【バドミントン/全日本総合】令和6年度 第78回全日本総合バドミントン選手権大会 大会6日目(本戦決勝)
結果や組合せ等については、大会Webページから。
<決勝結果>
MS:田中湧士(NTT東日本) 2(21-19,21-17)0 武井凜生(NTT東日本)
WS:宮崎友花(柳井商工高校3年) 2(21-18,21-14)0 仁平菜月(ヨネックス)
MD:山下恭平/緑川大輝(NTT東日本) 2(21-17,21-11)0 霜上雄一/野村拓海(日立情報通信エンジニアリング)
WD:志田千陽/松山奈未(再春館製薬所) 2(21-5,21-19)0 五十嵐有紗/櫻本絢子(BIPROGY/ヨネックス)
XD:柴田一樹/篠谷菜留(NTT東日本)1(21-15,5-4×)0 西大輝/佐藤灯(龍谷大学/ACT SAIKYO)
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【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
男子シングルス:田中湧士(NTT東日本) 2(21-19,21-17)0 武井凜生(NTT東日本)
今回は本物のチャンピオン!同門対決を制した田中が2度目の総合制覇
左:田中湧士 右:武井凜生 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
第1ゲーム、序盤からコートを広く使いつつもスピード感あるタフなラリー戦で進んでいく中で、武井が優れたボディバランスを見せてシャトルをコントロールし、11-6とリードを奪う。「目の前の1球必死だったので、どう点を取ったのかは覚えていないけど、リードされた展開は苦しかった」という田中は、序盤こそネットプレーなどで後れをとり劣勢だったが、我慢強く押し返すラリーを続けながら徐々に調子をあげていく。後半には8連続得点をあげて18-14で逆転し、そのまま逃げ切って21-19とゲームを奪取。のちに田中は「このゲームを取り切れたのは本当に大きかった」と話している。
「自分の高さを使ったラリーに、田中選手はいつもなら嫌になって仕掛けてくるところだが、今日はきっちりラリーで返してきて、戦い方を変えてきていたと感じた」と武井が振り返ったとおり、続く第2ゲームでも田中は激しいラリーの連続を嫌うことなく、細かくステップを踏んで応戦する。「序盤は少し欲を出して簡単なミスも出てしまったが、後半はよく切り替えられた」と言う通り、田中は丁寧なリターンで相手を走らせ続け、崩したあとで代名詞のジャンピングスマッシュを突き刺して点数を重ねていく。苦しい武井も、こだわって向上させてきたアタック力をラリーの随所で発揮して接戦を演じるが、今日の田中を捉えることはできなかった。最後はフォア奥に飛びついて放った武井のスマッシュがネットを越えず、21-17で田中が2度目の栄冠を勝ち取った。
「前回の優勝時(2021年)は、世界選手権出場組が出てこられない大会だったので、フルメンバーで行われた今回の優勝はすごく嬉しい、最高です」と喜びを語った田中、今後についても「ワールドツアーの上位大会ではまだ全然勝てていないので、これから勝てる選手になるように、当面は世界ランク10位以内を目指して頑張っていきたい」と話し、この総合制覇を足掛かりに更なる飛躍を誓った。
左:田中湧士 右:田中湧士(左)、武井凜生 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
女子シングルス:宮崎友花(柳井商工高校) 2(21-18,21-14)0 仁平菜月(ヨネックス)
宮崎がA代表としての強さを見せ、4人目の高校生女王誕生!
左:宮崎友花 右:仁平菜月 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
第1ゲーム序盤、宮崎はサイドのライン際を突いたスマッシュやカットと素早いフットワークから打ち分けられるヘアピンとロブで速い展開に持ち込むことで相手の態勢を崩しにかかる。それに対し、仁平は我慢強くついていき宮崎のミスを誘うことで着実に点数を重ねていく。16-14と宮崎リードの場面、仁平はドリブンクリアを効果的に使い宮崎の体勢を崩しにかかったところで宮崎の見逃した球がエンドラインぎりぎりでインの判定。これに対して宮崎がすかさずチャレンジを要求すると、機械判定によりレット(当該プレー無効で、サービスからやり直し)の判定となった。納得のいかない仁平は主審に抗議するもレットの判定は変わらず。「そこから連続得点を与えてしまい、相手に勝負所と思わせてしまったのがよくなかった」と仁平が振り返ったように、ここから宮崎が一段ギアを上げ19-15と点差を広げた。結局このリードを保った宮崎が21-18でゲームを先取する。
第2ゲーム、後がなくなった仁平は「自分から(球を)沈めてスピード勝負をして要所で思い切って攻めることを意識した」と振り返るとおり、出だしからギアを上げていく。一方の宮崎は、昨日までタフな試合を戦ってきた仁平に対して正確なストロークからコートの四隅を突く配球で揺さぶりをかけミスを誘うことで、先行していく。13-11で宮崎リードの場面、宮崎の揺さぶりに必死に食らいつき勝機を見出したい仁平は、宮崎の鋭いクロスカットを驚異の粘りで相手コートに返すと上がってきた球を逆に決め切るなど奮闘する。しかし地力に勝る宮崎はその後も主導権を握ったまま試合を運んでいき、20-14でマッチポイントを握ると、最後は試合を通して貫いたアグレッシブなスマッシュネットの形から甘くなったネットをプッシュで押し込みゲームセット。21-14で締めくくると左手のこぶしを握りしめ、顔からは喜びの笑みがこぼれた。
試合後の記者会見では「緊張も疲労もあってきつかったが、相手より我慢強く戦えたことが良かった」と試合を振り返った。大会を通しては、「向かってこられる試合が多くプレッシャーもあったが、そこで対策を立てたり崩れないようにできたりしたことが良かった」と成長を実感した様子だった。次期日本女子シングルスのエースとしてのさらなる成長を見届けていきたい。
左:宮崎友花 右:宮崎友花(左)、仁平菜月 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
男子ダブルス:山下恭平/緑川大輝(NTT東日本) 2(21-17,21-11)0 霜上雄一/野村拓海(日立情報通信エンジニアリング)
混戦の男子ダブルスを制し、山下/緑川がランキングサーキット、全日本社会人に続く栄冠に輝く!
左:山下恭平(奥)/緑川大輝 右:霜上雄一(左)/野村拓海 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
第1ゲーム序盤、前衛に霜上、後衛に野村を得意とする霜上/野村に対して、山下/緑川は霜上を後衛で打たせ、前衛のサイドを抜くようなドライブレシーブからオープンスペースや相手2人の間に連続してドライブを効果的に配球することでノータッチを誘うなどして8-1と大きくリードを奪う。追う霜上/野村は、霜上が素早く前へ詰め落としてから相手に上げさせ、後衛の野村に打たせる2人の形をつくることで点差を縮めにかかる。霜上/野村は点差を離されては1点差まで接近する展開が続き、追い越しを図りたいところだったが、「自分たちが相手に粘られたときの詰めが甘く、点数が欲しいところで取れなかった(霜上)」となかなか連続得点を奪えない。対する山下/緑川は、相手の後衛の対応を遅らせるべくハーフ球とリアコートへの低いロブを織り交ぜることで攻めの形をつくらせず、着実に点数を重ねたことでリードを保ち、21-17で1ゲーム目を先取した。
迎えた第2ゲームでは終始、山下/緑川が主導権を握ったまま試合が進行していく。レシーブに回った場面では霜上/野村の連続攻撃を幾度となく跳ね返し、上がってきた球に対してコースを突いた強打で相手にレシーブをさせない。なんとか離されたくない霜上/野村は相手のハーフ球に対応してミドルコートから前へ詰めて決め場面も見られたが、中盤以降ではサービス周りで優位に立たれ、単発得点で終わってしまう状況が続く。攻撃の手を緩めない山下/緑川は、ゲームを通じて1度もリードを許すことなく20-11でマッチポイントを握る。最後は野村の放ったサービスレシーブがネットにかかり、ゲームセット。山下/緑川が男子ダブルスの初の栄冠を手にした。
試合後、「優勝を目指して2人でやってきて、実際に優勝することができてほっとした(緑川)」と安堵の言葉を口にした。今年はランキングサーキット、全日本社会人、全日本総合の3タイトルを手にした2人は、「自分たちの成長を感じることができた、自分たちの強さも示すことができた」と充実した1年に声を揃えた。今後に向けては「2人で協力してペアとしての力を高めていきたい(緑川)」と語っており、男子ダブルスの次世代エースとしての活躍に期待したい。
左:山下恭平(左)/緑川大輝 右:山下恭平(左)/緑川大輝、霜上雄一(右)/野村拓海 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
女子ダブルス:志田千陽/松山奈未(再春館製薬所) 2(21-5,21-19)0 五十嵐有紗/櫻本絢子(BIPROGY/ヨネックス)
「一生忘れられない1年になった。」日本に感動をもたらした志田/松山が、メダリストの風格を示す堂々のプレーで総合初優勝を果たす
左:志田千陽(左)/松山奈未 右:五十嵐有紗(左)/櫻本絢子 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
試合が幕を開けると、目の覚めるような高速のラリーが展開される。「前日の準決勝(の試合内容)が良くなかったので、あまり決勝戦と意識せずに今年最後の試合をしっかり入る、今できるプレーを全部出すことに集中した(志田)」という志田/松山が、完璧な連携・次への準備・ショット選択・配球を見せて激しいラリーを次々とものにしていき、10-2と大量リードを奪う。ゲーム後半も寄せ付けない強さを見せる志田/松山は、特にサービスからの3本目のショットの質が高く、ラリーで先手を取り続けた。21-5と完璧な内容でゲームを奪う。
第2ゲーム、攻撃を仕掛けやすいエンドとなった五十嵐/櫻本が積極的に強打を打ち込んで反撃を開始する。それまでドライブを多用していた五十嵐がうまく落として相手に上げさせる展開を増やし、櫻本が強力なスマッシュを打ち込んで得点につなげ、6-1とリードを奪う。しかし好アタックの半面、繋ぎのプレーや連携の細かいミスを完全にはなくせず、リードを保てない。ゲーム中盤で志田/松山が追いつくと、互いに強みを見せながら点を取り合っていく。競った展開の終盤にひと際存在感を見せたのは五十嵐、混合ダブルスで培った脚力を遺憾なく発揮し、飛びつきスマッシュからの猛チャージでネット前に走ってプッシュを決めるなど、驚異のスピードで点をもぎ取り、相手にプレッシャーを与える。幾度となく繰り広げられる激しいラリーに、会場からは多くの拍手と声援が送られる。そうした応援を力に変えた志田/松山が、最後は五十嵐のスピードにも食らいつき、スーパーレシーブを決めて21-19。初の全日本総合チャンピオンとなった2人はコート上で歓喜の抱擁を交わすと、送られる喝采1つ1つに手を振って感謝を表し、優勝の味をかみしめた。
試合後の会見で志田/松山は、「この大会で経験のなかった優勝、今回がチャンスだと思っていたので、しっかり勝つことができて嬉しい(志田)」「組んだころから2人で優勝を目指してやってきた大会での優勝なのでとても嬉しい(松山)」と、素直な喜びを語ってくれた。今後については、松山が一時休養を挟み、それからまた2人、シダマツとしてやっていくという。「パリでの銅メダル、総合の優勝といい1年だった。でもワールドツアーで1大会も優勝できなかったので、来年はまずツアーでの勝利を目指して戦いたい」と口を揃えた。来年も2人の活躍から目が離せない。
左:五十嵐有紗(右)/櫻本絢子 右:志田千陽(左)/松山奈未 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
混合ダブルス:柴田一樹/篠谷菜留(NTT東日本) 1(21-15,5-4×)0 西大輝/佐藤灯(龍谷大学/ACT SAIKYO)
篠谷のラストトーナメントを飾る最高の結果、柴田/篠谷組が見事総合を制覇
左:柴田一樹(右)/篠谷菜留 右:西大輝(右)/佐藤灯 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
第1ゲーム、「しっかり自分たちのリズムでいい出だしだった」という西/佐藤がテンポの良いアタック・球捌きで快調に得点をあげ、11-4とリードを奪う。インターバルが明けると、「決勝戦の緊張感で硬くなっていたところ、監督や篠谷さんの声掛けのおかげで、後半は楽しくいつも通りのプレーが出来た」という柴田が持ち前の強打を次々に炸裂させ、柴田/篠谷が6連続得点と怒涛の追い上げを見せる。ここで西/佐藤に最初の異変が発生する。「ラウンドに入ったときに足首が傷んだ」という西がコールドスプレーを要求し、処置が行われた。こちらは大事に至らずプレーを再開したが、その後、紫田/篠谷が逆転し19-15の場面、今度は佐藤が足首に痛みを抱え、処置中断となる。再度ゲームは再開されるが、はつらつとプレーする柴田/篠谷が一気に決め切って21-15と先取した。
第2ゲームに入っても佐藤の脚の状態は悪く、ネット前で巧みに組み立てる篠谷に対抗することができない。5-4と柴田/篠谷が前に出た場面、「11点までやろうと話をしていたけど、今は無理をさせるところじゃない(西)」と、西/佐藤は棄権を申告し、決勝戦は幕を下ろした。
勝者のままトーナメント引退という花道を飾った篠谷は「最後の試合こそ相手のアクシデントでの優勝となったが、ここまでしっかり勝ててきたからこそのことなので自分を褒めたい。ここまで辛いこともたくさんあったけど、最高の大会で、最高の結果で終われて嬉しい」と涙を流した。初の総合タイトルを得たパートナーの柴田も「メインの種目では悔しい思いをした分、最後優勝で終われてよかった。篠谷さんを気持ちよく送り出すことができてよかった」と喜びを語った。
左:柴田一樹(左)/篠谷菜留 右:柴田一樹(左)/篠谷菜留、西大輝(右)/佐藤灯 【ⒸNipponBA2024/PHOTO:T.KITAGAWA】
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