これはただの偶然なのか。なぜ処分の通告がここまで遅れ、かつこのタイミングで行われたのか。それはFIFAゼネラルセクレタリーのジェローム・バルケも答えることができなかった疑問となっている。
FIFAとRFEFが近年良好な関係を保ってきたという点でも、今回の処分は不可解な印象を与えた。とりわけFIFAとUEFA(欧州サッカー連盟)の副会長も兼任するRFEF会長のアンヘル・マリア・ビジャールは、ミシェル・プラティニUEFA会長の後任と噂されているほど強い影響力を持っているからだ。
何より最大の矛盾は、2010年のFIFAバロンドール最終候補をラ・マシア出身のメッシ、シャビ、アンドレス・イニエスタが独占した際、FIFAが発したメッセージだ。
見る者に極上のスペクタクルを提供しつつ、経済力に恵まれながらも選手補強に常軌を逸した投資は行わず、カンテラ(下部組織)出身の選手を重視する。あれこそ我々が望んでいた、極めて健全な、フットボールを良い方向へと導くクラブの理想型なのだと、当時FIFAははっきりと訴えていたのだ。
だがあれから4年が経過した現在、FIFAは当時のメッセージには何の意味もなかったかのように振る舞い、それがバルセロナのイメージを大きく傷つけることになるのを承知の上で、規定に基づき処分を下した。一方で他のビッグクラブが同様の違反を犯している可能性を調査することはなかった。