"戦う選手会長" は今季もトライを積み重ねる
連敗しないチームへ
ブルーレヴズはブラックラムズとの「略称BR対決」に快勝した。
スコアはレヴズから見て32-24。
最後にトライを取られて勝ち点5を逃したのは残念だが、後半15分までは18-17の1点差で進んでいた試合だ。贅沢は言うまい。7節を終えて5勝2敗。順位は前節の5位からひとつあげて4位となった。
今季もここまで全試合出場の日野 剛志 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】
レヴズはリーグワン1年目は連勝ゼロ、2年目は2が最長と「連勝できないチーム」だったのが、今季は逆に「連敗しないチーム」に変貌したのだ。
好対照な2つのトライ
とりわけ前半36分、相手キックオフをFLヴェティ・トゥポウが捕ったところから始まった大活劇は圧巻だった。CTBヴィリアミ・タヒトゥアからWTBヴァレンス・テファレという「VVペア」の爆発的突破、さらにオフロードに反応したSH北村瞬太郎の瞬発力、よくぞそこまで走ったPR山下憲太のつなぎ、LOマリー・ダグラスのビッグなストライドでのビッグゲイン、そしてエースWTBマロ・ツイタマのフィニッシュ!
前節のテファレの約95m爆走に続き、またもシーズンベストトライ候補に上げられそうなスリリングで魅惑的なトライが出てしまった。
チームで繋いで最後はマロ・ツイタマがフィニッシュ 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】
後半15分、「戦う選手会長」ひのちゃんことフッカー日野剛志のあげたトライだ。
18-17の1点差で進んでいた試合はこのトライと続くサム・グリーンのコンバージョン成功により25-17の8点差となり、レヴズとしてはグッと楽になった。結局、ここから互いに1トライ1コンバージョンの7点ずつを取り合い、32-24で試合は終わった。
試合の流れで言っても大きいトライだったが、輝くのはそれだけではない。すばらしかったのは「これぞひのちゃん!」と唸ってしまうそのトライの取り方だ。
FW最多トライ記録を持つトライハンター 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】
ちぎれたラムズのFWたちがディフェンスのために急いで下がる。レヴズのサイドアタックに備えて構えていた相手ディフェンスの視界に彼らが一瞬入る。そのタイミングをひのちゃんは見逃さない。黒いヘッドキャップの背番号2はボールを抱えてモールを離れると、一瞬の加速で最短距離を走りトライラインにまっすぐ突き刺さった。
モールから持ち出した位置から、ボールは弾丸が地を這うように直線的に進み(つまり、ひのちゃん自身が体を鋭角的に沈めながら前進し)、ゴールライン改めトライラインに文字通り「突き刺さった」のだ。ライン上には元オールブラックスのFLリアム・ギル、SHのTJペレナラというラムズのダブル守護神が待ち構えていたのだが、そのビッグネームさえ一歩も動けず、ひのちゃんの一撃を見送るしかなかったのだ。
日野のトライは今季4本目。トップリーグ時代からの通算トライは56。これは小野澤 宏時さん109、山田 章仁103(現役)、北川 智規さん101、マロ・ツイタマ61(現役)、山下 楽平60(現役)に次ぐ歴代6位。FWに限るとヒーナンダニエル、スティーブン・ベイツ、菊谷 崇というビッグネームを抑え、自身の持つFW最多トライ記録を更新する一撃だった。
レヴニスタの誇り。我らがひのちゃんのトライを、僕らはもっともっと見たい。
(大友信彦|静岡ブルーレヴズオフィシャルライター)
この日はPlayer of the Matchにも選出された 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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