【台湾プロ野球だより】台鋼とオイシックスが高雄で交流試合、陽岱鋼が地元台湾で大活躍
「台鋼VS岱鋼」 が実現、高雄澄清湖球場に2日間で1.2万人のファン集まる
台湾での実戦プレーはオーバーエイジ枠で台湾代表入りした2017年11月のアジアプロ野球チャンピオンシップの壮行試合以来、実に7年4カ月ぶり。台鋼のプレスリリースには「台鋼VS岱鋼」(タイガン対ダイガン)という見出しが躍った。
その陽岱鋼と台鋼・王柏融の「新旧元ファイターズ戦士」の揃い踏み、昨季、怪我の影響で台鋼を退団後、故郷新潟のオイシックスに入団した笠原祥太郎と、逆にシーズン中に台鋼へ移籍し救援として活躍した吉田一将による先発対決、そして、苦しみながらも来年の本大会進出を決めたWBC予選台湾代表選出メンバーのチーム合流など、話題が盛り沢山であったこともあり、両日合わせ、およそ1万2000人のファンが球場に詰めかけた。
台湾球界きっての「日本通」として知られる台鋼ホークスの劉東洋GMは、2022年の球団創設時から日本人コーチの招聘、日本人選手の獲得に加え、日本球界との交流についても積極的に進めていく方針を示していたが、このオフはそれらが続々と形になってきている。
昨年10月末には期待の若手4選手を埼玉西武ライオンズの秋季キャンプに派遣、今年の春季キャンプ期間中には、洪一中監督や横田久則投手統括コーチら首脳陣が、若手投手陣14人を引き連れ、沖縄県糸満市の西崎球場でミニキャンプを実施、来春以降の本格展開に期待をもたせた。
そして、今回、2月27日、28日の両日、台鋼とオイシックスによる「港都台日親善交流戦」が開催された。台鋼側がオイシックス側にオファーし、招待する形で行われた今回の交流試合は、台鋼にとっては記念すべき、チーム創設後初のNPB球団との正式な交流試合であると共に、今季、澄清湖球場の球場開きとなった。
劉東洋GMは、「色々なハードルがあり、とてもタフでしたが、実現できて嬉しいです。こうして、オイシックスさんが澄清湖球場でプレーする姿が見られて非常に感動しました。」と顔をほころばせた。
また、現役時代のチームメイトでもある38歳の陽岱鋼については「年齢を重ね、しっかり後輩の面倒を見たり、指導にあたってくれるので、チームにとって大きな存在です」と称賛、「早速、1番ライトで使います。もう、おじさんですけれど、今日は少年のようにはしゃぎまわってほしいと思います」と冗談を交えて期待を示した。
一方、台鋼の洪一中監督は、挨拶にやってきた陽岱鋼の姿をみかけると、駆け寄ってがっちり握手。報道陣に向け「皆で『そろそろ台湾に帰ってこい』って呼びかけてよ」とリクエストしただけでなく、「僕はずっと、台湾に帰ってこいって言ってるんだよ」と熱弁、台湾球界きっての「名将」のメディアを巻き込んでのラブコールに、クールな陽岱鋼も圧倒されていた。
その後、今回、交流試合の意義を問われた洪監督は「とても嬉しい。我々よりもレベルの高い日本野球との交流が続けば、台湾の選手達の技術面はもちろん、施設などハード面でも差が縮まっていくだろう」と語り、将来的なアジアインターリーグ構想にも言及した。
そして、久しぶりに台湾メディアに囲まれた陽岱鋼は「自分のチームと一緒に台湾に戻ってきて、南部・高雄での試合が実現してとても興奮している。ファンの皆さんにいい試合を見せたい。オイシックスの若手達には、台湾野球の情熱を肌で感じてもらえれば」と期待を示した。洪監督の「ラブコール」について問われると、「毎回会う度に言われますね」と苦笑いしつつ、「まだまだ学びたいこと、学ばないといけないことがたくさんあるので、急ぎません。プロ選手として、少しでも成長したいと日々考えながら、プレーをしています」とのみ答え、今後の台湾でのプレーの可能性については明言はしなかった。
台鋼側で、その活躍により、交流試合開催を大きく後押ししたといえるのが、昨年8月、オイシックスから途中加入、15試合登板、15回2/3を自責1と救援で素晴らしいパフォーマンスを見せた吉田一将だ。ファンから「台鋼のダルビッシュ」という愛称もつけられた吉田は、台湾での古巣との交流試合実現に「向こうにも台鋼でプレーした笠原投手がいて、こちらにも、モヤとかも含めてNPB出身選手がたくさんいる中で、こういう日台交流戦が実現できたということが、アジアの野球界にとってもいいことだと思います」と喜んだ。
今季は先発として調整しているという吉田は「岱鋼さんとか、高山(俊)とかNPB出身の選手とは対戦経験があるので、去年、イースタン・リーグで首位打者とった知念(大成)とかと対戦してみてどうなるか、っていうのは楽しみです」と語った。
陽岱鋼は2試合合計7打数5安打の大活躍で、台湾のファン歓喜
1回表、オイシックスは、いきなり先頭の陽岱鋼が、陳柏清の142キロの高めの速球をしっかりミートしセンター前へ運ぶと、二死3塁から4番大川陽大のレフト前タイムリーで先制、その裏、台鋼も2死三塁から、昨季二冠王のスティーブン・モヤのライト前タイムリーで1-1の同点においついた。
オイシックスは5回表、この回から替わった二番手、許峻暘を攻め、知念大成の右中間を破るタイムリー三塁打で勝ちこすと、この回一挙3得点。その後も、台鋼の若手投手陣から7回に3点、8回に1点追加したオイシックスが15安打8得点、台鋼打線を散発6安打に抑え、8-1で大勝した。
オイシックスは、大川陽大が猛打賞2打点、知念大成が2安打2打点と中軸が活躍したほか、陽岱鋼も逆らわない打撃でマルチヒットを記録、ファンを喜ばせた。
試合後、洪一中監督は、6投手が合計196球投げさせられたことに触れ、「まるで日本の打者に、ピッチングとはどうするべきかを指導された感じだ。うちの投手はもっと頭をつかわないといけないね」と苦笑。4回1失点と、試合はつくった先発の陳柏清も「とにかくバットに当ててきて、簡単に三振してくれない。変化球のキレを良くしないと」と課題を口にした。
試合後には、両チームの背番号1、台鋼のプリンス、曽子祐と陽岱鋼の合同サイン会が行われた。参加できたのはコラボグッズを一定金額以上購入したファンから、さらに抽選で選ばれた限定の100名。北海道日本ハムファイターズや読売ジャイアンツ時代のグッズを身につけ、生「岱鋼」に感激している熱狂的な陽岱鋼ファンの姿も数多く見られた。
連敗は避けたい台鋼は、5回裏二死1、2塁、このオフに支配下登録された売出し中の顔郁軒の勝ち越し2塁打などで2得点、6回にも一挙5安打で3点を追加し7対2とリードを広げる。オイシックスも7回裏二死満塁から、再び知念大成の2点タイムリーで3点差に迫ったが、台鋼はそのまま7対4で逃げ切り、交流試合は1勝1敗で終えることとなった。
台鋼が12安打、オイシックスは台鋼を上回る17安打と、激しい打ち合いとなったこの試合、台鋼では1番ショートで起用された林家鋐が猛打賞と活躍、オイシックスでは、1試合目も活躍をみせた知念大成がこの日も4安打3打点と大爆発、イースタン首位打者の実力をみせた。
6番指名打者で登場した注目の陽岱鋼は2回裏、吉田一将からセンター前ヒットを放った後、脚をつり一度ベンチに下がったが、「一打席で退くわけにはいかない」と治療を受けるとプレーを続行、5回、7回にもミートを意識した打撃でヒットを重ね猛打賞、2試合合計、7打数5安打の大活躍で、台湾のファンを歓喜させた。
試合前、共に若い選手が多く、似ているチームカラーと分析していた陽岱鋼は「実際にプレーしてみたら本当に似ていた。この2試合はすばらしい交流になった。両チーム共に、攻守両面で色々と学べたと思う。シーズンではもっと成長したい」と、今季の抱負を語った。
台鋼の劉東洋GMは、「これが第一歩、今後もオイシックスさんとの交流を続けていきたい」と振り返った。台鋼は今後も積極的にNPBの各球団をはじめ、海外球団との交流を行っていく計画だという。単一チーム同士の交流試合は、さまざまなイベントが企画され、親睦ムードあふれるなか、ファン同士も交流しやすいのが魅力だ。台鋼ホークスの今後の交流企画にも期待したい。
文・駒田英(情報は3月10日現在のもの)
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