待ち望んだ15年ぶりV。貫いた「自分たちのバスケ」

日本大学SPORTS
チーム・協会

15年ぶりにインカレを制した日本大学バスケットボール部REDSHARKS 【日本大学】

◇第76回全日本大学バスケットボール選手権大会 決勝
日本大学70(27-14、19-13、13-17、11-19)63東海大学

歓喜の瞬間、プレッシャーから解き放たれた日大ベンチにはさまざまな感情が渦巻いた。両こぶしを突き上げる選手、コートに倒れ込む選手、仲間と喜びを分かち合う選手。それぞれの思いが表れた瞬間だった。インカレで過去、先輩たちが昨年、一昨年と破れた宿敵といえる東海大学。苦杯を喫してきた相手に「自分たちのバスケ」を体現した40分間だった。

1年間信じてきたもの

チーム始動の3月に4年生が掲げたのは「インカレ優勝のために」。伝統の“ディフェンスからの速攻”を磨いた1年だった。リーグ戦を4位で終えた。「負けたときも一つの経験値として取り組めたのはよかった」(新山岬・危機管理学部4年/東山高)と、ファール最少、失点数Ⅰ位などリーグ戦を通して着実に土台を固めて迎えたインカレ。なかなか越えられなかったベスト4の壁を打破するためのラストピースは、4年生とセカンドユニット。そのピースが準決勝、決勝で見事にはまった。

準決勝の名古屋学院大学戦に時を少し遡る。関東1位の日体大を下し勝ち上がってきた勢いにある相手に第1Qこそ苦戦したが最終スコアは87-67。活躍したのは途中交代で入った主将・井上水都(経済学部4年/土浦日大高)、松村竜吾(文理学部4年/土浦日大高)、山田哲汰(文理学部2年/白樺学園高)らだった。まずディフェンスで魅せたのは山田。スコアを先行された第1Q中盤で2連続スティール。とくに2本目は同じくセカンドユニットの新沼康生(文理学部4年/日大豊山高)と連携しパスカット。ディフェンスからの速攻が立て続けに決まり、劣勢ながらも相手が先にタイムアウトを取るシチュエーションを導き、流れを引き寄せた。キャプテンの井上もコートに入ると「ディフェンスのリズムを整える」というベンチから告げられた役割を体現。粘り強い献身的なディフェンスで「ディフェンスからの速攻の」日大の形をつくると、この日好調だったのが松村。3Pを5本中4本沈めスコアを伸ばし、目標とした優勝へ向けたファイナルの舞台に駒を進めた。

プレータイム以上に存在感の大きかった主将の井上 【日本大学】

この1年間は米須との自主練の励んだ山田 【日本大学】

4年生としてスコアで魅せた松村。準決勝での3P成功率は80%だった(写真は準決勝) 【日本大学】

因縁の相手に3度目の正直

決勝の相手、東海大学とは今季のリーグ戦で1勝1敗。インカレでも2022年は準決勝で56-62、2023年は準々決勝で61-66と敗戦している。
第1Qは27-14の好発進。先制は米須からパスを受けたコンゴロー・デイビッド(スポーツ科学部4年/報徳学園高)がゴール下で冷静に決めた。コンゴローはリバウンドでも活躍し日大の時間が続く。東海大学の反撃にあった場面でもPG・一戸啓吾(商学部4年/仙台大明誠高)が2本連続で3Pショットを決めるなど前半で46-27。この試合最大の得点差で後半に向かうことになった。

「必ず最後は追い上げてくる」。井上キャプテンはリードした状況でも冷静に仲間に声を掛ける。予想通り東海大学の猛追にあった第4Q。残り4分台の東海大学のタイムアウト明け、連続して3Pを許すなど、残り2分で一気に66-63まで猛追される。アリーナを緊張感が包む中、日大メンバーは落ち着いていた。ファールで得たフリースローを確実に決め、東海大学を振り切った。東海大学がプレー継続を止め時計が流れると試合終了を告げるブザーが鳴った。70-63、最後まで目が離せない熱戦を制した日大バスケ部が15年ぶり13回目の優勝を手にした。

準決勝、決勝と要所で一戸の3Pがチームに勢いをもたらした 【日本大学】

【日本大学】

試合後、井上主将は「全員の力。ベンチもベンチ裏も力を尽くしてくれた。みんなに感謝したい」と話した。井上、米須、コンゴロー、新沼、一戸、松村ら4年生の奮闘に応えるように、下級生、ベンチ裏のメンバーも含めてチーム一丸で頂点へ駆け上がった。伝統の「ディフェンスからの速攻」の通り、コート内外で粘り強く、一つ一つの積み重ねが結実した日本一。日本大学が初優勝してから、優勝のブランク15年は最長、OBや大学関係者も待ち望んだ日本一だった。

手製のボードも使い応援する日本大学応援席 【日本大学】

スターティングメンバー 、#3米須玲音(文理学部4年/東山高)、#7新井楽人(危機管理学部3年/沼津中央高)、#11奥浜貫太(文理学部3年/興南高)、#12コンゴロー・デイビッド(スポーツ科学部4年/報徳学園高)、#13泉登翔(文理学部3年/福大大濠高) 【日本大学】

必要だった最後の1ピース

15年ぶりの日本一、4年生の力が大きかった。

ふと3年前を振り返ると、当時コロナ禍の中で行われたスプリングトーナメントで15年ぶりの優勝を果たしたのは日本大学。
その時、躍動したのはインサイドを制し優秀選手賞・得点王・リバウンド王となったコンゴロー・デイビットと、アシスト王となった米須ら1年生(現4年生)だ。

決勝の相手は今回と同じ東海大学、ディフェンスで相手を上回り掴んだ勝利は強いレッドシャークスが戻ってきたと感じさせた。この時、当時東海大学2年だった河村勇輝選手を徹底マークしたのは米須、当時からディフェンスの意識は高かった。

しかし、米須はこの後二度の大けがを経験、チームは上昇傾向にあったもののタイトルから遠ざかってしまう。


そして今年4月に古川新監督を迎えたチームは、学生主体の運営方針となった。新山岬(危機管理学部4年/東山高)と田崎生力(文理学部4年/保善高)ら学生コーチが戦術とトレーニングを考え、井上主将ら4年生は練習場に一番に来て練習をし、バスケットに対する姿勢を背中で見せ続けた。スプリングトーナメントで敗れても「インカレ優勝」だけはぶれることなくチームはまとまり、オータムリーグでは米須が300日ぶりにコートにもどってきた。
オータムリーグは4位に終わったものの、失点数は東海大に次ぐ2位と安定した数字を残し、復帰したばかりの米須はアシスト王を獲得し完全復活を感じさせる活躍を見せ、チームに米須という「インカレ優勝」に必要な最後のピースが埋まった瞬間だった。

米須は大学選手権で躍動し、最優秀選手賞(MVP)に選出。期待を裏切らない活躍を見せた。

MVP賞を獲得した米須 【日本大学】

ケガに苦しんだ時期もあったが学生バスケで有終の美を飾った。Bリーグに舞台を移し、活躍する姿に注目したい 【日本大学】

個人賞は米須の他、優秀選手賞(ベスト5)に新井 楽人(危機管理学部3年/沼津中央高)とコンゴロー デイビッドが選出。

古川貴凡監督が最優秀監督賞を受賞した。

優秀選手賞の新井学人。今夏にはU 22日本代表として国際大会を経験した。来シーズンは主力としての活躍がより期待される。 【日本大学】

優秀選手賞のコンゴロー デイビッド、献身的な動きでゴール下を制した。コート外でもセカンドユニットのボロンボムヘカグラシアブラ(スポーツ科学部2年・八女学院高)にはアドバイスを送り続けるなどチームの成長にも大きく貢献。 【日本大学】

最優秀監督賞の古川貴凡監督。日大豊山高で35年の指導を経て今年3月に就任。練習のアップに自身も参加する距離感で学生の力を最大限引き出した。 【日本大学】

コメント

井上 水都
 全員の力。ベンチもベンチ裏も力を尽くしてくれた。みんなに感謝したい。高校のウィンターカップはコロナで出場できなかった。最後、優勝して終わりたい気持ちがあった。(後輩には)誰よりも早く体育館に来て練習して、誰よりも遅くまで練習するのはチームの力になるし、そうやって日本大学バスケットボール部を強くしていってほしいと思う。
 (今日の試合は)コートに入った瞬間にシュートを決められるようなメンタルと準備をしてきて、いいタイミングでシュートも決められて、ディフェンスで圧をかけられて、優勝は率直にめちゃくちゃうれしい。とにかく勝たないといけない試合なので、入りから全力でいこう、選手間で話していた。それでも前半で20点近く離れたタイミングでも必ず東海大学が最後追い上げてくるのは、何回も対戦して分かっていたので、焦らずに対処しながら自分たちの強みである「ディフェンスからの速攻」を出せたのがこの結果のポイントだと思う。このチームを勝たせられなかったらキャプテン失格だと思っていたので、後輩にもいい思いをしてほしいし、いい思いをしてほしいと言ってくれる後輩もいて、いいチームだった。


米須 玲音
 1試合通して悪いともいいときもあり、最後勝ち切れてよかった。とにかく日本一になれてうれしい。(最後のフリースローは)それまでシュートが1本も入らずにきて、ベンチに戻ったときにベンチメンバーが「絶対入るから」と言ってくれて決められてよかった。
 4年生は自分がケガをしているときでも声を掛けてくれて、ラストシーズンは4年生のためにという思いもあり、後輩たちのために日本一にならないと、という思いもあった。このメンバーで最後まで戦えて最高の景色を見れたのでうれしい。


新沼 康生
 4年間、きついこともあって、4年生の1年は人生を大きく変えた1年。先生と同期に感謝したい。昨年のインカレからは流れを変える役目としてがんばることを意識した。吹っ切れたというよりも楽しむことを大事にした。
 東海大学とは2年前と去年の東海大学戦など思い入れのある相手で、勝たないと次にいけないと思っていたので、相手の圧に負けずに日大らしさを全面的に出せるように意識していた。ゲームの流れを変えるためにディフェンスとルーズボール、リバウンドをとくに意識して、あとは勢いのある後輩たちに思いっきりプレーができる場をつくるのが4年の役目だと思っていた。4年生は家族のような存在で、みんなで乗り越えてきた。


新山 岬
 シーズン当初から「インカレを獲ろう」とずっと言っていたので、リーグ戦で負けたときもブレずに、一つの経験値として取り組めたのはよかった。今日試合で最後勝たないことにはシーズン当初の目的が達成できなかったので、今日の勝利はものすごく大きかった。我慢して勝ち切れたのはよかった。信じられない。学生で練習メニューを組んだり、指揮をとっているので、結果で報われてよかった。


コンゴロー・デイビッド
 入学以来ずっと東海大学にインカレで負けていて、人生ではじめての決勝の舞台でした。勝たないといけないという気持ちで自信を持ち続けた。最後、メンタルがよくないときもチームメイトがモチベーションを保ってくれたので切り替えて、最後までプレーして日本一になれてほんとうにうれしかった。


一戸 啓吾
 セカンドユニットとしていかに玲音を休ませて万全でプレーさせられるか。いかにセカンドで点差を離してスタートにバトンタッチしようかと話していた。シュートのタッチもよく東海大学には「さすがに3度目の正直なので勝たないといけない」という気持ちだった。最後に日本一になるという照準を合わせてステップを踏めた。


新井 楽人
 細かいことは考えずに4年生のためにという思いだけだった。ここまで連れてきてくれた4年生に感謝の気持ちです。


泉 登翔
 東海大学の強度の高いディフェンスを計算していた中で、70点取らないと、というゲームプランで試合を通してそれができた。4年生に引っ張ってくれて、下級生として少しでも貢献して日本一という結果でよかった。


奥浜 貫太(文理学部3年・興南高)
 昨年、一昨年と東海大学に負けて、そこから今日は何が何でも勝つとチームで決めて勝ち切ることができたのでよかった。


古川 貴凡監督
 3月から楽しい9ヵ月けれども苦しい9ヵ月を一番がんばったのは学生たち。心の底からうれしいです。気を抜くと一瞬でもっていかれてしまうので、チャレンジする気持ちでした。学生がしっかりしているので、1試合1試合成長して勝ち取った成果。一番成長していると思う。学生の力は信じれば引き出せる。
 絶対に東海大学が後半迫ってくるから逃げずに戦おうと、やることをもう一回確認しました。ゲームプランはうまく進んでくれた。新山、田崎生力の分析のおかげ。みんなで力を合わせて勝てました。うまいだけでも、思いだけでもダメで、強さを形に変えていく力が彼らにはあった。

チームを支えた新山(中央)、田崎生力(文理学部4年/保善高) 【日本大学】

チーム一丸で手にしたインカレ優勝。全員で喜びを分かち合った 【日本大学】

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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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