キズナの力、3強から一瞬で“独り舞台” なぜ2番人気? 武豊の不満は単勝だけ

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キズナが大阪杯を快勝、春GI、そして秋の凱旋門賞へ最高のスタートを切った 【スポーツナビ】

 春の古馬GI戦線へ向けた伝統のステップレース、第58回GII大阪杯が6日、阪神競馬場2000メートル芝を舞台に行われ、昨年のダービー馬で武豊騎乗の2番人気キズナ(牡4=栗東・佐々木晶厩舎、父ディープインパクト)が優勝。最後方待機から直線大外を一気の末脚で全馬まとめて差し切った。良馬場の勝ちタイムは2分00秒3。

 キズナは今回の勝利で通算10戦7勝(海外2戦1勝含む)。重賞は2013年GI日本ダービー、同GIIニエル賞、同GII京都新聞杯、同GIII毎日杯に続き5勝目。来たるGI天皇賞・春、GI宝塚記念、そして秋のGI凱旋門賞制覇へまずは好スタートを切った。

 キズナから1馬身半差の2着には柴山雄一騎乗の6番人気トウカイパラダイス(牡7=栗東・田所厩舎)。昨年のGI菊花賞馬で福永祐一騎乗の1番人気エピファネイア(牡4=栗東・角居厩舎)はさらにクビ差遅れの3着に敗れた。また、昨年の牝馬GI3勝馬で武幸四郎騎乗の3番人気メイショウマンボ(牝4=栗東・飯田祐厩舎)は、見せ場なく7着に敗れた。

心配事を吹き飛ばした鮮烈末脚

上がり3F33秒9! 最後方から全馬まとめてアッサリと差し切った 【スポーツナビ】

 2013年のダービー馬、菊花賞馬、オークス馬と同世代のクラシックホースがそろい踏みした大阪杯。GIでもなかなかお目にかかれない豪華対決が春の阪神GII戦で実現した。これはのんびりとテレビ観戦している場合ではないと、GIレース以外で仁川に“遠征”するのは久しぶりのことである。

 遠征取材とはいえ、大学時代に阪神競馬場からほど近い逆瀬川に住んでいた自分としては、勝手知ったるホーム。でも、これだけ妙な緊張感も久しぶりだ。それは、レースへの素直な期待感はもちろん、カメラ兼任でやっているから写真は絶対に失敗できないし、“まず、ないだろう”とは思っていても、もし3頭すべてが負けた場合は勝ち馬含めた全員分のコメントが取れるだろうか(たぶん無理だ)とか、単騎で細々と取材している身としては、強い馬がたくさん出走するということはそれだけ心配事も多いわけである。

 やっぱりゴロゴロとノープレッシャーでテレビ観戦しとけば良かった、とレース直前になって無責任にも思ってしまったわけだが、あれこれ考えていたことがアホらしくなるくらい、キズナの末脚は鮮烈だった。

「絶対に負けないと思っていた」

3着に敗れたエピファネイア、次走の香港ではきっちりと巻き返したい 【スポーツナビ】

「いい勝ち方でしたね。キズナらしい素晴らしい末脚でした」(武豊)

 道中は最後方の位置取り。ちょうど目の前には同世代最大のライバルでもあるエピファネイアと福永祐一がいた。が、これは特に狙ってのマークではない。以下は武豊の言葉だ。
「どの馬の後ろとか、特に考えていなかったですね。自分のレースをしようと思っていたら、たまたま前にエピファネイアがいた。ポジションは考えていなかったですし、自分のリズムで走って、自分のタイミングで仕掛けていこうと思っていました」
 カレンミロティックが引っ張る平均ペースの中、武豊キズナが“自分のリズム”で仕掛けたのは3コーナーを過ぎてから。大外からまずは弟・武幸のGI3勝牝馬メイショウマンボを飲み込んでいくと、直線入り口ではエピファネイアを射程圏に――ここで誰もが期待したのは2頭による一騎打ちだろう。しかし、そうはならない。キズナの末脚が1枚も2枚も上を行っていたからだ。

 レースを直で見て、またファインダー越しで見た素直な感覚で言うと、勝負は“アッサリ”。数字を見ても、レースの上がり3Fタイムが36秒3であるのに対し、メンバー最速のキズナはなんと33秒9(!)をマーク。2番目に速い上がりだったエピファネイアが34秒4なのだから、キズナが繰り出した末脚の威力がいかに図抜けていたかというのが分かるというもの。約10カ月ぶりの再戦でキズナは、エピファネイアに“格の違い”すら見せつけてしまった格好である。
「ファンがたくさんいる馬だとは思うんですけど、なんで2番人気だったのかな?って(笑)。このレース、自信あったんですけどねぇ」
 武豊がこう言えば、佐々木晶三調教師も「絶対に負けないと思ってたのに、なんでこんなに人気ないの? ダービーでもエピファネイアに勝ってるのにね」。不満があるとすれば、それはレース内容ではなく、単勝人気に対してだったようだ(※キズナ2.4倍、エピファネイア1.9倍)。

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