選手の考える力を育む。PDCAサポートAIも使えるデジタル版練習ノートとは
【photo by Shutterstock】
※リンク先は外部サイトの場合があります
AIを上手く活用して指導者の負担を軽減
【photo by Shutterstock】
「我々は、選手が競技能力だけではなく、社会でも活かせるような考える力を養えるよう、また、そういった選手育成をしたい教育的な指導者をサポートするため活動しています。ただ、AIと言うと、人間の仕事に取って代わる存在と誤解されることが多いのですが、Buildは監督やコーチに代わって選手を指導するということではなく、あくまでも指導者の負担を軽減するためのサポート的な存在です。監督やコーチは時間がないということもありますし、競技に関する専門的な知識はあるけれど、目標設定や振り返りの仕方のアドバイスまで行うのは負担が大きいという人もいます。そこで選手の目標設定や振り返りに対するフィードバックをBuildが担保することで、よりよい指導ができると考えています。AIの名前も『PDCAサポートAI』と名付けております」(下園氏、以下同)
使うのは身近なアプリLINE
選手が実際に入力する画面 【写真提供:Aruga株式会社】
「LINEは今どきの若い人なら普段から使い慣れているので、新しいアプリをダウンロードする必要もないですし、操作もしやすいというメリットがあります。それに答える指導者も、ノートを何冊も持ち歩く必要がなく、たとえば通勤途中のバスや電車の中でも確認することができるので時間を有効に使うことができるのも強みの1つです。さらに部員が100人いたとして、毎日全員に返事をするのは難しいですが、BuildにはSNSの『いいね』ボタンのようなものがあるので、選手の書き込みに対して即座に反応してあげることができます」
また、管理画面では各選手が立てた長期・中期目標や過去の目標達成状況が見やすくなっているので、選手の成長に合わせたアドバイスをすることもできる。しかし、ここまでなら、単にアナログだった練習ノートをデジタル化しただけなのだが、Buildの凄さは、AIによって選手の目標設定や振り返りの力が伸び、主体性が育まれるという点だ。
国語力もアップ?
【photo by Shutterstock】
たとえば、LINEの入力画面の「ビジョン設定」のボタンを押す。すると、AIが提示したビジョンの入力例を参考に自分でビジョン設定ができる。
【写真提供:Aruga株式会】
【写真提供:Aruga株式会】
【写真提供:Aruga株式会】
【写真提供:Aruga株式会】
左は週ごとの振り返り画面。これまでのデータが蓄積され、目標達成率も可視化できる(右) 【写真提供:Aruga株式会】
また、人間ではなくAIがサポートすることで心理的なメリットも生まれるという。
「人間の指導者が『これはどう?』『あれはどうだった?』『次はどうする?』と聞くと、選手は追い詰められたような気持ちになることもあるようです。その点、相手がAIだということで選手も記入しやすくなりますし、指導者も客観的に各選手の状態や気持ちを把握できるので、距離感としてもちょうどいい存在なんじゃないかと思います」
スポーツを通してより良い人生を歩む力を養う
Aruga株式会社の下園良太代表 【写真提供:Aruga株式会】
「数学や理科などの学校の座学は決まった1つの答えがありますが、スポーツは答えのない問題に取り組むといった特徴があり、そこが面白いところです。社会に出ると、進路やキャリア、結婚、人間関係など答えのない問題にたくさん直面します。ですからスポーツを通して、自分で答えを見つけ出す力を養っておくことは生きていく上でとても役に立つんじゃないでしょうか」
サッカーも野球も、スポーツの世界では一度グラウンドに出たら、誰も正解を教えてくれない。自分で判断するしかないのは実は一般の社会生活でも同じと言える。
「自分の人生をより良く生きるためには、自分で考える力が必要だと思うんです。ただし、より良い人生は人によって違っていて正解はありません。ですから、自分にとって何が良い人生で、そのように生きるには何が必要かは、自分で考えて自分で決めていかないといけない。他者の考えに依存しすぎずに自己決定できること、自分で考えて反省すべきところは反省して、次にどう行動すべきかを考えることで問題解決ができる。だからこそ、自分で考える力は誰にでも必要ですし、僕らはそれをスポーツの現場から養えるようにしたいなっていう思いでいるんです」
AIを導入することで、ともすると指導者と選手の絆が薄れてしまうような誤解があるかもしれないが、下園氏たちが目指すのは、むしろ選手が指導者に見守られていると感じられるような環境、チーム作りだそう。デジタルの技術を導入することで、指導者が選手と向き合う時間が増えれば、スポーツ指導の在り方もきっといい方向へ変わっていくのではないだろうか。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock
写真提供:Aruga株式会社
※本記事はパラサポWEBに2025年1月に掲載されたものです。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ