真っ赤な目頭を押さえて。初キャップで味わった、悔しさと高揚感と充実感

ヤクルトレビンズ戸田 須藤拓真選手 【🄫ジャパンラグビー リーグワン】

真っ赤な目頭を押さえて。初キャップで味わった、悔しさと高揚感と充実感試合後、ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)の須藤拓真がピッチサイドでうずくまり、真っ赤になった目頭を押さえていた。

「おめでとう」その背中に仲間たちが次々と声を掛け、手を添える。須藤にとって、昨年末に負ったけがからの復帰戦だった。試合に負けた悔しさはあったが、それ以上に、ついにリーグワンのグラウンドに初めて立てた高揚感、80分間フルタイムで力を尽くした充実感が込み上げていた。
トップイーストリーグ時代の激戦など、ここまでの道程が走馬灯のように頭を巡っていた。前半の序盤から、L戸田が相手陣内に押し込む展開だった。
「スクラムの前に盛り上げて、スクラムであれだけペナルティをもらって、またスクラムで押す。イケイケだったし、自分が理想とするラグビーができている感覚があった」(須藤)
首位のマツダスカイアクティブズ広島の統制の取れたディフェンスを崩し切れず、逆に、スキを突かれてトライを決められ、じりじりと点差を広げられていったが、誰もがあきらめていなかった。後半にはテンポを上げ、相手より走り、よりタフに戦った。その流れを終盤の2トライにつなげた。

ホストゲームに駆け付けた観衆は、あきらめないL戸田の選手たちの泥臭いプレーの連続に沸きに沸いた。「ここだぞ!」「見せよう!」ピッチ上には終始、須藤の声が響いていた。
古屋篤史が言った。「あの声で僕らのスイッチが入るんです。スクラムでは後ろから背中を叩いて鼓舞してくれたり、ペナルティを取ったら自分がスクラムの最前線を組んだように喜んでくれたり、そういう選手が戻ってきたのは本当に大きい」試合には敗れたが、L戸田の不屈さを示したゲームだった。

試合後、須藤の声はいつものように枯れていた。「スクラムもすごくこだわって戦えていたし、プロップも頑張ってくれていた。点差は離れてしまったけれど、すごく良い試合だった。何より楽しかった。あとはチャンスをいかにトライにつなげられるか。しっかり修正して、次に向かっていきたいと思います」
須藤にとって、記念すべきリーグワンでの初キャップの舞台が終わった。このゲームのことは、負けた悔しさとともに、今後の糧として、大事に胸の中に取っておく。
(鈴木康浩)
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