トップアスリートのトレーナーが公開!「教える力を磨く」4つの技術――指導の根本は「なぜ」の深掘りにあり
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その1:語彙を増やす
「語彙が足りない人は、どうしても教え方が下手になります。ですから教えるのが上手になりたいと思う人は、語彙を増やす努力は不可欠です。英単語を知らなかったら英語を喋れないのと一緒ですね。そして、その言葉をどう使うかということも重要です。たとえば小学生にはできるだけ容易な言葉を使った方がいいのに、難しい単語やカタカナ語を多用してしまうと理解されない。反対に相手が大人なのに小学生に使うような言葉で説明してしまうと、相手はバカにされたような気持ちになって聞く気が失せるといったことが起きるわけです」(清水氏、以下同)
相手の心をくすぐるような適材適所の言葉を使えるようになるには、相手側の立場になって考えることが重要だという。その単語を使った時に相手が「わからない」と感じて聞く気が失せるのか、「わからない」とは思うけれど、それによってむしろ好奇心がかき立てられるのか? 常に相手の感覚に意識を向け言葉を使い分けることが重要になってくるのだそうだ。
その2:話のうまい人の話術を分析せよ
「勉強のために、大学教授の講演などを聴きに行くと、本当に申し訳ないのですがその講演の内容よりも、その教授の話し方、話の作り方に興味が行ってしまうのです。このタイミングでこんな例え話を入れていたとか、間の取り方など、良かったと思うところをメモするんです。ある時、受講者の8割が居眠りをしてしまっている講演を聴講したことがありました。講演の内容はとても素晴らしく本当に勉強になるのに、それでも大半が居眠りをしているのです。正直、あの状況は衝撃でしたが逆に私はその講義に大きな関心を持ちました」
そういう場合清水氏は、その話がなぜつまらないのかを分析するのだそうだ。話の組み立て方、話し方の強弱、言葉の選び方などを自分なりに分析すること。そして、普段からどんなこともアンテナを広くしておくことが、上手い話し方に繋がっていくという。
その3:最初は基本的なマニュアルから
「何から始めたらいいか分からないという場合、マニュアルからスタートして、まずは形式を覚えさせるということも有効です。すなわち、決められた事をキッチリと話せるということです。たとえば、新入社員に電話対応を教えるとき、マニュアルを渡して練習をしてもらいます。それがある程度できるようになったら、変化球の質問をする。新入社員が変化球に対応できなかったとしたら対応できなかったのは、その人の知識が足りないからではなく、まだマニュアルとして丸覚えしているから。そこではじめて、なぜそういう対応が必要なのかといった原理原則の話をするわけです」
まずは形式をしっかり教えることは基本だが、それで自分が教えられるようになったと過信してはいけない。基礎となる形式を踏まえ、なぜこの形式なのか、その意味や目的を考えさせ、理解させることが教えるということだ。それが出来れば教える側にも応用力が付いてくるはずだと清水氏は言う。
その4:分からないことを、分からないと言う勇気
「もしも質問に答えられなかったら、『ごめん、それ分からないから次までに調べておく』と言えばいいと思います。そうやって正直に言う人の方が信用度が高いですよね。ダメな指導者は、分からないことを質問されたときに、なんとかして違う話に持っていこうとするんですよ。でもそれは、聞いている側からは『この人、分からないから自分の分かる話で取り繕っているな』と、見抜かれてしまいます。そのほうが、分からないと正直に言うより、よっぽど信用を下げてしまいます」
分からない、と正直に言う勇気。それは教える側と教えられる側の信頼関係にも繋がるのだ。結果、行き違いがなくなりより密度の濃いトレーニングができるようになるのだという。
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教えることが苦手だと感じる原因の大半は「相手から何か追求された時に答えられないかもしれない」という恐怖にあるのではないかと清水氏は分析する。ならば、相手に何を聞かれてもいいように、まずは自分自身が普段から「なぜ」と物事を深堀りする習慣を身につければ「答えられない恐怖」は克服できるはず。どんな小さな組織の中でも年次を重ねれば、誰かに教える立場になる。その時にせっかくの知識や経験を上手く教えられないのはもったいない。まずは自分が普段何気なくやっていることの原理原則を深掘りすることから始めてみてはいかがだろうか。
PROFILE 清水忍
トレーニングジムIPFヘッドトレーナー。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP)、健康運動指導士。1967年生まれ。大手フィットネスクラブ勤務後、スポーツトレーナー養成学校講師を経て独立。「なぜ」を追求するロジカルな指導で、メジャーリーガー・菊池雄星投手らプロアスリートのパーソナルトレーナーとして絶大な人気を誇る。トレーニング指導歴35年以上。NESTA JAPANエリアマネージャー、菊池投手考案の複合野球施設「King of the Hill」アドバイザー。雑誌「Tarzan」の監修など多くのメディアで活躍中。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock
写真提供:株式会社 INSTRUCTIONS
※本記事はパラサポWEBに2025年3月に掲載されたものです。
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