ミスターレヴズは151試合目も真ん中に

静岡ブルーレヴズ
チーム・協会
愛されるチームには「顔」がある。

その人の存在が、すなわちチームのアイデンティティであり求心力。

その人格が、チームの現在のみならず歴史と伝統、地域とのつながりまでも体現している。
そんな選手は、競技の垣根を越えて「ミスター××」と呼ばれる。

ブルーレヴズには、大戸裕矢がいる。

【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

どんな試合でも80分走り続け、どんな相手にも逃げずにタックルにボールキャリーに体を張り、ラインアウトでは宙高く跳び、あるいは味方を力強く持ち上げてボールを獲得。そしてレヴズの心臓たるスクラムでは、8人の塊の真ん中で味方を押し、相手の8人を押しこむエンジンと化す。

決して派手なプレーをするわけではないが、常にチームを前に進めるハードワークを遂行し続ける。

2012年にヤマハ発動機ジュビロに入団して以来13シーズン目、トップリーグのリーグ戦が81、プレーオフとワイルドカード戦が13、日本選手権が5、そしてリーグワンがこの試合で51試合目。積み重ねたクラブキャップ数はこの日、150に達した。

クラブの歴史では山村亮、大田尾竜彦、矢富勇毅というレジェンドたちに続く快挙だ。節目となるメモリアルの試合となるヒート戦。大戸は23人の選手の先頭でヤマハスタジアムのピッチに入場した。

ミスターレヴズたる所以

そして始まった試合は、大戸が「ミスターレヴズ」であることを証明する80分だった。

幕開けは、開始4分に飛び出した先制トライだ。ハーフウェー付近のスクラムからの連続攻撃で相手陣に入ったレヴズはHO日野剛志がボールを持って前進。

2人のタックルを受けながら放ったオフロードパスに、迷わず走り込んだのが大戸だった。

強化縮小後の小所帯だったヤマハ発動機ジュビロに2012年に加わり、2014年度の日本選手権優勝、トップリーグラストイヤーの順位戦初戦敗退、静岡ブルーレヴズとしての再出発、コロナに翻弄されたリーグワンの船出……

数々の歴史をともに刻んできた盟友であり、もうひとりのミスターレヴズから絶妙のパスを受けた大戸はそのままトライラインめがけて直進。

ヒートのSH土永を引きつけると、真横に走り込んだCTBマフーザに完璧なタイミングでラストパスを放つのだ。鮮やかな先制トライ。

【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

それだけではない。
このトライに至る2フェイズ前には密集からファーストレシーバーの位置に立ってLOダグラスにパスすると、ダグラスのヒットにすぐさまオーバーに入ってボールを確保している。驚異的なワークレートの高さとプレーの正確さ、FWらしからぬパスを操る万能ぶりだ。

もちろん、FWの心臓たるロックとして体を張るプレーでもチームを引っ張った。

36分には相手ハイタックルを受けても怯まずプレーを続け、巧みなパスでSH北村の50:22キックをアシスト。水をかぶって立ち上がると(昭和か?)ラインアウトですぐさま宙高く跳んでボールを確保し、SOグリーンのPGにつなげる。

32-7とリードして折り返した後半9分には、自陣ゴール前で相手のPKというピンチで、敵将であるアルゼンチン代表109キャップのパブロ・マテーラに正面からタックル。すぐに起き上がると次にボールを持ったタンギバにもタックルして落球させ、WTBマロ・ツイタマのカウンターアタック→SH北村瞬太郎のトライという鮮烈なトライを引き出す。

【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

さらに51分、53分にも大戸はマテーラを猛タックルで止め続けた。試合のラスト10分間にはLOとしてスクラムを押し、相手ボールを再三ターンオーバー。ヒートの攻めるチャンスを事前に摘んで見せた。

世界を震撼させてきた相手のエースを大戸が止めれば、レヴズFWの切り札クワッガ・スミスはその能力をアタックに傾注できる。相手のパスをインターセプトし、大外のスペースを走り、キックも交えてトライ量産に貢献したクワッガの自在の活躍は、ハードワーカー大戸がタフな仕事を遂行し続けることで可能になったのだ。

「全然ゴールではない」

6トライを奪い、ファイナルスコアは44-14。

勝ち点5で東海ダービー、オートバイダービー、それも地元ヤマハスタジアムでの戦いに完勝。試合後、クラブ150キャップの表彰を受けた大戸は、マイクを持つとこうあいさつした。

「クラブ150キャップを今日迎えたんですが、全然これがゴールではないですし。まだまだ、ありがたいことにプレーできるので、もっともっとチームを引っ張って、トップ6のトーナメントに行けるようにチーム全体で頑張っていきたいと思いますので、引き続き応援をよろしくお願いします」

【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

2試合後には、もうひとりのミスターレヴズ、日野剛志のクラブ150キャップが待っている。だがその前に、レヴズには大仕事がある。

BYEあけの第11節、3月15日にはヤマハスタジアムにここまで無敗、一昨季の最終節からリーグ戦26連勝を続けるワイルドナイツを迎える。

ワイルドナイツのリーグ戦最後の敗戦は2年前の4月15日、雨の熊谷で、破ったのはブルーレヴズだった。それは翌年にスピアーズを、今季はブレイブルーパスを相手に「前年覇者を破る」ブルーレヴズ伝説の一歩目だった。

大戸はその日も体を張り、キックまでも繰り出し、大活躍で勝利に貢献していた。

その再現を、レヴニスタは本拠地で見たい。

ヤマハスタジアムで、ミスターレヴズはきっとまた、レヴニスタを熱狂させてくれる。

(大友信彦|静岡ブルーレヴズオフィシャルライター)

【(C)SHIZUOKA BlueRevs】

大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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著者プロフィール

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに参戦している静岡ブルーレヴズ(旧:ヤマハ発動機ジュビロ)の公式アカウントです。 「静岡ブルーレヴズ/SHIZUOKA BlueRevs 」というチーム名には、変わらない為に変わり続ける、伝統を受け継ぎ、なお「革新」を恐れない精神を象徴する “Blue” と、困難な目標にワクワクして挑み、高ぶる「情熱」を象徴する “Revs”が、一体として込められています。また、ホストエリアとなる「静岡」に貢献し、愛されるチームとなるべくその名を冠しています。 いままでヤマハ発動機ジュビロとして築き上げてきた伝統や技を活かしながらも、新たな挑戦とともに静岡から、心躍る最高の感動を世界へと届けていきます。 静岡ブルーレヴズの活躍にぜひご注目ください。

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