草野球で町おこしに成功した徳島県阿南市。「本格スタジアムで試合」に全国の草野球チームが来訪
【写真提供:徳島県阿南市市役所】
プロ顔負けの本格スタジアムで野球ができる
プロさながらの気分を味わえると評判の電光掲示板 【写真提供:徳島県阿南市市役所】
阿南市は、この球場での試合と市内観光をセットにした「野球観光ツアー」を2009年から実施しているが、全国の草野球チームが憧れるのと同時に、このツアーを含め、事業全体で年間1億円の経済効果をもたらしていることから、まちおこしのお手本として、全国の自治体からも注目を浴びているのだ。
観光と野球の試合がセットになった人気のツアーなどで、宿泊者数は10年で約20倍
観光ツアーにやってきた野球チームと地元チームの試合 【写真提供:徳島県阿南市市役所】
「自治体のスポーツに関する課は、一般的にスポーツ振興課や、教育委員会の保健体育科のようなところに所属しています。しかし私が所属する『野球のまち推進課』は産業部に所属しているんです。つまり野球を産業の1つ、地域の資源として捉え、全国の野球チームの誘致を、スタジアムができた当初から行っているからではないでしょうか」(大川さん、以下同)
野球観光ツアーで行われる歓迎交流会ではご当地名物阿波踊りも 【写真提供:徳島県阿南市市役所】
この他にも、最低でも月に一度は大きな大会やイベントが行われるほか、社会人や大学、甲子園出場チーム等の「野球合宿」を誘致するなど、スタジアムをフル活用した事業を行っているのだ。結果として、阿南市内の宿泊者数は10年で20倍近くになったという。
地元球児が甲子園でベスト8進出
設備の整ったスタジアムは、県外の甲子園出場校の合宿にも使用される 【写真提供:徳島県阿南市市役所】
「2019年にも富岡西高校が春のセンバツで21世紀枠に選ばれて、それがすごく盛り上がりました。なぜ、強くなったかというと、春の甲子園大会に出る北信越の高校の合宿を誘致するようになったからです。甲子園に行く前の数日間、阿南市で合宿をしてもらい、その間に地元の高校の野球部と練習試合をさせてもらったんですが、相手チームは広いグラウンドなのにボンボンホームランが入る。初めて全国レベルの野球を目の当たりにして、そこからどんどん実力が伸びていきました」
こうして、野球を中心にしたまちおこしが、地元の高校球児たちの成長にもつながり、野球のまちとして阿南市の知名度が上がるというプラスのスパイラルが生まれているのだ。
最高齢は80代のボランティアチアガール
JAあなんスタジアムには少年野球からシニアまで多くの野球チームが訪れる 【写真提供:徳島県阿南市市役所】
「野球によるまちおこしを提案したのは初代『野球のまち推進課』課長の田上さんという人で、彼のおかげでここまで成功することができましたし、これを認めた当時の岩浅市長もすごいと思うんです。最初は税金で野球だけ応援するのはおかしいという市民からのお叱りの声もあったそうですが、応援してくれる市民の皆さんや、市役所職員の協力もあって、野球のまち阿南の取組は、徐々に市民に浸透していきました」
阿南市のチアガール組織「ABO60」の皆さん 【写真提供:徳島県阿南市市役所】
「徳島の特質として、阿波踊りを見に来る観光客の方をお迎えしたり、お遍路さんでいらした見ず知らずの方に『これ、飲んでいき』と飲み物を提供したりと、昔からおもてなしの心が根付いていることがあります。それがこの事業を支えてくれていると思いますね」
「野球のまち推進課」は人数が多いわけではないので、毎日大変ですと言う大川さんだが、その表情は笑顔だった。阿南市のまちおこしの成功の一番の秘訣は、地元の皆さんの野球と地元に対する愛情なのだろうということが、ひしひしと伝わってくる取材だった。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:徳島県阿南市市役所
※本記事はパラサポWEBに2024年12月に掲載されたものです。
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