早大ラグビー蹴球部 第100回早明戦 タフなゲームを乗り越えて、17年ぶりの対抗戦全勝優勝

チーム・協会
関東大学対抗戦 12月1日 対明大 国立競技場
【早稲田スポーツ新聞会】記事 村上結太、写真 安藤香穂、植村皓大

 気炎万丈。勝利に飢え、優勝に飢えた早大の炎は紫紺を飲み込み、2007年以来の全勝優勝を達成した。今季の対抗戦で最も肉薄した試合であったことは間違いないが、重戦車の猛攻を自慢のディフェンスで抑え込んだ。前半は自陣での反則が重なり、苦しい展開が続くが何とか無失点のまま乗り越える。12分に得た初めてのチャンスから先制に成功すると、両チームトライを取り合い、12ー10と2点のリードで前半を終えた。後半、明大に逆転を許すものの崩れることはなく、2連続トライで再逆転。試合終盤に明大の執念のアタックで最大のピンチを迎えるが、規律正しく、圧力のある決死のディフェンスでインゴールを守り切り、27ー24と見ごたえのあるクロスゲームを制して見せた。

ボールキャリーをするHO佐藤 【早稲田スポーツ新聞会】

 明大ボールのキックオフから100回目の早明戦が始まった。細かなミスが失点につながるような異様な緊張感の中、先に流れを掴んだのは明大。早大は自陣での反則が重なり、自陣深くでのプレーが続く。しかし、「冬から取り組んできた」(大田尾竜彦監督、平 16 人卒=佐賀工)ディフェンスでグラウンディングを許さず、無失点で立ち上がりの危機を乗り越えた。11分、明大のダイレクトタッチから敵陣でのラインアウトを獲得し、今試合初の好機を迎えた。CTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)がラインブレイクすると、フォローに走っていたFB矢崎由高(スポ2=神奈川・桐蔭学園)がゴール目前にまで迫る。早いテンポでSH細矢聖樹(スポ4=国学院栃木)がボールを捌くと、LO米倉翔(スポ2=福岡・修猷館)が巧みなカットインでさらにゲインを見せる。最後は大外で待っていたHO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がインゴールを叩き割った。瞬く間の速攻で一気に明大守備を破壊し、先制点をもぎ取った。しかし続く16分、早大のオブストラクションからゴール前でのラインアウトモールを形成した明大に伝統の重戦車ぶりを見せつけられ、同点に追いつかれる。さらに27分、またもモールでトライラインを割られ、逆転を許した。5ー10とロースコアな展開で前半の終盤を迎えると、WTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)が獲得したハイタックルのペナルティーから早大はチャンスを得る。インターセプトを狙ったCTB平翔太のノックオンからゴール前でマイボールのスクラムを組むと、サインプレーでインゴールに飛び込んだのは田中健。対抗戦14本目のトライを挙げ、12ー10と2点のリードを得て前半の40分を終えた。

ラインブレイクするCTB福島 【早稲田スポーツ新聞会】

 続く後半。先に試合を動かしたのは明大。10分、早大のラインアウトの反則から陣地を大きく拡大した明大はモールでアドバンテージを得ると、CTB秋濱悠太がディフェンスの穴を突く見事なランニングを見せ、12ー17とまたも逆転。しかし、再開後すぐのキック合戦で明大がブレイクダウンでの反則を犯すと、早大はラインアウトモールを押し込み、同点に追いついた。さらに18分、佐藤が逆足でのグラバーキックで明大ゴール前の絶妙な位置にボールを転がすと、WTB池本晴人(社2=東京・早実)のナイスセービングでボールをキープした早大。最後はディフェンスラインめがけて鋭く走りこんできた矢崎がタックラーを引きずりながらインゴールをこじ開け、値千金の連続トライ。点差を広げると、ペナルティーゴールでスコアを27ー17とし、流れに乗ったかに見えた。しかし、最後まで勝負がわからないのが早明戦の醍醐味。30分、明大SO伊藤龍之介のラインブレイクから会場が明大コールに包まれると、モールからFWの継続したアタックでトライを献上してしまい、残り8分で3点差に。38分に早大はスクラムで痛恨のアーリーエンゲージの反則を取られ、今試合最大のピンチを迎える。今試合2トライを奪われている強力なモールを組まれるが、前進を許さない。明大の猛攻は続くが、試合終盤になっても早大の出足が遅れることはなかった。特にリザーブから出場したPR新井瑛大(教2=大阪桐蔭)、PR安恒直人(スポ4=福岡)、HO清水健伸(スポ2=東京・国学院久我山)が意地のタックルで早大ディフェンスを牽引。「1トライで逆転されてしまうという場面を楽しめていた」(佐藤)と、苦しい場面でも焦りは見せなかった早大。ライン際まで回ったボールはWTB海老澤琥珀が受け取り、最終局面。紫紺のトライゲッターを1年生コンビ、SO服部亮太(スポ1=佐賀工)とWTB田中健がタッチに押し出し、ノーサイド。3点差を守り切り、対抗戦全勝優勝を決めた。

ディフェンスを圧倒するFB矢崎 【早稲田スポーツ新聞会】

 佐藤主将のもと、『Beat Up』というスローガンを掲げて走り続けてきた早大。開幕節立大戦で57ー6と圧倒し、続く日体大、青学大を完封。絶対王者・帝京大を相手に31点差での歴史的勝利を遂げると、筑波大も危なげなく快勝。伝統の早慶戦では慶大をノートライに抑え、ついに宿敵・明大を撃破。「全カテゴリーの選手たちが勝負に貪欲になって勝ちだけを目指してきたからこそ今日の勝利を掴めた。チーム全体として勝ち癖のある良い集団になれている」と佐藤が振り返ったように、常勝軍団として快進撃を見せてきた。節目となる第100回の早明戦、タフな試合で勝利し、さらに勢いをつけた早大。次なる戦いの場はついに全国大学選手権だ。負けたら終わりのノックアウトステージ、勝って、凱歌を響かせよう。日本一になったときにしか歌えない『あの歌』を。

コメント

大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)

ーー今日の試合の振り返りをお願いします

 今日は本当に両チームのプレイヤーたちが今持てる力を全て出したのではないかなと思います。この国立競技場で、そして4万人以上の皆様の前で第100回にふさわしい早明戦ができたのではないかと思います。試合の内容に関して言えば細かいことはあれこれありますが、まずはプレッシャーに打ち勝った選手たちにおめでとうと言いたいです。

ーー大学選手権に向けて整えていきたいところを教えてください

 初戦までは3週間あるので、スキルのところをしっかり見直し、ディフェンスではラインブレイクされた後のアンストラクチャーの場面などを整えていきたいなと思います。

ーー強力なFWを率いる明大に対して、FW全体が良く戦っていたと思うのですが、その要因は何だと思いますか

 体の使い方、スキルの部分は今年1年間徹底して取り組んでいたので、それらが複合的に組み合わさって成長できていると思います。自分たちのやりたいラグビーに合わせて身体を作ることができた結果が今日表れていたと思います。

ーー今日、大田尾監督から見て最も活躍していた選手は誰だと思いますか

 今日は福島が効いていたかなと思います。最後、明大の伊藤君に抜かれていかれたかな、と思ったのですがチームを救うタックルを見せたり、ファーストトライに繋がるラインブレイクも見せていたので非常に良かったかなと思います。大舞台でも力を発揮できるようなメンタリティーも持っていますし、強度も高いプレーができるので非常に良い選手だと評価しています。

ーー第100回の早明戦を監督として迎えられた心境を教えてください

 対抗戦という歴史あるリーグの早明戦という伝統の一戦でプレッシャーを感じながら今日を迎えましたが、明治大学さんに勝つためにはしっかりとセットプレーを組まなければならない、そして強力なアタックに対抗できるディフェンスを整えなければならないということで冬から取り組んできました。明治さんに勝つために考えを巡らせて、非常に多くの時間を費やしてきました。今日の試合は両チームの選手たち、早稲田と明治のプライドがぶつかり合った良いゲームだったと思います。

ーー就任4年目での対抗戦全勝優勝、率直な思いをお願いします

 学生たちもこのままで大丈夫なのかと思うことはあったでしょうし、僕自身も悩むことが多かった1年でした。しかし、チームで一丸となって一緒に課題を解決するために真剣に向き合った結果が今日表れたのではないかと思います。素晴らしい国立の舞台で、難しい対抗戦を優勝できたことを嬉しく思います。

HO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

ーー今日の試合の振り返りをお願いします

 4万人以上の観客の中で第100回の早明戦をできて、また勝利できてとても嬉しく思います。試合の内容では、ほぼ明大に流れを持っていかれ、自陣に居ることが多かったんですが、ディフェンスで切らさずに全員が自分の役割を全うしながら横とコネクトできたことが良かったことかなと思います。

ーー後半、明大が追い上げてきた場面では会場が明治コールに包まれた瞬間もありましたが、どんな思いでしたか

 最後3点差の場面でスクラムでペナルティーを取られ、モールの場面になったとき、僕はディフェンスラインに居たので、田中や健吾と「あとはディフェンスやな」と慌てることなくディフェンスに集中できてました。1トライで逆転されてしまうという場面を楽しめていたというか、今季力を入れていたディフェンスで試合を締めくくれたというのは、これからのノックアウトステージでも生きる良い経験になったと思います。

ーー今日の試合中には上手くいかない場面も多かったと思います。また、今年キャプテンになってからもチームとして上手くいかない場面がいくつもあったと思うのですが、どのようにチームを立て直してきたのですか

 僕はずっと勝ち癖のあるチームにしていこうと思っていました。今年は春シーズンから全勝という目標を掲げて勝ち癖のあるチームにしていこうと思っており、全カテゴリーの選手たちが勝負に貪欲になって勝ちだけを目指してきたからこそ今日の勝利を掴めたのではないかと思います。僕のおかげではなく、チーム全体として勝ち癖のある良い集団になれているのかなと思います。

ーーペナルティーの多さについてはいかがですか

 フィールドでの反則は明治大学さんの縦のプレッシャーを受けてしまったところで発生していて、逆に自分たちが前に出れているときにはほとんど反則がなかったので、勢いやコリジョンのところで改善していく必要があるのかなと思います。関西のチームは勢いでどんどん来るので、劣勢になったときでも反則を重ねないような戦い方を身につけていきたいです。

PR亀山昇太郎(スポ4=茨城・茗溪学園)

ーーまず率直に、対抗戦優勝の感想をお願いします

 自分たちの代で優勝ができたことは自分の中でも嬉しいです。大学に入ってから一度も優勝することができなかった中で、今年全勝優勝をすることができて嬉しく思っています。

ーースクラムでの手応えなどはありましたか

 前半に少し上手くいってない部分があって、後半に帰るところを変えていこうと佐藤と喋って、そこが上手くハマって押すことができたので、修正できたと言うところで、自分たちの中でもよかったなと感じました。

ーー激しい場面が何度も見られましたが、FWのコンタクトの部分を振り返っていかがですか

 今まで対抗戦で戦ってきた中で、一番高いコンタクト強度でした。自分たちの中で、立ち返る場所はディフェンス、体を当てるところをすごく意識したので、ディフェンスを崩されてのトライというのは少なかったと思うので、すごくよかったかなと思います。

ーー選手権への意気込みをお願いします

 ノックアウト形式で負けたら終わりなので、目の前の1試合に全てを懸けてやっていきたいと思います。

SH細矢聖樹(スポ4=国学院栃木)

ーーまず対抗戦優勝への率直なお気持ちをお聞かせください

 チームとして優勝できたことはとても嬉しく思いますが、個人としてはミスが多くて反省の出る試合でした。

ーー対抗戦を終えて、ご自身の成長などは感じていますか

 ゲームタイムが重なるにつれて経験値も上がってきて、成長につながっているかなと思います。

ーー選手権への意気込みをお願いします

 負けたら終わりなので、いろんな人たちの想いを背負って、一戦一戦、戦っていけたらなと思います。

LO西浦剛臣(社4=ニュージーランド・ハミルトン・ボーイズ・ハイスクール)

ーー対抗戦優勝となりましたが、率直な感想をお願いします

 この4年生の代で、自分たちが出て全勝優勝できたのはすごくうれしいです。けれども、今日の明大との試合に出て足りないところがまだまだ多いなと感じたので、『日本一』、『荒ぶる』に向けてこれから修正していきたいと思います。

ーー今日の試合のアタックとディフェンスをそれぞれ振り返っていかがですか

 アタックは少し取り急いだというか、ミスが多くなってしまったのですが、その中でも自分たちのやるべきことを信じて戦えたからこそこの結果になったのだと思います。けれど、やっぱりミスが多いところは修正しなきゃいけないなと思います。ディフェンスに関しては、それこそ接点の部分で戦えている時は良い流れが来ますが、受け身になり始めてしまったらそこからどんどんやられてしまいました。あとはモールディフェンスのところで、そこが起点で相手から得点されてしまっていたので、ここから集中してやっていかなきゃいけないなという風に思います。

ーー今お話にもありましたが、改めてセットプレーを振り返っていかがですか

 スクラムは戦えるなという自信はありますが、やっぱりモールの部分、特にモールディフェンスは、絶対に取らせないという自信を自分たちが持つためにも、これから修正して上井草での練習を大切にしていきたいと思います。

ーー最後に『荒ぶる』への意気込みをお願いします

 あと多くても3試合、自分たちがやり切るだけなので、今までやってきたことを信じてここからまた上井草で積み重ねて、絶対に『荒ぶる』をつかみたいと思います。

FL田中勇成(教3=東京・早実)

ーー最後守り勝った場面を振り返っていかがですか

 あそこは早稲田が今までやってきたことへのプライドを出す場面だと思っていたので、そこでみんながつながり続けて、最後守りきれたのはよかったなと思います。

ーー試合前は今日の試合での自分の役割をどう考えていましたか

 やはりでっかいFWを自分が止めて、ゲインラインを切らさずに、ディフェンスでチームに勢いをもたらすことをイメージしていました。

ーー初めての早明戦、雰囲気はいかがでしたか

 いつもと違って慣れない部分に自分も戸惑ったりしたんですが、この試合を経験できたことはすごく自信になったし、あの歓声の中でラグビーができたことは幸せなことだと感じました。

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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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