プロ野球新記録の8試合連続二塁打を記録した岡がパ・リーグ特別賞を受賞!緊張した面持ちでNPB AWARDに出席し決意新た。

千葉ロッテマリーンズ
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ホークス近藤健介選手とマリーンズ岡大海選手 NPB AWARDにて 【千葉ロッテマリーンズ提供】

 11月26日 都内でNPB AWARD 2024が華やかに執り行われた。その会場に岡大海外野手の姿があった。今シーズン、8試合連続二塁打のプロ野球新記録を樹立し、パ・リーグ特別賞を受賞した。NPB AWARDに出席するのは初とあって、どこか緊張した面持ちだった。

 記録を樹立したのは6月30日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)。ベンチに7試合連続二塁打の記録をもっていた金子誠戦略コーチがいたのも不思議な縁だ。自身が現役時代の09年に7試合連続二塁打のプロ野球記録を打ち立て、ファイターズコーチ時代の21年には同じチームの近藤健介外野手(現ホークス)が記録に並ぶ瞬間を目にした。そしてまた目の前で並ばれ、今度は抜き去られた。岡が放ったのも三塁線を抜ける二塁打。自身も三塁線を突破する二塁打だった。不思議な縁を感じた。

 「オレは5試合目を打った時の試合後にメディアから『明日、打ったらプロ野球タイ記録ですよ』と言われた。だから記者には『そんなことを言ったら終わりますよ。ほっといてください』と冷たく返したね」と金子コーチは当時を懐かしそうに振り返った。

 それは09年4月14日 札幌ドームでのバファローズ戦。当時のプロ野球タイ記録となる6試合連続二塁打はバファローズ先発の金子千尋から左中間を抜ける二塁打で記録。そして翌4月15日の同カードは六回無死満塁のチャンスで3番手香月良太投手から左翼線を抜ける走者一掃の二塁打を放ち当時のプロ野球新記録を樹立した。

 月日は流れて21年10月7日。現役を引退して今度は京セラドーム大阪のベンチでコーチとして試合を見守りながら記録に並ばれるヒットを目にすることになる。それが近藤の左越え二塁打。その時もこの記録にまつわる縁を感じたものだが、その3年後にふたたび目の前で遭遇することになるとは思いもしなかった。そして今回はついに抜かれた。岡がこの試合の5打席目。最後の打席で記録を華麗に抜き去った。

 「記録の事を思い出したのは実は遅かった。7試合連続で並ばれた翌日の朝、新聞記事で読んで、ああ、そういえばとそうだったなあと。近藤の時は自分でスコアをつけながら二塁打多いなあと5試合目で気が付いたけど、岡の時はそういう報道を見るまで気が付かなった」と金子コーチは苦笑いを浮かべた。自身の名前が新聞記事に出ているのを目にし、周りから言われて記憶が蘇った。

 ゲームはアクシデントから始まった。1番センターでスタメン出場した岡は初回の1打席目で左ひざ付近に自打球が直撃。痛さのあまり、転倒して悶絶した。あまりの痛み様にベンチにいる首脳陣は最悪の事態も頭に入れざるをえなかった。

 「記録はもちろん大事。だけど、まずは選手生命というか、無事にプレーをしてもらうことを優先しないといけない。大丈夫かとヒヤヒヤしたね」と金子コーチ。患部の状態次第では途中交代という無情の選択を迫られるかもしれない。様々な事を想定し思考を巡らせながら岡のプレーを祈るように見守っていた。

 金子コーチと岡はファイターズ時代に1年だけ現役を共にしている。金子コーチが引退する年に岡は入団した。「大学時代は投手と野手の二刀流。足が速い、肩は強い。身体能力が高い。ポテンシャルの塊という印象」と同コーチは3位で入団をしたルーキーの印象を振り返る。現役時代に長年、自主トレを行っていた山梨県笛吹市春日居を紹介した縁もある。金子コーチは現役時代、毎年ここから一年をスタートさせていた。朝は氷点下を記録する時もあるが、その中を走り込んで身体を作り上げた。厳しい環境で精神面を磨いた。だから将来性のある後輩たちにも紹介した。当時、岡と共に松本剛外野手も自主トレをしていた。

 コーチの目で岡を見てきて一番、印象に残っているのは現役引退をしてコーチに就任をした16年のシーズンに見た岡の涙だ。
 
 前半戦最終戦となった16年7月13日のバファローズ戦(京セラドーム)。0対0で迎えた試合は岡のプレーから動いた。六回一死二塁。右翼を守っていた岡は打球を後ろに逸らし三塁打とされてしまい先制を許してしまったのだ。結果的にこの回は2失点。その直後の打席で代打が送られた。
 
 「疲れも出やすいタイプで、そこまで本当に打撃が無双状態で頑張っていたから疲れがあったと思う。守備のプレーでちょっとミスをした。だからではないけど、試合の流れで岡の打席で代打を出すことになった。するとベンチで堰を切ったように泣きだした。それをみんなでなだめた」と当時を振り返る。
 
 落ち込む岡は、しかし救われた。八回の攻撃。二死満塁。中田翔内野手(現ドラゴンズ)が右中間へ走者一掃の3点二塁打を放ち試合に勝利した。「勝ててホッとした気持ち、頼れる先輩が逆転してくれた嬉しさ、自分への不甲斐なさ、悔しさ。色々な感情が出たのだろうね。さらに倍ぐらいの勢いで泣いていた」と金子コーチ。試合後も涙が止まらない。勝利のハイタッチをしながら泣いた。そしてホテルにバスが到着をして岡の姿をみるとまだ泣いていた。金子コーチは笑いながら「おまえ長いよ」と笑顔で声を掛けた。同コーチ曰く「多分、3時間は泣き続けていたと思う(笑)」。熱い漢と呼ばれる岡ならではのエピソードだ。人生とは不思議なもので岡は7年前。金子コーチも2年前にマリーンズに入団。再び同じユニホームに袖を通し、目の前で新記録を目にし、「おめでとう」と祝福することになった。

 NPB AWARDの開場には7試合連続二塁打の記録を持つホークス近藤の姿もあった。岡の2歳年下。ファイターズ時代のチームメートは「おめでとうございます」と声をかけてくれた。そして「金子コーチ、悔しがっていたでしょう?」と言って笑った。岡が「いやあ、結構、喜んでくれていたと思うよ」と返すと、「へえ。ボクの時は並ばれてちょっと悔しそうに見えたけどなあ」と話し、2人で笑い合った。厳かな場に居場所がなさそうにしていた岡の緊張感が解けた瞬間だった。そして抜かれた男と抜いた男は2人、並んで写真に納まった。

 岡にとって初めとなったNPB AWARD。最初は戸惑ったが、最後は楽しんで終わった。そして「また来年、ここに呼んでいただけるように頑張りたい」と表情を引き締めた。金子コーチは「オレは二塁打の記録を作った09年、34歳の時だったと思うけど、キャリアハイの成績を残すことが出来た。岡は今年、33歳のシーズン。これからもっともっとやってくれると思うよ」と日本記録を樹立した際にエールを送っていた。そう、まだ33歳。人生ここからだ。NPB AWARDで緊張した面持ちだった男が常連選手の仲間入りをして堂々と振舞う姿を目にする日を楽しみにしたい。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章

岡大海外野手 【千葉ロッテマリーンズ提供】

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