【週刊グランドスラム282】勝つこと以上の成果を求めて――アジア・ウインター・ベースボール2024戦記
七十七銀行の三上竜誠は、全日本ジュニア強化合宿からアジア・ウインター・ベースボールに招集された逸材だ。 【写真=宮野敦子】
「国際大会でどれだけ通用するかを見極めるには、『勝つこと』が一番わかりやすい。ただ、我々が目指すのはそれだけではありません。社会人野球全体の底上げ、存在意義を示していく必要がある。AWBを戦うための選手招集には、各地区の協力が不可欠です。この舞台に立った選手には、自チームはもちろん、各地区にこの経験を還元してほしい。そして、より多くの選手に『AWBに行きたい』、『自分にもチャンスがあるかもしれない』と感じてもらいたいです」
社会人1、2年目を中心に招集した30名のうち、今夏の全日本ジュニア強化合宿で目立つパフォーマンスを見せて選ばれたのが、七十七銀行の三上竜誠だ。「スイングスピードの速さには驚かされました。こういう選手がいると、ジュニア合宿の存在価値も上がってきます」と、川口監督は言う。本来なら社業に専念する時期に、台湾でプレーできる喜びを噛み締めながら、「この機会に、他チームの主軸を打つ選手とバッティングの話をたくさんしたい」と、三上は声を弾ませた。
試行錯誤しながらも貴重な経験を積んだ選手たち
決勝の相手は、リーグ戦で1勝2敗1引き分けと唯一負け越しているNPB WHITE。先発の後藤凌寿(トヨタ自動車)は4回まで無失点に抑えるも、5回表の先頭に四球を与え、牽制悪送球で無死三塁とし、さらに暴投で先制点を許してしまう。6回表には二番手の笠井建吾(三菱自動車岡崎)が2点を失うも、好調の打線がすぐに取り返してくれると思ったが、NPB WHITEの継投策になかなか好機を作れない。9回裏にようやく、山本卓弥(Honda熊本)がチーム2本目のヒットで出塁。二死二塁で吉川海斗(日立製作所)が中前に弾き返して1点を返すも、1対3で敗れた。
日本生命の谷脇弘起は変化球を多く使うなど、シーズン中とは違ったチャレンジを意識した。 【写真=宮野敦子】
「シーズン中はあまり投げていなかった変化球を多投し、いい感触が得られた。最初のミーティングで『チャレンジして失敗したら、またそこから考えて、チャレンジを繰り返していこう』という話があったから、どんどん試すことができました」
日本と台湾のプロを相手に、試行錯誤しながらも何かをつかんだ選手にとっては、充実した1か月間だっただろう。AWBでの経験を来季に生かし、さらなる飛躍を遂げてもらいたい。
【取材・文=古江美奈子】
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