キズナの力、3強から一瞬で“独り舞台” なぜ2番人気? 武豊の不満は単勝だけ

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指揮官の視線はすでに凱旋門賞へ

サラブレッドとしてキズナはひと回りもふた回りも大きく成長していた 【スポーツナビ】

 この単勝人気の差はおそらく、2、3歳時の早い時期にはエピファネイアが折り合いに難がありながらキズナを続けて負かしていたこと、そしてキズナ不在の3歳秋には課題だった折り合いがつくようになり菊花賞を圧勝したことが“本格化”をイメージさせたからか。
 対するキズナはダービー勝利後、フランスのGIIを勝ち、凱旋門賞でも4着と健闘したが、そこから約半年ぶりの休み明けという点が、ファン心理にマイナスポイントに映ったのかもしれない。

 しかし、ふたを開けてみればこの結果である。ダービー後に走ったレースは互いに2戦。だが数は同じでも、キズナが走った“世界”での2戦は計り知れないほどの大きな経験となって、彼を1段も2段も次元上昇させていたのだ。そして、パドックで見たキズナは馬体重通りに大きく見えたのだけど、それは体だけじゃなく、サラブレッドとしての器そのものがひと回りもふた回りも大きく見えたからなのかもしれない。

「本当にパワーアップしてるんですよ。僕はね、キズナが日本で一番強いと思っている。でも、ジャスタウェイとかいますから、盛り上げていくためにもここでは負けられない。やっぱり勝たないと。まあ、宝塚記念はすごく盛り上がりそうだね」
 佐々木晶調教師がここでジャスタウェイの名前を出したのは、やはり日本国内にとどまらず“世界”を意識しているからこそ。宝塚記念で国際GIホースを負かし、いざ凱旋門賞リベンジへ――指揮官の青写真はすでにそう描かれているようにも感じられた。

武豊キズナと見る夢、素晴らしい現実へ

春は天皇賞と宝塚記念、そして秋は凱旋門賞だ 【スポーツナビ】

 もちろん、武豊も同じ思いである。
「今年はキズナといっしょに大きい仕事をやっていきたいと思っています。まずは最高のスタートが切れましたね」

“同世代3強対決”から一転、“独り舞台”に変えてしまったキズナの力。かく言う自分もここまでとは想像してなく、ショウナンマイティの単勝で大勝負してやろうか、なんて思っていた見る目のなさを恥じるばかりである。そして、今後のローテーションは「天皇賞・春、宝塚記念、そして秋は夢のGIへ」と佐々木晶師。キズナとともに見る2014年の夢、それはきっと素晴らしい現実になるに違いない。ヨイショでもなんでもなく、素直にそう思わせてくれる武豊キズナの春初戦だった。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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