「もっと速い球を投げたい」と投球フォーム修正、即座に回転数アップ。社会人日本代表→ドラフト指名の快速右腕が示す、最先端データ活用法
【©中島大輔】
野球におけるデータ活用は、もはや不可欠と言えるレベルまで進化している。
各球団が5人近くのアナリストを抱えるプロ野球(NPB)はもちろん、特に取り組みを進めているのが社会人野球だ。日本代表の選手たちは投手ならストレートの球速に加えてホップ成分やシュート成分、打者は打球速度やスイング速度などを全日本野球協会のHPで「PROSPECT PLAYERS LIST」として公開しているのだ。
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「これまでと同じことをやっているだけではダメ。どんどん進化していかないと、衰退していきますからね。いろんな新しい刺激を代表チームに入れていこうということです」
独特なフォームから「球の強さ」で勝負
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「真っすぐの回転数より、回転軸を一番見ていました」
そう話したのは、セガサミーの左腕投手・荘司宏太だ。最速150キロの”真っスラ"とチェンジアップが武器で、同合宿から1カ月半後のドラフト会議ではヤクルトに3位で指名された。
「身長が低いので(172cm)、球の強さで勝負するしかありません。自分は独特なフォームなので、解析というより、球質を優先的に見たいなと」
荘司は上半身を大きく使い、強い球を投げていくことが持ち味だ。投手として上背はないものの、自分の特性を把握し、テクノロジーも使いながら伸びていった。
小柄ながらヤクルトから指名を受けた荘司 【©中島大輔】
「強みをどんどん伸ばす」ために
「普段から見ている数値と、どれくらい変化しているのか。それを確認したのは、社会人日本代表の合宿中に自分のなかで投球フォームに変化があったからです」
白樺学園高校からNTT東日本に進んだ片山は、最速151km/hのストレートを武器にしている。社会人日本代表の合宿中にライバルたちから刺激を受けて「もっと速い球を投げたい」と思い、投球フォームを見直した。
「体をしっかり使い、腕がどれだけ振られるか。腕を点で『ブッ』と振るのではなく、線で『ブンッ』っていうイメージです。そう意識したら、柔らかさが出てきました」
最近の投球を振り返ると、手先を気にして投げていた。片山はそうした反省を踏まえて修正し、合宿の計測では普段の練習時より200回転多い2400回転を記録(1分間当たりの回転数)。こうした微修正を即座にできるのも、普段からトラッキングデータを活用しているからだ。
「元々僕の長けている部分は(ストレートの)縦の回転量。普段から意識しています。高校の時からそれだけで生きてきたので、強みをどんどん伸ばしていけるように。入社当時から今でも、特に見ているところです」
片山はNTT東日本に入社して4年目の今秋、オリックスにドラフト6位で指名された。決して望ましい成績が出たシーズンではなかったが、スカウトは確かな成長の跡を見ていたのだろう。
オリックスから指名を受けた片山 【©中島大輔】
「データと指導現場」をつなぐ者たち
一方、データを扱う側もさまざまなアプローチをできるようになっている。その成果が見られたのが、2023年12月16・17日に開催された第3回「野球データ分析競技会」だった。
「データと指導現場」をつなぐアナリストやデータサイエンティスト、コーディネータの育成を目的とし、全日本野球協会が主催する同大会には高校生や大学生、大学院生が3人1組でチームを組んで参加し、決勝には5チームが出場。
2020〜2023年の都市対抗野球大会、2021〜2022年の社会人野球日本選手権大会の合計6試合で計測された「トラックマン」データを用い、「野球競技力の向上」をテーマに各チームが研究を発表した。
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第4回の今回は、2025年2月22・23日に開催。出場の対象は高校生、大学生、大学院生で、応募期間は12月20日までとなっている。
今回の特徴は、東京六大学野球のトラックマンデータが使用されることだ。全日本野球協会選手強化委員会の平野裕一委員長は「学生がより興味を持てるように対象を設定しました」と話した。
聴講者も募集しており、参加費は一般10,000円、学生4,000円(税込み)。昨年よりリーズナブルな価格設定だ(聴講日は2月23日限り)。
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(写真/文 中島大輔)
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