【ママさんバレーボール】白いボールを追いかけて⑥岐阜編 第14回愛・チャンピオンズリーグ 盤石王者に挑んだ「初全国」での果実 

チーム・協会

準決勝は粘られたが、決勝は圧勝したKAYOクラブ 【プロフォートサニー】

 心憎いばかりの強さだった。
 キャプテンの南谷利恵さん(44)が「最初から優勝を狙っていたので。計画通り? はい、そうです」とこともなげに言う。文字にすると高いところからの発言と取られそうだが、「上から」ではない。明るく前向きな自信の表れだ。18のママさんバレーボールチームが11月25日(月)から4日間、岐阜メモリアルセンターに集まった第14回愛・チャンピオンズリーグ(全国ママさんバレーボール連盟主催、朝日新聞社など後援)で、地元岐阜市のKAYOクラブが優勝した。
 2年前まで冬季大会と呼ばれていた年齢制限なしの大会を昨年の前回から改称。もともと一生に1回しか本大会に出場できない全国ママさんバレーボール大会に何回も出たくてうずうずしている選手たちの受け皿だったが、同一県からの複数参加を認めるなど門戸を広げ、昨年今年と参加者の平均年齢は45歳と、20代から60代まで幅広い層が参加するバラエティー豊かな大会になった。全国大会と同じくらいレベルも高い。その中でも盤石のチーム力を見せつけたのが、夏の全国大会でもブロック優勝したKAYOクラブだ。予選リーグを4戦全勝、失セットは1と安定した戦いで勝ち抜き、準決勝は岡山の粘りにあったが、決勝は愛知を失点17という大差で下した。

KAYOクラブはブロックとフォローも万全だった 【プロフォートサニー】

歴史上でも屈指の守備力

 もとは県立岐阜高校の定時制のOGが中心になって組まれた歴史のあるチーム。伝統の堅い守りと巧みな試合運びは創設半世紀を超えても健在だが、4枚のフロントを自由自在に操ったチーム歴30年弱のベテランセッター内野直美さん(62)は「いまのチームは雰囲気がいい」と話す。長い歴史でも現チームの守りの良さは指折りという。
 誰が出てもどこからでも点が取れる層の厚さは、「地の利」を活かした戦いにも表れた。メンバー12人は神出鬼没。54歳のライトエース皆川明子さんは地元の飲食店を夫婦で営むため、大会3日中、2日目は欠席。最終日は第1セットの立ち上がりに3点、最後はゲームポイントも決めた後、店の書き入れ時のランチタイムと重なる決勝は欠場。その代わりに28歳の最年少、浜野奈那さんが午前中の仕事を終えて駆けつけるといった具合。普段から誰が不在でも対応できる練習をしてきた成果で、背番号をあらためないとメンバーが代わったこともわからない。
 攻守に穴がない上に試合運びも巧みだ。チームに加わって3年目の左利きセンター、近藤実緒さん(32)は試合が進むごとに得意の「ツー」を炸裂させたが、「私自身がスロースターターというのもありますが(笑)、序盤はあえて外に振り、だんだん中に集めるというチーム全体の戦略」と明かす。相手の守りの先の先を読んで多彩な攻撃を繰り出す陰には集中したトレーニングの積み重ねがある。全国大会ブロック優勝、今大会優勝ときて、次の目標は2025年2月の東海大会制覇。「常に実戦的な練習をしてきているので、今シーズンは取れる大会は全部取りたい」と南谷さんは言った。

安江喜代子監督(KAYOクラブ・左端)も「力が安定している」 【MVF】

家族並みの結束力で挑む

 そのKAYOクラブに準決勝で敗れたフレッシュ大元(岡山)の大岡真智子監督は「応援してくれた岡山の人たちのために1セットでも取りたかった」と悔しさを隠さなかった。5年前の第50回記念大会の全国ママさんバレーボール大会でブロック優勝。そのときとほぼ変わらないメンバーで強敵に挑んだ。立ち上がりに連続ポイントを許して13-21と先取されたが、第2セットは中盤の競り合いを抜け出し、19-18。あと2ポイントに迫った。が、そこからサービスで崩されるなど3連続失点。「立ち上がりが悪いのはいつものこと。普段ならば第2セットのあの局面で突き放せるのですが、やはり緊張でしょうか」(大岡監督)。予選リーグは3勝1敗。得失点差で勝ち抜いた粘り強さの源は、監督の娘と姪、副監督とその娘と、親子2組がいる家族のような結束力。セッターの巧みなトスさばきとバックの守りの堅さが光ったが、KAYOクラブの勝負強さにかわされた。

ファミリー的な雰囲気が売り物の岡山 【MVF】

初の全国大会が照らす舞台

 4強のうち2チームが全国大会初出場だった。決勝で惜しくも敗れた愛知のKASUGAIは、KAYOクラブと東海大会に続いて2回目の対戦。プレーイングマネジャーの小塚文子さん(59)は「センターコートの独特の雰囲気は初めてで、得意のラリーに持ち込めなかった」。第1セットは序盤こそ互角だったが、終盤にサーブで崩されてKAYOクラブのスピード豊かで自在な攻めに屈すると、第2セットは攻守一体のゲーム運びに翻ろうされた。
 キャプテンの青山亜希子さん(43)は笑顔の表彰式の後にアリーナの廊下で涙をにじませ、「相手の攻めはわかっていたけどブロック、拾い、つなぐという自分たちのリズムが出せなかった。次は全国ママさんをめざしたい」。予選リーグからシャープなスパイクを連発していた吉田若菜さん(30)は同じ左利きの近藤美緒選手に打ち負けた格好だが、まだチームに加入して1年弱。「真っ向勝負だけでなくいやらしい選手になる」と誓った。

KASUGAIは吉田さん②を中心に攻めた 【プロフォートサニー】

粘りのラリーで旋風を起こしたKASUGAI 【MVF】

27-25の壮絶なデュース

 そのKASUGAIに準決勝で完敗した三重県の上野ママも初の全国舞台でうれし涙と悔し涙を流した。予選リーグ初日は2-1、1-2で1勝1敗。2日目に2勝同士の同県対決を競り合いの末に2-0で制して4強を決め、うれし涙。準決勝は雰囲気に飲まれて計14点で完敗したが、谷川康子監督は「伊賀市から全国に出るのは初めてで、地元で盛り上げてくれたのですが、やはり『伊賀の山猿』でした」と冗談まじりに話した。
 ライトからシャープなアタックを繰り出した中井華代さん(30)ら若手選手が創部40年のチームに加わり、「最終日にここにいられただけでも幸運。若い選手が悔しい経験をできたのがよかった」と谷川監督。初全国が照らした先は明るい。
 大会のハイライトは予選リーグ初日のMSC(京都)とMIKUMO(三重2)の壮絶なデュースだった。互いにボールを拾い合い、サービスにはサービスで返す意地の競り合い。最後は27-25でMSCが競り勝ったが、このチームも初の全国舞台。ライトエースの呉美文さん(35)が予選リーグ初日の試合中に足首を負傷したが、全員のチーム力で乗り切った。まだ結成10年目の若いチームだが、選手兼任の奥村ゆかり監督らの60代から、この数年で世代交代が進む中、「右も左もわからない」全国へやってきた。応援グッズも初なら遠征もほぼ初めて。手探りで準備してコートに立った。
 大会準優勝のKASUGAIに敗れてリーグ敗退となったが、40代のベテランが他チームの指導者から学んできた練習法を取り入れるなどして、レシーブが目に見えて進歩したという成果を全国舞台で出せた。「つないで、つないでというのがうちのバレー。一つひとつのプレーに対するフォローを重視しています」と奥村監督。7回目のデュースで競り勝った勝利は、初舞台での萌芽。全国での経験だったからこそ、大きな実りになることだろう。
取材・文/伊東武彦

粘って最終日に残った上野ママ 【MVF】

MSCはまとまりの好チームだった 【プロフォートサニー】

◇第14回愛・チャンピオンズリーグ結果

決勝 岐阜1(KAYOクラブ)2(21-13、21-4)0愛知1(KASUGAI)
準決勝 岐阜1(KAYOクラブ)2(21-13、21-19)0岡山(フレッシュ大元)
準決勝 愛知1(KASUGAI)2(21-6、21-8)0三重1(上野ママ)
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著者プロフィール

バレーボールを通して会員の心身の健全な発展と、その輪の広がりを願いあわせて、社会的価値のあるものとして生涯スポーツに導くことを目的としてガイドラインの設定と各種大会の運営を行っています。

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