「勝利に向かって、ともに戦いましょう!」 倉石圭二監督インタビュー
【©FC.IMABARI】
今治での挑戦が始まる
テゲバジャーロ宮崎の監督として、JFLで今治と対戦したことですね(2018年セカンドステージ、2019年)。当時から、今治は非常にスピード感のあるクラブだと思っていました。成長するスピードです。
2018年のシーズン途中に宮崎の監督になる前、コーチとして次の対戦相手の試合を前乗りで視察していました。今治のホームゲームも訪れたのですが、スタジアム前のイオン今治新都市に買い出しに行ったのを覚えています(笑)。
皆さんご存じの通り、現在、われわれがトレーニングで使わせていただいている、ありがとうサービス夢.スタジアムで、当時は試合が行われていました。私たちも『宮崎にJクラブを』というところを目指して取り組んでいましたから、今治がサッカー専用スタジアムをはじめ、地域をどんどん巻き込みながら前進しているのを目の当たりにして、実現していくスピード感が本当にすごいと感じました。目標といってはおこがましいですけど、『これがあるべき姿なんだな』と思いましたね。
そんな今治からの監督のオファーを、どう受け止められましたか?
本当にびっくりしたというのが、正直なところです。『私でいいのか?』というのが真っ先に来ましたね。成長スピードを目の当たりにして、自分の目標にしていたクラブからのオファーは感謝しかありませんでした。だからこそ、『私でよければ、ぜひやらせていただきたい』と気持ちが固まったんです。
今治は初めてJ2に挑みます。監督のオファーを受ける大きなモチベーションになっているのでは?
カテゴリーが上がったからというより、今治から話をいただいたということが大きかったです。私は教員をやっていた時期があり(2009年から2016年まで宮崎日本大学高校で教員、コーチを務めた)、地域創生の大切さを自分なりに学び、理解しているつもりです。FC今治は、まさに地域創生を実現していて、そういうクラブからお話をいただいた。そのことが、とてもありがたかったです。
Jクラブのトップチームを率いるのは、今回が初めてのことになります。
いつかはやってみたいと思っていましたが、このタイミングだとはちょっと考えていませんでした。それも以前からずっと注目し、好感を持っていたクラブの一つでしたから。
1月6日にチームが始動し、1月18日からは約2週間の高知キャンプで、連日2部のハードなトレーニングが行われています。監督のトレーニングメニューに対する選手たちの反応はいかがですか?
おそらく、あまりやったことがないことを選手たちはやっていると思います。それに対して選手たちは、一生懸命に取り組んでくれて、とてもありがたいです。
キャンプの手応えと膨らむ期待
それこそ攻撃での前進の仕方がそうです。最初に提示したとき、選手たちも『ちょっと難しそうだな』という表情でした。
それでも戸惑うのではなく、みんな全力でやってくれています。ここからさらに選手の特徴が分かってきますし、シーズンが開幕してからは『継続か、それとも違う方法に進むのか』というジャッジ、見極めのところを、しっかりやっていきたいです。
チーム始動時に印象的だったのは、監督が「スタッフの力を借りながら」ということを繰り返し発言し、スタッフワークの大切さを強調されていたことでした。
自分より知識があったり、引き出しが多かったり、チームには優秀なスタッフが揃っているからです。自分一人では何もできません。いろいろな人の知恵と力を借りながらやっていくことが、今治の力になると思っています。
私はコーチングスタッフとして、横浜FCの四方田修平監督、V・ファーレン長崎の下平隆宏監督のもとで、スタッフマネジメントを学ばせていただきました。たくさんのスタッフの力を借りることが、本当に大きな力になる。もし、自分が監督の立場になったら、そこはやってみたいとずっと思っていました。とはいえ、まだまだなのですが。
昨シーズンは長崎のヘッドコーチとしてセットプレーも担当させてもらいましたし、若手の指導もやらせていただきました。今年は立場が違うので、しっかりスタッフのタスクの分担を整理しながら、折に触れて状況を共有しつつ、結果ばかりに目を向けるのではなく、スタッフの成長も実現できれば。スタッフの成長もチーム、クラブの成長だと思いますし、それがチームの成績にリンクしていくように努めていきたいです。そこにチャレンジしたいですね。
去年の主力がほぼ残り、さらに補強されたメンバーで臨むシーズンとなります。今季のチームの攻撃陣、守備陣について、どう見ていますか?
とても良い選手がそろっています。私はコーチとしてJ1、J2を経験していますが、このメンバーで戦えるのはありがたいです。
前の選手は、嗅覚(きゅうかく)を持った選手が多い。狭いところで細かくプレーできる選手も揃っていて、そこは生かしていきたいですね。
守備陣からは、粘り強さや簡単にはあきらめないという、去年からの積み上げが伝わってきます。そこは守備の選手だけではなく、チーム全体からすごく感じるところでもあります。とてもまとまっているのも、うれしいです。
そういう今治の強みを生かしつつ、J2でさらに旋風を起こすには、何が必要でしょうか?
J3からJ2とカテゴリーが変わることで、たとえばこれまでボールを奪えた場面でも、奪えないことが出てくると思うんですね。そこで、どう振る舞うのか。尻込みするのではなく、トライしないと改善し、向上するためのエラーも起きないので、トライすることは促していきたいです。
自分たちに何ができて、何ができないのか。選手それぞれが知り、判断するための時間は必要だと思います。
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アシさとのパワーとともに
相手の弱いところを突き、相手に強みがあれば、それを弱める。そういうことをやりながら、グループ戦術、チーム戦術を強みとして出していければ。開幕までを考えると、戦術を浸透させていく時間も限られますが、(開幕から)逆算して取り組んでいきます。
戦いの方向性、狙いはどのようになるでしょうか?
チームがとてもまとまっているという話をしましたが、それを生かして数的優位を作り、タレントを生かす。ヴィニ(マルクス・ヴィニシウス)、藤岡浩介と、チームには2人の昨シーズンのJ3得点王がいますが、彼らだけではなく今治には個性豊かなタレントが揃っていますから。
J2の舞台が初めてという選手も少なくありません。どういう姿勢を求めていきますか?
チームにビビるような選手はいません。どちらかというと、ワクワクして、野心を持って戦う選手が多いでしょう。仮に少し腰が引けて自分の力を出し切れない選手がいたとしても、周りが助けて一つになって戦える。私たちは、そういうチームです。
今治にはフィロソフィーがあるので、選手が臆するような心配はしていませんよ。優秀なスタッフも揃っていますし。選手もスタッフも『まだか、まだか』とチーム全体が鼻息を荒くして開幕を迎える。私はそういう姿を想像していますし、そのための準備が、ここまで進められています。
今、この瞬間に倉石監督が最も楽しみにしていることは?
アシックス里山スタジアムのホームゲームです。話を聞く誰もが『すばらしいスタジアムだ』と言っていて、私もそう思います。
昨年、完成した長崎のPEACE STADIUM Connected by SoftBankも良いスタジアムです。規模的には違いますが、アシさとはとても温かみを感じます。初めてアシさとを見たとき、それが良いと感じました。
ベンチがスタンドに組み込まれる構造になっていることもあり、サポーターのみなさんと一緒になって勝ちに行けるスタジアムです。
新たに大型映像装置も完成して、いっそう盛り上がるでしょう。その舞台に立って、全員で戦うことができる。それが楽しみでなりません。まずは2月16日のJ2開幕戦、ブラウブリッツ秋田戦ですね。
初めてのJ2の舞台で、相手に襲い掛かるようなサッカーをしたいと思っています。ぜひそこに注目して、力を貸してください。一緒に勝ちに行きましょう!
取材・構成/大中祐二
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