克服しつつある水泳への苦手意識 「松原渓のスポーツ百景」
泳ぎが苦手な私がトライアスロンに!
サイパンの青く澄んだ海 【松原渓】
社会人になってから「泳ぐことを避けてきた」と書いたが、一度だけ、どうしても泳がなければならないシチュエーションがあった。それは、2009年に参加した「タガマン・トライアスロン」。ランナーとしてさまざまな大会に出場していた友人の大櫛エリカさんが、フィットネス雑誌の企画でこのトライアスロンに参加することになり、私を誘ってくれたのだ。
この大会はサイパンで定期的に行われていて、スイム(泳ぎ)2キロ、バイク(自転車)60キロ、ラン(走り)15キロ(2009年当時)の合計タイムを競う。個人で3種目に挑戦しても良いし、チームでのリレー形式でも良い。雑誌の企画はリレーで参加することになったが、ランとバイクを担当する女子は決まったけれどスイム担当がまだ決まっていないということで、私にオファーをいただいたのだった。
友人と一緒の海外ロケは楽しそうだし、サイパンの海は奇麗だろうなぁ。私は心惹かれつつも「泳ぎは苦手なんです……というか、10年以上泳いでいないんです」と、雑誌編集者の方に正直に話した。すると、「企画の目的はあくまで楽しんでゴールを目指すことですので、もし良かったら」とのお言葉。「それでは、行かせていただきまーす!」と二つ返事で参加を決めたのだった。2キロを泳ぐ大変さは想像もできず、私の頭はすでに透明の海とバナナボートでいっぱいだったのだが……。
この大会はサイパンで定期的に行われていて、スイム(泳ぎ)2キロ、バイク(自転車)60キロ、ラン(走り)15キロ(2009年当時)の合計タイムを競う。個人で3種目に挑戦しても良いし、チームでのリレー形式でも良い。雑誌の企画はリレーで参加することになったが、ランとバイクを担当する女子は決まったけれどスイム担当がまだ決まっていないということで、私にオファーをいただいたのだった。
友人と一緒の海外ロケは楽しそうだし、サイパンの海は奇麗だろうなぁ。私は心惹かれつつも「泳ぎは苦手なんです……というか、10年以上泳いでいないんです」と、雑誌編集者の方に正直に話した。すると、「企画の目的はあくまで楽しんでゴールを目指すことですので、もし良かったら」とのお言葉。「それでは、行かせていただきまーす!」と二つ返事で参加を決めたのだった。2キロを泳ぐ大変さは想像もできず、私の頭はすでに透明の海とバナナボートでいっぱいだったのだが……。
いつかはスイム・バイク・ランを完走したい
完泳後の達成感は最高だった! 【松原渓】
そして、大会当日。夜が明けるのを待ち、早朝6時すぎに朝焼けのサイパンの海辺をスタートした。コースは3カ所にブイが設置され、トライアングル型に設定された2キロ。ただ、2キロでもプールの2キロとは話が違って、海は潮の流れもあるので条件はよりきつくなる。前日にホテルのプールで練習した時とは感覚が全然違った。
さらに、スイムは1時間の制限時間内に泳ぎ切らなければならなかった。私がリタイアしたり失格になれば、続くバイクとランの2人まで失格扱いとなり、迷惑をかけてしまう。「とにかく、ゴールが絶対条件!」と自分を奮い立たせ、スタートした。
後がない状況に追い込まれると、人は意外な力を発揮できるのかもしれない。なにしろすべてが未体験ゾーン。他の選手がクロールや平泳ぎなど自分の得意な泳ぎで2キロを泳ぎ切る中、私はクロール、平泳ぎ、背泳ぎ、犬かきを使って進んだ。普段使っていない筋肉を使うため、1つの泳法で2キロは体力がもたないからだ。
一番速い人は、私が500メートル地点にいたころ、すでにゴールしていた。次第に周りに誰もいなくなり、気持ちが焦って必死で足をバタつかせていたら、1.5キロメートル地点で右足がつった。焦って両手と左足を動かしたら、なんと左足もつってしまった! あとは腕しかない。必死の犬かきでこの窮地を切り抜けた(外から見ていたら、かなり滑稽に映ったことだろう)。
そして……ついにゴール! 砂浜に足をつけた時、全身は鉛のように重くなっていたが、そこから最後の力を振り絞って砂浜を300メートルほど走り、バイクにバトンタッチした。
文字通り限界に挑戦した1時間だったが、振り返ると良い思い出だ。遠浅のどこまでも透明な海で、海の底に広がるナマコの絨毯は興味深い光景だったし、水面から見えた水平線の朝日の美しさは忘れられない。そして、2キロを泳ぐという未知のハードルを乗り越えたことが自信になったのは言うまでもない。
さらに、スイムは1時間の制限時間内に泳ぎ切らなければならなかった。私がリタイアしたり失格になれば、続くバイクとランの2人まで失格扱いとなり、迷惑をかけてしまう。「とにかく、ゴールが絶対条件!」と自分を奮い立たせ、スタートした。
後がない状況に追い込まれると、人は意外な力を発揮できるのかもしれない。なにしろすべてが未体験ゾーン。他の選手がクロールや平泳ぎなど自分の得意な泳ぎで2キロを泳ぎ切る中、私はクロール、平泳ぎ、背泳ぎ、犬かきを使って進んだ。普段使っていない筋肉を使うため、1つの泳法で2キロは体力がもたないからだ。
一番速い人は、私が500メートル地点にいたころ、すでにゴールしていた。次第に周りに誰もいなくなり、気持ちが焦って必死で足をバタつかせていたら、1.5キロメートル地点で右足がつった。焦って両手と左足を動かしたら、なんと左足もつってしまった! あとは腕しかない。必死の犬かきでこの窮地を切り抜けた(外から見ていたら、かなり滑稽に映ったことだろう)。
そして……ついにゴール! 砂浜に足をつけた時、全身は鉛のように重くなっていたが、そこから最後の力を振り絞って砂浜を300メートルほど走り、バイクにバトンタッチした。
文字通り限界に挑戦した1時間だったが、振り返ると良い思い出だ。遠浅のどこまでも透明な海で、海の底に広がるナマコの絨毯は興味深い光景だったし、水面から見えた水平線の朝日の美しさは忘れられない。そして、2キロを泳ぐという未知のハードルを乗り越えたことが自信になったのは言うまでもない。
区民プールで、これまで苦手だと思い込んでいたクロールを泳いでいて思うのは、スポーツの「苦手意識」は、実は「食わず嫌い」が多いのかもしれないということ。初めてやってうまくいくことの方が少ないのだし、挑戦しないで損していることはたくさんありそうだ。自分で自分に限界を作ってしまうのはもったいない。だから、いつか再びトライアスロンにも挑戦してみたいと思う。その時はもちろん、1人でスイム・バイク・ランを完走することが目標だ。