首位・桑木志帆-ロブスターでVへ前進
【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】
(天候:晴れ 気温:17.3℃ 風速:4.3m/s)
《グリーン=スティンプ:9 1/4フィート コンパクション:23.5mm》
すさまじい気迫が桑木志帆にみなぎった。17番、残り108ヤードの第2打。52度から放たれたボールは、ピンへ向かって、1メートルのバーディーチャンスを創出した。何事もなかったかのような淡々とした表情で、楽々とバーディーパットをカップイン。
「すごく大きなバーディーだと思います」と、ほほ笑みながら、「昨日とは、風などの条件がまったく違う。きょうは1Wのショットで精度がちょっと安定していなかった。にもかかわらず、後半はノーボギーでガマンを続けていたから、ようやく来た-そんな感じでした」と振り返った。
第1日から首位をキープ。抜群の安定感がクローズアップされている。2位とは3打のアドバンテージを握り、最終日を迎えることは大きい。それにしても-。
スタートホールのティーイングエリアに立つと、あでやかなオレンジのウェアが目を引く。加えて、パンツにはロブスターのプリントがたくさん…。「ちょうど最終戦用のウェアの中に、この組み合わせが届きました。私、エビが好きだし、ちょっといいかなぁと思って」と明かしている。目立つこともプロフェッショナルの重要な要素だ。それを着こなしてしまう、センスがある。これひとつで、評判をとれそうでも、やはりプレー内容の良さが加わらなければ、見る立場からすれば、ハデだった-そんな印象が少し残るだけだ。
【Photo:Hiromu Sasaki/Getty Images】
「ゴルフ部では桑木さんがキャプテン。団体戦では頼りになる人です。3年間、一緒という関係でした。私はプロになろうとは考えてはいなかった」といい、「(マネジャーとして)チームに加わってほしい、というお話は、本当に光栄でうれしかったです」(中村さん)。ツアーに帯同し、コースの外では話し相手もつとめる。「ゴルフの話は、なし。ほとんどおふざけの話題ばかりです。そういったこともお役に立てるとうれしい」(同)とも話している。ちなみに、妹・心は今年、最終プロテストに合格した。
とりわけ、桑木の場合、メンタルの安定はプレーに直結。パッティングに好影響が出た。「パッティングの時、まったくあせらずにいられる。何よりも、打てば(カップに)入る気がします」と漏らす。続けて、「2メートルぐらいのパッティングがよく決まる。だから、ロングパットが残っても、2パットでいい、という安心感があるんですよ」と説明した。
取材時、何度もロブスターのプリントに目が行ってしまった。そして、浮かんだのは、江戸時代からのことわざ、エビでタイを釣る。少ない元手で大きな利を得る-という意味合いでも好プレーを演出した吉兆のアイテムに違いない。
完全優勝を狙う最終日。「私はまだ、逃げ切った経験がありません。だからわからない。だけど、この難しいコースで3打差はラッキーでもあるし、もし私がミスをしたらすぐに差を詰められてしまう。気が抜けない。それでも、これまでの試合より、心の余裕がほんの少しだけあります」。なるほど、名コースは選手を育てる。
(青木 政司)
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