思い出の場所で思い出のジャージーと。原点回帰で第12節横浜キヤノンイーグルス戦に勝利!
すべてはこのジャージーから始まった
このチームの創始者である和崎嘉彦さんは、天国でこの景色を見てくれているだろうか。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、NTTジャパンラグビーリーグワン2024-25 第12節で横浜キヤノンイーグルスと対戦し、41対24で勝利して、ホストスタジアム「えどりく」で不敗の22連勝を積み上げた。
難敵相手へのボーナスポイントを追加しての勝利。えどりくでの連勝記録。この勝利の価値は数あれど、チームにとってはもっと大きな意味がある。それはこの日、選手が着用したのは47年前のスピアーズ創部当時のジャージーを復刻させた3rd.ジャージーだったからだ。
「原点回帰」をテーマに臨んだこの試合、シーズン中盤にあえて自分たちのルーツを背負って戦う意味。それを試合後キャプテンのマキシ選手は
「このジャージーを着ることには特別な思いがあります。今日の試合は感謝の気持ちを持って、全員で勝ち切ることができました」
と語る。
事実、ルーツを背負ったスピアーズは強かった。
チームのDNAと語るモールでは再三相手を苦しめて重量フォワードが前に出たかと思えば、アグレッシブなバックスが一瞬でチャンスを作る。そして、防御では大きな選手たちが低いタックルで相手の攻撃を断ち、プレーを通してこの試合にかける思いを見せた。
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互いに持っているものをぶつけ合うような激しい攻防は、両方の陣地を何往復とし、スコアが動かないまま前半20分が過ぎた。
先に点数が動いたのはスピアーズだった。フォーリー選手の左足のキックで、敵陣ゴール前に迫ると、モールを起点とした攻撃から、根塚選手が先制トライを奪った。
その後も手堅い展開は変わらない。33分には反則から3点を返される。
だが直後にはリカス選手のチャージからチャンスを作ると、この日は白黒の重戦車フォワードが近場を突進してブルブリング選手が追加点を決めた。
前半40分で特に光ったのは、リーグ最少失点数を誇るスピアーズのディフェンスだ。テリトリーでは相手が上回るも、しぶといディフェンスで相手を食い止め、その間にディフェンスラインを再生させて隙を見てボールを奪い取る。
そして、相手陣に迫ると少ないチャンスを確実に得点に変える、今シーズンのスローガンである「TAKE YOUR SHOT」を体現したような攻撃で前半をリードして終えた。
その後も攻撃の手を緩めることはなく、直後のリスタートではオペティ選手の突進から、今度は左サイドの根塚選手が突破しリカス選手へ繋いで連続トライを奪った。
後半6分で26対3と一気に点差を離したスピアーズだったが、相手も12分のモールトライで追う。しかし、直後には会場を一段と盛り上げるスーパートライで取り返す。中盤でのフォーリー選手のショートキックをヴァイレア選手が片手でキャッチすると、約40mを走り切る。最後は相手タックルを引き釣りながらボールを叩きつけるようにトライを決めて、会場のボルテージは最高潮となる。
えどりくには赤とオレンジのファンが、互いに応援するチームのコールを繰り返す。この日は特別ジャージーだったスピアーズだが、このえどりくにはいつも通りの温かい雰囲気に満ちていた。
後半24分までには、すべてのリザーブが投入される。残り10分で相手が2トライを奪う反撃に苦しむも、残り5分では根塚選手・押川選手のバックス2人が強烈なタックルでボールをターンオーバーすると、メルヴェ選手がトライエリアまで持ち込んだ。このトライで相手に3トライ差をつけ、ボーナスポイントを得てこの試合を締めくくった。
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強いスピアーズを示した選手たち。
そして、声援に包まれた会場。
チームスタッフで唯一創部当時のジャージー着用経験を持ち、1998年の監督時代には、このえどりくでチームを東日本社会人リーグに昇格させた経験を持つ荻窪宏樹チームアドバイザーは、試合後のスタジアムを見つめてこう話す。
「気持ちが入ったいいゲームだった。思い出の場所であるこのスタジアムで、あのジャージーを着た選手たち。たくさんの観客。こんな日が来るとは思わなかった。感無量だね」
だが、これはゴールじゃない。旅の途中で出会えた思い出のひとつ。
スピアーズには見たい景色がまだたくさんある。
その景色を見るために、足元を見て一歩ずつ歩みを進める。
次の一歩は、第13節 三菱重工相模原ダイナボアーズ戦だ。
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写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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