因縁のカードでリベンジ成功。その中心にいたのは、異国の地で奮闘する元オールブラックス

清水建設江東ブルーシャークス リマ・ソポアンガ選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)が、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を相手に41対33で勝利し、開幕2連勝を飾った。

江東BSにとって、この試合は単なるリーグ戦の一戦にとどまらず、2シーズン前のD2/D3入替戦で喫した大敗を払拭するリベンジマッチという特別な意味をもっていた。あの敗戦は、ディビジョン3への降格という結果だけでなく、ホストで応援するファンの前で屈辱を味わうという深い傷を残した。以来、チームはあらゆる面を見つめ直し、昨季、D2昇格を果たした。

そんな因縁のカードで江東BSは前半から九州KVを圧倒。試合は41対33とスコアを重ね、見事にリベンジを果たした。勝利の立役者となったのは、元ニュージーランド代表・オールブラックスの司令塔、リマ・ソポアンガだ。

開幕戦では、彼の武器であるキックが不調に終わり、ゴールキックは6回中4回を失敗。勝利こそ収めたが残ったのは悔しさだった。

「前回はすごくダメでした。自分の武器なのにうまくできなくて悔しかった。でも、そのぶんたくさん練習しました。(ほかの人に)見られてないところでも練習を積んで、もう一度自信を取り戻して臨んだ試合でした」

個人としてもリベンジマッチとなったこの日、彼はそのすべてを発揮した。5本のコンバージョンキックと1本のペナルティキックをいずれも確実に決め、チームの勝利に大きく貢献。特に前半36分に左サイドの難しい角度から決めたコンバージョンキックは、ゴールポストの真ん中を美しく射抜いた。プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれ、「努力が報われてうれしい」と試合後に満面の笑みを浮かべた。

しかし、この成功は一朝一夕のものではない。昨季から来日した彼にとって、日本の文化やプレースタイルに馴染むまでの道のりは決して平坦ではなかった。

「外国から来ているぶん、国の文化や言語、考え方などすべてが異なるので、やはり時間はどうしても掛かります。特に日本は『こうする』と言われたことをしっかりやりとおすといった姿勢が良しとされているところがあると思うのですが、そこに納得してできるまで時間が掛かりました。自分を表現したいし、食い違いがありました」

そんな中で、「お互いに時間を掛けて知っていくことで、 日本のスタイルをやりながらも自分を表現することができてきた」という。

こうしたワールドクラスのベテランの課題に真摯に向き合い、結果で応えていく姿が、どれほどチームに影響を与えるだろうか。新戦力として今季加入した外国籍選手も多く、元オールブラックスの背中に感じるところがあるはずだ。

いよいよ“完全覚醒”した10番が、チームにも自身にもリベンジを成功させた。今季ここからどのようなプレーを見せてくれるのか。ファンたちもさらにホストゲームが楽しみになったことだろう。

(奥田明日美)
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