車いす、義足……パリで注目された「パラリンピック修理サービス」を提供! 社会に貢献するオットーボック社の取り組み
【key visual by X-1】
義足を調整するための治具。義足だけではなく、調整用の工具などもオットーボック製だ 【photo by X-1】
赤土に苦戦した車いすテニス選手から依頼が続々
パリパラリンピックでは、720㎡の修理サービスセンターを構え、41ヵ国から160人を超えるスタッフが3000件以上の対応にあたった。オットーボック・ジャパンから派遣された中島浩貴さんは、過去大会に何度も修理サービスを行ってきた技術者の1人だ。そんな中島さんは、パリ大会で印象に残ったことに、車いすテニス会場「スタッド・ローラン・ギャロス」の赤土(クレーコート)を挙げた。
車いすバスケットボール用車いすのメンテナンスを行い、キャスターを交換する中島さん 【photo by X-1】
日本代表選手をはじめ、全仏オープンに出場した経験がある選手は“赤土仕様”で大会に臨んでいたようだが、初めてクレーコートでプレーする選手や、準備ができなかった国から「タイヤが滑るので、何とかしてほしい」と要望が殺到したという。
「私たちが修理センターにストックしていたタイヤでクレーコートに対応できるものがあったので、基本的にはそれを使いましたが、他の選手のタイヤを見て『あのタイヤがよさそう!』と別のタイヤと交換したいという選手もいましたね」(中島さん)
本来、オットーボックが引き受けるのは修理サービスで、修理後は同社が壊れたものを引き取ることがルール。だが、今回に限っては、交換前のタイヤも性能がよく別の機会に使えるものだったため、取り外したタイヤは選手に返却したという。
足の関節の動きを安定させるために使う長下肢装具の修理 【photo by X-1】
電動デバイスとカーボンの普及による修理が増加。3Ⅾプリンターの活用に期待も
だが、電動ユニットは、発展途上かつ過渡期ということもあってメーカーが乱立。それぞれのメーカーがそれぞれの規格で作っていて粗悪品も少なくない。たびたび困難な修理依頼が舞い込んだという。
「大手メーカーであれば、アフターサービスを考えたつくりになっているんですが、安価なものは修理することは前提になく、それを『直して!』と言われるので、なかなか難しかったです」(中島さん)
修理に必要なパーツが並ぶバックヤード。高価なフット(足のパーツ)も無償で提供している 【photo by X-1】
「フレームにカーボンが使われている車いすは、修理が難しいんです。カーボンファイバーは炭素繊維がつながって強度を出していく素材なので、それが折れてしまうことは、繊維がちぎれてしまったということなので……本来、直すことはできませんよね」(中島さん)
カーボン自体は、これまで義足などにも使われており、新しい素材というわけではないが、使われ方が多種多様になってきたという。
「少なくとも大会中は使えるように直しましたが」と中島さん。国内でメンテナンスを受けられないがゆえに壊れてしまうケースや、使い慣れていないために壊してしまうケースもあるそうだ。
3Dプリンターと3Dプリンターで作られたソケット 【photo by X-1】
ランニングクリニック出身のパラリンピック選手も
パラリンピックに夏冬合わせて5回出場した山本篤らスター選⼿による、無償のランニング指導を行っている 【photo by Haruo Wanibe】
2024年11月にランニングクリニックが行われ、下肢切断者10人が参加した 【photo by Haruo Wanibe】
key visual by X-1
※本記事はパラサポWEBに2024年12月に掲載されたものです。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ