なぜ好調の角田裕毅は、またもノーポイントに終わったのか 要因はタイヤ分析力の差?

柴田久仁夫

開幕戦に続いて、角田裕毅は中国でも速さを結果につなげることができなかった 【(c)Redbull】

レース中盤までは完璧な展開だった

 角田裕毅の所属するレーシングブルズは、レース中に他チームの無線を聞いていないのだろうか?

 もちろん、そんなはずはない。ライバルたちがどんな戦略で戦っているのか。それを知る最良の方法が他チームの無線傍受だからだ。しかし先週末のレーシングブルズのあまりに稚拙なレース戦略を目の当たりにすると、そう思いたくなってしまう。

 今季のレーシングブルズは、マシン自体は速い。しかしそれを結果につなぐことができずにいる。開幕戦は角田がフェラーリをも凌ぐ予選5番手タイムを叩き出したが、決勝レースではタイヤ交換のタイミングを遅らせすぎて12位。そして今回の第2戦中国GPも、ノーポイントに終わった。ルーキーのイザック・アジャが7番手、角田も9番手とそろって予選トップ10入りを果たしたにもかかわらず、である。

 レースでの角田はスタートで一つ順位を上げ、さらにライバルたちより1~2周早いピットインを敢行。これが功を奏して、前を抑えられていたメルセデスのキミ・アントネッリを先行することに成功した。角田のドライビングはもちろん、チームの戦略もここまでは完璧だった。

周到に考え抜かれたハースのレース戦略

幅寄せされながらもメルセデスのアントネッリを豪快に抜き去ったオコン 【(c)HaasF1Team】

 これで角田は8番手に順位を上げた。背後には直近のライバルチーム、ハースのエステバン・オコンが迫るが、角田は2秒前後の間隔をしっかりキープしていた。しかしハードタイヤを履いて20周が過ぎようとした中盤31周目、角田の周回ペースはコンマ4秒ほど落ち、オコンとのギャップは次の周には1秒3まで縮まった。

 レース後の角田は、「レース中、(1ストップ作戦の可能性を)話し合っていた」と、コメントしている。F1公式サイトではこの時点での角田の無線は公表されていないが、おそらくこの前後にそんなやりとりをしたのだろう。しかしチームは2ストップ作戦を続行し、35周目にピットインした角田は8番手から15番手に後退した。

 ところが7番手に上がったオコンは、そのまま走り続けた。実はオコンも角田と同様、ハードタイヤで20周目前後に1分38秒台までペースが落ちていた。しかしその後は1分37秒台を取り戻し、レース終盤には1分36秒台に、そして最終周には1分35秒740の自己ベストを出して7位フィニッシュを飾った。

 ハースは新人オリバー・ベアマンに、ハードタイヤでレースをスタートさせていた。2台で戦略を分けると同時に、この週末一度も履く機会がなく、どれほど持つかわからないハードのデータ取りをさせる目論見もあったはずだ。

 そして満タンで走り出したベアマンは、26周目にピットインするまで順調にラップタイムを伸ばし続けた。これでハース陣営は、オコンを1ストップで走り切らせる手応えを得たに違いない。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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