相性抜群の球場が本拠地に。石川柊太は“マリンの風”を武器にさらなる躍進なるか
福岡ソフトバンクホークス時代の石川柊太投手 【写真:球団提供】
投手2冠に輝いた実績を持つ右腕が、佐々木朗希の穴を埋める存在となるか
今回は、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標をもとに、石川柊投手が持つ特徴と強みを紹介。それに加えて、石川柊投手とZOZOマリンスタジアムの間に存在する抜群の相性についても実際の数字をもとに確認し、新天地でのさらなる活躍に期待を寄せたい。
防御率、奪三振率、与四球率の全てにおいて一定以上の数字を記録
石川柊太投手 年度別指標 【©PLM】
与四球率に関してもキャリア通算の数字が3.45、与四球率が4点台以上となったシーズンも2度のみと、制球面がネックとなるタイプの投手ではないことがわかる。また、直近2シーズンにおいては、与四球率が投球に与える影響の大きさが示されている点も特筆すべきポイントだ。
2023年の奪三振率は8.52とキャリア平均を上回っていたが、与四球率に関しては4.37と悪化。この数字が投球内容に作用した部分は大きく、防御率が4.15、1イニングごとに出した走者の平均を示す「WHIP」が1.34と、いずれもキャリアワーストの数字に終わっていた。
その一方で、2024年の奪三振率は7.39とキャリア平均を下回ったものの、与四球率は1.71と、2試合の登板に終わった2019年を除けばキャリア最高の数字を記録。その結果、防御率は2.56、WHIPは0.99と、ともに投手2冠に輝いた2020年に匹敵する優秀な成績を残した。
また、2024年には制球力や投手としての能力を示す「K/BB」も4.33という数字を記録し、一般的に優秀とされる3.50を大きく上回る水準に到達していた。直近のシーズンにおいて示した投手としての進化が、新天地でも継続されるかが注目されるところだ。
近年は被BABIPがやや上昇傾向にあるものの、前年の投球内容はむしろ向上
石川柊投手が記録しているキャリア平均の被BABIPは.258と、一般的な基準値と考えられている.300を大きく下回っている。しかし、2021年以降は4年連続でキャリア平均を上回る被BABIPを記録しており、キャリア初期に比べてやや運に恵まれなくなっていることが示唆されている。
そして、2024年の被BABIPは.270とキャリアで2番目に高い数字だったものの、防御率やWHIPの改善をはじめ、さまざまな指標で優秀な成績を記録した。被BABIPがキャリア平均を上回るシーズンにおいても好投を見せた点は、今後に向けても明るい材料と考えられる。
年を経るごとに相性の良さが高まっている
石川柊太投手 ZOZOマリンスタジアムでの年度別成績 【©PLM】
しかし、意外にもZOZOマリンスタジアムでのキャリア初登板となった2017年8月8日の試合では、3.1回を自責点6と打ち込まれる結果に終わっていた。しかし、翌2018年には早くも球場の特性に適応して登板した3試合全てで白星を挙げ、それ以降は文字通りに負け知らずの投球を続けている。
さらに、参照する数字を2018年以降に限定すると、7年間で防御率1.90とまさに支配的と呼べるレベルまで数字が向上。防御率4.61と例年に比べて苦戦した2021年を除く5シーズンはいずれも防御率2点台以下と、コンスタントに好投を見せてきた点も頼もしい要素だ。
また、通算の球場別奪三振率は7.85とキャリア平均をわずかに上回る水準だが、こちらも参照する数字を2018年以降に限定すると、奪三振率8.07とさらに数字が上昇する。球場の特性でもある独特の風によって得意球のパワーカーブの切れ・落差がともに増すことにより、奪三振能力も普段以上に高まっていることがわかる。
さらに、直近3シーズンにおいては50.2イニングで51奪三振と投球回を上回る三振数を記録し、奪三振率も9.06と抜群の水準に達する。投球内容が年を経るごとにさらなる進化を遂げている点も、石川柊投手の球場に対する適応力を表す要素の一つだ。
とりわけ、2024年は3試合で12イニングを投じて11奪三振を記録し、与四球はわずかに1、自責点は0と圧倒的なピッチングを展開していた。これだけの投球を見せつけた球場が本拠地となる2025年シーズン、石川柊投手がどのような投球を披露するかは見ものだ。
相性抜群の球場で文字通りの“追い風”を受け、先発陣の中心となれるか
移籍後も相性抜群の球場で文字通りの“追い風”を受け、先発投手としてさらなる飛躍を果たせるか。育成契約から這い上がって投手2冠に輝いた右腕が、新天地で迎えるプロ12年目のシーズンに見せる投球は、ファンならずとも興味深いものとなってきそうだ。
文・望月遼太
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