【週刊グランドスラム286】ポーカーフェイスで150キロの速球を投げ込むヤマハの新星・有本雄大

チーム・協会

昨年のアジア・ウインター・ベースボールに出場した有本雄大は、12月6日のNPB RED戦に先発。キレのあるボールで5回を1失点に抑えた。 【写真=宮野敦子】

 社会人3年目を迎えるヤマハの有本雄大は「成長できた一年だったが、悔しさのほうが強く残った」と、昨年を振り返る。それは、日本選手権での投球を指している。東芝との二回戦、2対2の7回裏から三番手で登板した。有本にとっては、初めての二大大会のマウンドだ。一死から中前安打を許すも、後続を断って無失点で切り抜けた。だが、続く8回裏は先頭打者を四球で歩かせ、左前安打と犠打で一死二、三塁とされたところで降板。その後、リリーフした投手が打たれて勝ち越しを許してしまった。敗戦投手となった有本は「悔しい形で終わってしまった」と、言葉を絞り出した。
 東北福祉大時代から150キロ超のストレートを投げてきた右腕は、「球の強さ」を武器に入社するも、1年目はベンチ入りすることすら難しかった。冬場にコツコツと鍛え、長いイニングを投げられるだけの体力を身につけた。時にはコーチからストップがかかるほど身体を苛めると、昨年はJABA大会や都市対抗東海二次予選で実戦経験を積み、日本選手権での登板機会をつかんだ。同点の終盤を任されるのだから、信頼を深めたことは確かだろう。だからこそ、結果を残したかったという思いも強い。
 3年目の今季は、その悔しさを糧に進化するしかない。150キロ台中盤を叩き出せる強い真っ直ぐをより生かすためにも、「制球力への不安を払拭したい」と話す。

さらに制球力を磨けば鬼に金棒

「日本選手権でも、『フォアボールを出したらどうしよう』という思いが頭を過りました。コントロールが定まらなければ、投球フォームを気にしてしまう。そして、心理的にも乱れて悪循環を生んでしまいます。わかってはいるのですが……コントロールは入社時からの課題のひとつ。調子がいい時は、思い切り腕を振れたらアバウトに投げても抑えられる。そこに、制球力を加えていきたいです」
 そして、11月後半からは、アジア・ウインター・ベースボール2024(AWB)に出場した。全国から集まったチームメイトを見渡し、「みんな完成されていて、無茶苦茶レベルが高い。不安要素がないんですよ」と頭を掻く。宿舎で同室の谷脇弘起(日本生命)、東北福祉大で1年後輩の後藤凌寿(トヨタ自動車)とはよく言葉を交わし、充実した日々を過ごしながら、先発と中継ぎで7試合を投げ、真っ直ぐでしっかりと勝負した。ヤマハでは中継ぎを担ってきたが、「今年は先発がしたいと、自分の意思は伝えます」と言い切る。もともと「緊張しないタイプ」だからか、常に落ち着いた印象だ。そんなポーカーフェイスが、マウンドで生かされるのを楽しみにしたい。AWBでの経験も、きっと今季の成長を後押ししてくれるだろう。

力感あふれるフォームから投げ込まれるストレートは150キロ超。制球力を高めて大きく飛躍したい。 【写真=宮野敦子】

 ヤマハは、2023年の都市対抗で準優勝を果たした。昨年は黒獅子旗を目指したが、まさかの一回戦敗退。選手たちは、言葉にできない悔しさを味わった。有本も例外ではないが、それ以前に2023年はまだチームの戦力にはなれていなかった。本当の勝負はここからだ。
「3年目の今年は、チームのために投げたい」
【取材・文=古江美奈子】

【電子版はオールカラーになります】

グランドスラム64は、好評発売中です!!

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント