バルサのネイマール獲得に不正はないか? 多くの疑問を残したロセイ会長の電撃辞任

シーズン最大の山場が目前に迫る

ネイマールの移籍契約は詳細まで公表されたが、明らかに不自然な点がある。クラブがこれまで行った説明だけでは情報が足りない 【Getty Images】

 ロセイの辞任会見、そしてバルトメウが翌日に行った会見では、ネイマールの獲得オペレーションに関して検証すべき興味深い点をいくつも見つけることができた。

 これだけ選手の移籍契約の内容が詳細に、しかも明らかに不自然な点まで公表されることなど滅多にない。たとえばクラブはネイマールの父親に数百万ユーロも払い、ブラジルの若手選手のスカウティングやクラブのスポンサー探しを任せる契約を結んだようだが、バルセロナに住み、常に息子に同行している彼はいつどのような方法でそれらの仕事をこなしていくのだろうか?

 ロセイの電撃辞任を受けた今、クラブは非常に重要な時期を迎えようとしている。

 リーガエスパニョーラでレアル・マドリー、アトレティコ・マドリーとの三つ巴の首位争いを繰り広げているチームは、これから強豪マンチェスター・シティと対戦するチャンピオンズリーグの再開にはじまるシーズン最大の山場を迎える。そしてクラブは6億ユーロ(約841億円)のコストを伴うスタジアム改築の是非を問うソシオ総会を4月に控え、リオネル・メッシとの契約更新も保留のままとなっている。

 ロセイの辞任により、今季終了後のヘラルド・マルティーノ監督の去就も分からなくなってきた。マルティーノ監督がクルブ・リベルタやパラグアイ代表を率いていた頃からその手腕を高く評価し、昨夏に彼を招聘(しょうへい)する上でも大きな役割を果たしたのは他ならぬロセイだったからだ。一方でロセイは今季終了後にマルティーノとの契約を解除し、ワールドカップ終了後にブラジル代表監督を退任するルイス・フェリペ・スコラーリの招聘をもくろんでいるともうわさされていた。

先行きは不透明なまま

 チームは安定して結果を出している。バルトメウは会長として初めて臨んだ会見で現執行部とそのプロジェクトを2016年の任期満了まで継続するだけでなく、その後の会長再選まで目指すことを明言した。だが現在
のバルセロナの実情は、すべてが1本の細い糸でかろうじてつなぎ止められているような危機的な状況にあるのかもしれない。

 このような不可解な事態が生じた経緯を知りたくても、クラブがこれまで行った説明だけでは情報が足りなすぎる。

 ほんの数日前まで、ロセイが辞任すべき理由などどこにも見当たらなかった。裁判の件についても、既に彼は似たような告訴を受けている。ブラジルで彼は、自身の経営する会社がブラジル代表の親善試合をオーガナイズした際に300万ユーロ(約4億円)の見返りを不正に受け取った疑いをかけられているからだ。

 いずれにせよ、バルセロナはこれから荒れ狂う大海を泳いでいかなければならなくなった。それは少し前まで誰一人として予想していなかったことである。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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