バルサのネイマール獲得に不正はないか? 多くの疑問を残したロセイ会長の電撃辞任

突然の辞任発表

突如、辞任を発表したロセイ会長。ネイマール獲得オペレーションに違法行為があった疑いを持たれている 【写真:ロイター/アフロ】

 大多数のソシオやファンはもちろん、ソシオのひとりでサンドロ・ロセイを告訴した薬剤師のジョルディ・カセスも、そして彼の弁護士フェリペ・イスキエルドも、このような結末を招くことになるとは考えていなかっただろう。ネイマールの獲得オペレーションの詳細が暴かれ、カセスの告訴がマドリーの全国管区裁判所に受理されて間もなく、ロセイは突然、3年半務めたバルセロナの会長を辞任してしまった。

 的確な助言を受けていたのだろう。カセスはロセイとともに、ネイマール獲得に関わる契約書にサインしたジョセップ・マリア・バルトメウ副会長(現会長)やハビエル・ファウス副会長を告訴の対象に加える可能性も視野に入れつつ、不可解な部分が多いネイマール獲得オペレーションには違法行為が含まれている可能性があると主張してきた。

 だが支払い先との契約を理由にオペレーションの詳細を機密事項としてきたロセイの意向とは裏腹に、クラブが総額5710万ユーロ(約80億円)だと繰り返し主張してきたネイマールの獲得コストには他に3800万ユーロ(約53億円)の支払いが存在していたことが先週になって明らかになった。

 さらにロセイは辞任会見の席で、自身と家族が脅迫行為を受けていたことを明かし、それが辞任を決意する一因になったと説明している。誰による、何を目的とした脅迫なのかをロセイが明かさなかったため詳細は分からないが、昨年末には自宅に発砲された痕が発見される事件まで生じたというから、少なくともロセイが家族から身の安全を求められていたことは想像に難くない。

さらなる役員辞任の可能性もある

 ロセイはこうした状況がもたらした精神的な消耗に加え、自身に対する告発にクラブが巻き込まれるのを避けたかったことも辞任理由の1つだとしている。だが、もしカセスとイスキエルドが告訴を取り消さず、ロセイの後を継いだバルトメウ新会長やファウスにまでその対象を広げた場合には、クラブが巻き込まれた上にさらなる役員の辞任まで生じる可能性がある。

 もしそうなった場合、クラブはジョアン・ラポルタ率いるソシオグループ「エレファント・ブラウ」の活動が一因となりジョセップ・ルイス・ヌニェスとジョアン・ガスパールの執行部が崩壊した10年前よりも厳しい状況に追い込まれるかもしれない。

 とはいえ明確なプロジェクトの下でバルセロナブランドの国際化を進め、世界2位の収益を生み出し、何よりフットボールのトレンドを一変させた美しいプレースタイルによって世界中のファンを魅了している現在のバルセロナは、混沌に満ちていたヌニェス時代の末期と比べればはるかに安定した状態にあることは確かだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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