ひとつの節目と幾つかの初と~そしてやりかけの未来へ~

静岡ブルーレヴズ
チーム・協会

最高の芝が熱戦に彩りを

リーグワンでもベストピッチ賞を選定して欲しい。
レヴニスタは皆、年に一度、そう呟くのが恒例になっている。

ブルーレヴズの運営スタッフが作ったコピーがいい。

「ネンイチ、アイスタ」

日本平のアイスタことアイ・エイチ・アイスタジアム。ここは間違いなく、リーグワンの使用スタジアムで最高の芝だ。年に一度、最高の芝の上で、レヴニスタの声援を受けて戦える――

レヴズ戦士たちはなんと幸せなのだろう。

だが、その芝の上で繰り広げられた試合は厳しかった。

最高の芝の上で繰り広げられた攻防 【Photo by SHIZUOKA BlueRevs/Yuuri Tanimoto】

「今日はすごくタフな試合でした。ブラックラムズはすごく強いチームで、しかも先週も勝って勢いもあって、今日はタフになると予想してました」
クワッガ・スミス主将はそう振り返った。

象徴はトライラインを守り切るディフェンスの執念だ。

レヴズがトライラインまでボールを持ち込みながら、ラムズがグラウンディングの瞬間にボールと地面の隙間に手をねじ込んでトライを阻止した場面が三度もあった。うち一度はレヴズがボールを継続してクワッガがトライしたが、敵ながらあっぱれと拍手を贈りたくなる見事なディフェンス力そして集中力。

レヴズは前節、無敗のワイルドナイツを破った勢いに乗っていきたかったが、それは相手も同じ。ブラックラムズは第10節でダイナボアーズを、第11節ではイーグルスを破ってアイスタに乗り込んできて、クワッガの言葉通りタフなパフォーマンスでレヴズ戦士たちに立ちはだかった。

それでもレヴズは崩れなかった。

節目に勝利というGIFTを

先制トライこそ献上したが、15分にSH北村 瞬太郎のビッグゲインからクワッガ主将がトライ。左隅の難しいコンバージョンをサム・グリーンが決めて同点に追いつき、さらにクワッガとヴェティ・トゥポウがトライを重ね、風上の前半を24-7とリードした。

後半は強い向かい風に苦しんだが、73分、4点差に迫られた直後のキックオフからノーホイッスルで日野 剛志がトライを取り返した。苦しい戦いの中でも、この試合でチーム150キャップを達成したベテランは勝負のツボを外さなかった。

価値ある勝利だ。

ベンチスタートの日野が自らの節目を祝う決勝トライ 【Photo by SHIZUOKA BlueRevs/Yuuri Tanimoto】

「先週はいい試合をしたものの雨の中でコンタクトも多くて、今日は選手のコンディションも含め厳しい環境でした」と藤井監督は言った。

ここまでの負傷者、雨中の激戦のあとの疲労、イラウアの出場停止という要素もあった。前節プレイヤーオブザマッチのHO作田 駿介とNo8リッチモンド・トンガタマは公式戦初先発。

2月に追加加入したSHサネレ・ノハンバとアーリーエントリーのPR稲場 巧はリザーブからリーグワンに初登場だった。

「プレッシャーのかかる点差での出場になりましたが、それぞれが自分の仕事をこなしてくれました。チームの層も厚くなりますし、これからもっとチーム一丸となって戦っていく意味で、良いプレーをしてくれたんじゃないかと思います」(藤井監督)

作田は前半、スクラムを巧みにコントロールして再三PKを奪った。トンガタマはキックオフリターンで豪快なビッグゲインを見せた。稲場はピッチに入って最初のスクラムでグイと前に出て相手の反撃にクサビを打った。ノハンバは日野 剛志へのラストパスで勝負を決定づけるトライをアシストした。

藤井監督の言葉通り、初先発組とデビュー組は、それぞれにこの勝利に貢献するプレーをみせてくれた。

初先発となったトンガタマと作田など各々が役割を全うする 【Photo by SHIZUOKA BlueRevs/Yuuri Tanimoto】

絶妙だったのは、インパクトメンバー(リザーブ)の8人にベテラン日野が入っていたことだ。

初キャップのノハンバ、稲場がピッチに入ったとき、経験値が高く豊富な引き出しを持つ日野がいてくれたことがどれほど頼もしかったことか。それは勝利を決定づけるトライを日野自身が決めたことが証明しているだろう。

ここからまた未来が動き出す

2012年のトップリーグ・デビューから13シーズン目。積み重ねたトライはこれで58。

これは小野澤 宏時さん(元サントリーなど)、現役の山田 章仁(キューデンヴォルテクス)、北川 智規さん(元パナソニック)、現役の山下 楽平(コベルコスティーラーズ)に次ぐ歴代5位。FW選手としては歴代最多のトライを、小柄なフッカーの日野が決め続けていることに改めて驚く。

「日野はスペシャルな選手です。いつもグラウンドで笑顔でプレーしている。彼は本当にラグビーを楽しんでプレーしているし、作田のような若手たちにとってもすごくいい見本になっていると思う。彼が自身でトライを取って150キャップに到達したことを祝福したい」とクワッガ主将は言った。

日野の150th capと稲場の1st capが同じ日に刻まれた 【Photo by SHIZUOKA BlueRevs/Yuuri Tanimoto】

厳しい試合の勝利は、デビュー組にとっては価値ある経験になったはず。そして、日野というベテランと一緒にプレーできたこと、日野の150キャップという節目をともに迎えられたことは、そこにさらに喜びを添えたはずだ。

この激戦を経験して成長した選手たちのパフォーマンスを見るのが待ち遠しい。それが、アイスタの最高の芝への、デビュー戦を支えてくれた日野への、そして、そこでタフなレッスンを科してくれたブラックラムズへの恩返しになる。

まずは29日の秩父宮。相手は今季のホストゲームで唯一敗れたサンゴリアス。目指すはリーグワンになってからの初勝利だ。

【Photo by SHIZUOKA BlueRevs/Yuuri Tanimoto】

(大友信彦|静岡ブルーレヴズオフィシャルライター)

大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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著者プロフィール

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに参戦している静岡ブルーレヴズ(旧:ヤマハ発動機ジュビロ)の公式アカウントです。 「静岡ブルーレヴズ/SHIZUOKA BlueRevs 」というチーム名には、変わらない為に変わり続ける、伝統を受け継ぎ、なお「革新」を恐れない精神を象徴する “Blue” と、困難な目標にワクワクして挑み、高ぶる「情熱」を象徴する “Revs”が、一体として込められています。また、ホストエリアとなる「静岡」に貢献し、愛されるチームとなるべくその名を冠しています。 いままでヤマハ発動機ジュビロとして築き上げてきた伝統や技を活かしながらも、新たな挑戦とともに静岡から、心躍る最高の感動を世界へと届けていきます。 静岡ブルーレヴズの活躍にぜひご注目ください。

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